対米不動産投資と訴訟リスク管理法【ブログ読者QアンドA 第一弾】
2009年6月、「読者からの質問」キャンペーンをした、第一弾のご質問です。
中山様はじめまして。いつもブログの更新を楽しみにしているTと申します。メルマガの読者で、7月4日のセミナーにも参加予定です。真剣にアメリカ不動産購入を検討している者です。アメリカ不動産購入の上で、一点聞きたい事がございます。多分、他のブログの読者の方々も気になる部分だと思うのですが、それは訴訟リスクの管理です。アメリカ=訴訟社会であるため、訴訟のリスク管理というのは大変重要な部分であると思います。自分で調べた限り、大家はトラストを設立してリスクマネージメントをしているようですが、中山様はどのような対策をおすすめされますか?一般論で結構でございますので、メールまたはブログ上でご解説いただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。P.S. 7月4日のセミナー楽しみにしております。
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Tさん、早速のご質問ありがとうございます。あまりタッチしたくないトピックですが、あくまで、なんら資格がない人間の参考意見であることをお断りした上で、お返事をします。
また、回答によっては、きりがないので、「日本からの初級投資家」向けへのエントリー的な回答だけをさせてください。
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結論から言うと、私自身は、エントリーレベルの対米遠隔投資家様は、訴訟リスクは、ほとんど心配する必要はないと思っています。
その理由は、ずばり、裁判を起こす側に立ってみれば、わかるかと思います。
相手は、外国人どころか、外国在住。アメリカ国内に、給与所得も、事業所得も、資産も、親戚もありません。訴状を届けるにも、住所を調べて、それから、ようよう、フェデックス等で送ることになります。国内に有している資産は、ローンがついていて、エクイティがほとんどない不動産が一軒だけ。【現金投資の場合は、3万ドルから6万ドルと評価される物件が1軒きり、とか、、、】
そんな相手を、訴えて、どうするんでしょうか?
日本でも、アメリカでも、賠償金を勝ち取ってからが、本当の勝負です。
それは、勝訴判決の次のステップ、債権回収で、相手が国内居住者でも難しいです。
アメリカ=訴訟社会というと、恐ろしいですが、
■相手に資産がない限り、訴えても仕方がない/資産がある範囲で、訴える
■訴訟を起こすのには、金がかかる/通常の着手金は、最低、1,500ドル
■着手金ゼロの出来高制の弁護士は、多額の回収の見込みのあるケースしか引き受けない
が鉄則。
相手が、初級外国人投資家のあなたから、取り上げられる額は、ずばり、「対象となっている物件にかかっている保険の範囲/上限」を超える確率は、相当、低いのではないでしょうか。その部分は、保険会社に任せることになります。
もちろん、こういう合理的な考え方をしない人に、嫌がらせのように訴えられれば、いやな気はするかもしれませんし、困ることも確かでしょう。さらにいえば、判決が下れば、本来、向こうが回収にかかってこようと、来まいと、本来、法的には、従う義務があるともいえそうです。
米国内で、資産が増えてくれば、弁護士を使って、LLCなどのスキームを作ることに、より具体的な意味が出てきます。資産がない段階からやってもかまいませんが、理解したうえで、きちんとやろうと思えば、英語しかできない弁護士に頼んでも、通常、3,000ドル、とられます。【英語ができる方で、自分が何をやっているかわかっている方は、もっと安くできますが、アメリカ人自身、自分に理解できないdo it yourself的な法的行動に走り、痛い目にあっている人もいます】
日本語ができる弁護士に頼めば、100万UPになります。
訴えられる危険性が低い段階/訴えられてもそれほど困らない段階から、これらの手数料を払いたい場合は、私自身が、お止めすることはありません(笑)。
但し、毎年の納税も、その分手間になるほか、スキームを変えるごとに、弁護士への支払いが必要になりますので、ご確認をば。
さらにいえば、融資をつける物件においては、銀行が、多くの場合、名義いじりには、ダメだしをしてくることも、覚えておいてください。
契約書を読めば、「名義を変えるなら、繰上げ返済してから」と書いてあるのが、スタンダードなモーゲージドキュメントです。一般には、銀行は、この権利を行使することは余りありませんが、他方、文面を読むと、明らかに生真面目タイプなTさんは、それでは、潜在的な訴訟リスクと、恒常的な契約違反状態、銀行に、ある日突然、繰り上げ返済を迫られるかもしれないという慢性的なリスクとでは、どちらが、怖いでしょうか?
最後に一言付け加えれば、これは、初級の投資家様によくある不安であることは、間違いなさそうですが、大家業をやれば、損害賠償訴訟で、訴えられるどころか、店子に刺されて死ぬことすら、ありえます。
【最近の日本の例だと、川崎の大家殺害事件とか、、、記事はこちらから】
保険なり、法的スキームによって、自分の周りに潜在的に存在する損害リスクを100%コントロールできると思われているなら、家を出るのをやめるどころか、息をするのを自主的に、やめるしか、ありません。
Tさんは、生命保険位には、入られているかと思いますが(入っていない人も結構いて驚きます)、収入保障保険や、家屋の(火災のみならず)地震保険には、入られていますか?遺言状は、もう書かれましたか?資産のリストアップと貸し金庫へのコピー等保存は、されてありますか?毎年、正月に、チェックしなおされていますか?私自身なんかも、これらが、自分のTo Doリストに載っていまして、ボランティアなんていって格好をつけて出歩いている場合じゃないんですよね、、、
何が自分にとってのプライオリティか、また、自分のライフスタイルにとって、何が一番のリスクかは、私たち一人一人が決めます。これは、ご本人が、弁護士や保険会社との打ち合わせに基づき、ご本人が、決断するべきご相談だということも、最後に、ご指摘しておくべきでしょう。ポートフォリオが成長するのであれば、それに応じて、見直しをしていくわけです。
それでは、セミナーでご挨拶するのを、楽しみにしています。
【6月中は、ご質問を募集しています】
++++++++午後追記
アップロードしたら、早速、ご質問者様から、以下の丁寧なお礼を頂戴しました。かえって恐縮しております。ブログもサボりがちでしたが、がんばらないといけないです!
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早速、ブログを拝見させていただきました!
デトロイトへの出張後のお忙しい中、私の質問に対し、
ブログにてご回答いただき本当にありがとうございました!
感謝しています!
回答内容も理解しやすく、頭の中にストンと納得できる内容でした。
本当にありがとうございました。
7月4日のセミナーでご挨拶できることを、私も楽しみにしております。
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