日本の大家業、アメリカの大家業比較
日本の大家さんの経営方法と、アメリカの大家さんの経営方法というのは、あらゆる面で違いがあります。
この記事では、テナントさんとの付き合い方についての違いを、リストアップしてみましょう。日本の大家業に慣れている人にも、知らなかった人にも、驚くべき違いであることが、お分かりになるかと思います。
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アメリカでは、
■賃借人の入居の場合、敷金は、1ヶ月
■普通は連帯保証人は、要求できない、しても意味が薄い
■裁判所の強制退去命令は、滞納開始から、1ヶ月くらいで取得できることが多い
■居座りに対しては、強制執行手続も、命令を見せて、執行官に即指示も可能
■執行官が出してくれた荷物は、すぐ廃棄にまわしてかまわない
が多いです。州によりますので、アバウトな、話ですが、、、
つまり、滞納が始まれば、制度としては、すぐ、追い出すことが可能な、大家よりの考え方なのですね。
もちろん、テナントさんにも、きちんとした権利があり、日本のように、テナントさんが、ちゃんと現状復帰、掃除をして退出しているのに、敷金(の一部)を返さないオーナーなんか、ほぼ、根絶しているイメージがありますし、業者さんへの礼金も、オーナー持ちが原則。
裁判に実際に出席するところまで、腹を決めている不払いテナントが、オーナーの言い分を覆すほど、裁判官の同情を勝ち取ることもありえます。(多くの場合、不払いテナントは、単なる欠席で終わり、判決が出るころにはもぬけの殻というパターンです)
それに、退去をさせたとしても、債権回収は別訴訟であり、しかも、賃金等所得差し押さえは、至難の業ですから、何でもかんでも、大家が得では、ありません(民事債権時効は、州により、たとえばミシガンは、6年)。
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それに対して、日本では、賃料滞納を理由とする明渡し訴訟というのは、強制執行まで入れると、訴状提出から、6ヶ月くらいと聞いています(判決が出るのが、2-3ヶ月)。しかも、執行官に荷物を運び出してもらった場合、1ヶ月の保管義務があるはず。回収に来るかわからない荷物を保管する倉庫代も、プラスオンになるんですね。その後の廃棄代も、かかるということでしょう。
ちょうど、それに呼応するかのように、家主には、伝統的には、敷金二ヶ月、礼金二ヶ月、場合によったら更新料が毎年一ヶ月、などと、突き詰めると、意味不明ともいえる「上乗せ」が、たくさんあるわけですね。
ある意味では、この二つの状況は、コインの表裏の関係でしょう。
ロジックとしては、テナントの利益をここまで保護することへの家主の保証として、「取れるときには、厚く取って置こう」的なバッファーになっていると思います。歴史的に、どちらが先かといえば、きっと、逆でしょう。つまり、裁判所が、欲張りな家主の一方的な契約に対抗する手段として、信頼関係破壊の法理という理論武装を、テナント側に与えることにして、バランスをとろうとしたのだろうと思います。
しかし、いずれにせよ、このような過去の日本では、社会が、static、つまり、静的であり、”オープンな賃貸市場”なんていうことは、誰も思っていなかったのかと思います。
他方では、現代日本では、労働市場すら、「一ヶ月告知」である上、供給過剰等各種理由で、今は、礼金も敷金もゼロということも、高級物件であっても、ありえます。さらには、更新料も、「意味不明」と切って捨てられることになったのですから(こちらから)、このように、オーナーの立場といったものが、相当弱体化すると、「入居中にそんなに取れないのに、出てもらえるまで、6ヶ月もの間、立てこもられたまま、よそに貸し出せないのがあたりまえでは、自分こそ、ローンが返済できないよ。」という現代のオーナーさんの訴えにも、それなりに、理が出てくるのではないでしょうか。
ただ、不況、派遣切りと、政府の貧困層対策が後手に回っている日本のイマドキのこの状況では、一部の家賃保証会社の行き過ぎを規制するほうがずっと急務(こちら)であると認識されているわけで、与野党問わず、立法者が、判例法を覆すような不人気な政策を提案していくことは、絶対、不可能でしょうが、、、
私のお世話をしているオーナー様の半分くらいは、アメリカ、日本、両方投資をされているので、そうした方のお一人との会話から、今日、「そういえば、こんな比較記事も整理してアップしておくのが、役に立つかも」と、ふと、思いつきました。
今後20年、30年先を見据えた場合、日本国内だけの不動産投資の将来は、暗くなっていく可能性も、あるからです。(とはいっても、為替等の問題もありますから、一概に、「日本は危険だ」といったことを私が扇情しているのだとは思わないでください。)
3月7日のセミナーで、日本との比較でのこういった話も、もっとしていこうと思います。
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