水には、何種類もの温度がある
中国在住の対米不動産投資家の中山道子です。
2014年現在、民間レベルでは、対日感情は安定しており、最近、日本旅行に行く方も、周囲に多いです。
日本の観光業にとっても、中国や東南アジアの観光客の誘致は、重要な課題ですよね。しかし、この前、興味深い記事を読みました。
「まだまだ、努力をしなければならないことがある」
ということを思い出させてくれるお話です。
記事は、こちら。
お・も・て・な・しは日本人の自己満足か
日本の観光産業はGDP38兆円分の成長余地がある
あの京都ですら、5,000万人以上の観光客がくるというのに(うち、宿泊者は1,308万人)、そのうち、外国人は、200万人と推測されているようです(記録では、宿泊者は113万人)。
日本より国土も人口も少ない韓国より、外国人来訪者数が少ないのは、がんばってほしいところですね。
韓国は、私は最近は、空港を使うだけですが、それだけでも、本当に、涙ぐましいほど、がんばっているのがわかります。韓国の仁川空港は、たぶん、世界一?と思うくらい、今、すごいです。
《仁川空港のここがすごい》
■ シャワー施設が無料で貸してもらえる
シャンプー、ボディーシャンプー、タオル、ドライヤーも!
■ タブレットが無料で貸してもらえる
ただ、高級なやつじゃなくて、いまいちでしたww
■ インターネットは時間無制限でPCが使い放題
もちろんWIFIもたっぷりです
■ 居心地のよいソファがたくさんあり、みんな居眠り
宿泊もホテル不要状態!
■ 毛布も貸してもらえる。本も、多少、貸している。
いずれも、搭乗券と引き換えです。
■ 文化体験させてくれる体験館がある
30分くらい楽しく時間つぶしできて、立派なお土産がもらえる。ここ、韓国の昔の衣装を着て、写真を撮る体験も、無料でさせてもらえます。下の写真は、この夏、色塗り体験をさせてもらった時の写真です。このクラフトは、木のマグネットになっていました。内容は、毎週、変わります。いつも、箱までついているので、うまくできれば、お土産にもなるのです。
■ クラシックのライブ・コンサートまでやっている
バイオリン・カルテット演奏がいつもやっていて、その他、文化体験館から、民族衣装を着た行列も通りがかってくれて、一緒に写真撮影OK。
■ 無料のツアーがある
トランジット者は、市内観光ツアーが無料です
■ 空港隣接ビルには遊技場も
出国扱いですが、スケート場まであります
これがすべてVIPラウンジなしで誰にでもオファーされているのですから、すごいですよね。我が家は、仁川空港の大ファンです、ハイ。
私の場合、韓国は、よく、トランジットで使います。中国から、直接日本や米国に行くより、安いことも多いのです。やはり、そこらへんも、空港使用料など、政府が配慮しているのでしょうか。いまや、仁川空港の優位は、明らかだと思います。
この一点からだけ断言するのはいけないでしょうが、ネットサーチをすると、みずほ総合研究所で、ASEAN諸国を対象にしてですが、日韓観光政策を簡単に比較したペーパーがあったので、ご関心がある方は、ご覧ください。
やはり、予算的にも、国民資源の相当量を投入しているようですね。
今の日本で、単純に予算を増やせといっても、しかたがないでしょうが、「日本流のおもてなしは世界一すばらしいんだ!」といった言説が盛んになっている反面で、実際のところ、そのような主張の論拠となる具体的な実績が出せていないということは、やはり、問題であるといえましょう。冷たく言い放ってしまうと、これでは、自己満足の世界になってしまうからです。
上の日経でインタビューされたアナリストの分析によると、ここに、大変な成長の伸びしろ、実に、日本の観光ビジネスはGDPを38兆円拡大する潜在力があると指摘されているんだそうです。
日経のインタビューを引用すると、
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アトキンソン:現在、日本のGDPに対して観光業が占める割合はわずか2%です。ところが国連のデータでは世界の平均は9%。日本の観光ビジネスが世界の平均まで成長したとして、数字に落とすと毎年38兆円という大きな金額になります。
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なんだそうで、まさに、建設的な批判(constructive criticism)のすばらしい例かもしれませんね。日本をよく知るとともに、世界の中の日本を位置づけてくれることができるこうした方の提言が、取り入れられていくことを、切に願います。
私も、海外から日本を見る立場となっているので、日本に、もっと建設的な方向で発展を目指してほしいと思う気持ちが強いです。
この記事のタイトルで、「水には、いくつもの温度がある」と書いたのは、実は、この前、ある中国人の方に、彼の一家が日本旅行をした際のお話を聞いたから。
水にそんなにたくさんの温度って、思い当たりますか?
氷水
冷蔵庫から出してきた水
常温水
ぬるま湯
熱いお湯
彼とのやり取りを少し紹介します。私も、日本料理は、アジア人に、評判がよい、という気持ちで、「お料理はどうでしたか?」と聞いたところ、彼は、
日本は、水が冷たすぎて、おなかの調子を悪くした
というのです。
これは確かに私も中国に移ってから同感するようになった状況!どういうことかというと、日本では、カフェやレストランなどでは、ほぼ必ず、氷水。氷を抜いてくださいというと、冷蔵庫から出してきた温度です。
しかし、中国人は、まだ冷蔵庫が普及していないという背景もあるのかもしれませんが、意識としても、冷たいものは、体を冷やすといって、できるだけ、避けます。
洋服も、幼児が、だるまのように着膨れするまで服をたくさん着せてと、慣習には、一部、非科学的で、私も納得しない風習もありますが、飲料については、これは、最新科学でも、指摘されているところ。米国でも、今、意識の高い人は、必ず、「氷を抜いた水」を注文します。
ということで、中国では、食事をするところでは、よく、「ぬるま湯」が出てきます。衛生状態が悪いところも多いので、「一度煮立てた」のちに、ポットに入れておくと、自然に、この温度になるのでしょう。私自身は、ぬるい水よりは、常温の水が好きで、ろ過せず、煮立てただけの水道水は、中国では、あまり信用していません。そういう人は、レストランで、ミネラルウオーターのボトルを買います。
氷が入った飲料が出るのは、ファーストフードだけで、中国人は、ジュースなどのみならず、よく日本の話題に出てくるように、ビールまで、常温なのです。
果物も、常温。冷蔵庫で冷やしたものを出すと、お子さん方も、「冷たすぎる」といって、食べたがりません。
もともとの日本の意識からは、何でもまず、冷蔵庫、という私でしたが、今は、冷蔵庫から出してくるのは、ふたを開けてしまった1リットルの牛乳くらいで、今は、水、ジュース(あまり出しませんが)、フルーツと、何でも常温でお出しします。
こちらのほうが健康にいいですし、また、事前準備もないし、冷蔵庫のスペースもとらなくて、便利です。
さて、このような話を長々したのは、上の中国人男性のように、わが先進国日本で、おなかの調子をこわす、ということがありうる、ということを、メンションしたかったから。
日本人は、中国のほうが遅れているので、中国や他の東南アジアなどに行ったら、先進国側の人間は、おなかをこわさないように気をつけるのだ、と思っていますが、自国で、そのような「逆の現象がありうる」とは、思ってもいないかもしれません。
しかし、観光の場合は、あちらがお客様。「あちらは、最高のサービスに慣れていないだろう」とばかり、こちらが氷水をサービスで出しておけば、最高の「おもてなし」になっているかというと、「必ずしもそうではなく」、それは、こちらの思い込みに過ぎないのかもしれないわけです。
米国式のチェーン・サービスがグローバル化するのには、理由があって、例えば、スターバックスは、カウンターで、何でも好きなように指定すれば、誰のニーズでも、満たせます。ポスト・スターバックスの米国チェーン店の成功例であるパネラ(PANERA)では、「飲料は、すべて自分で調合してください」というスタイルで、カウンターでは、カップを受け取るだけ。このように、個人の好みに最大限にポイントを置くと、チェーンの場合、究極のサービスは、「ご自分でどうぞ」となるわけですね。パネラがすごいのは、こういう「放り出し」もありながら、料理の質など、いろいろなこだわりを同時に実現し、スターバックスの向こうを張る上ランクの顧客層に広く支持されるにいたったこと。まさに、オペレーションを楽にするということが目的であるというより、それもあるにせよ、顧客嗜好尊重が徹底していると好意的に見られたのでしょう。(もうひとつの極には、5つ☆ホテルのサービスがあると思いますが。)
それに対して、今の日本では、座るカフェのみならず、自動販売機すら、「常温の水」を買うオプションはありません。
コンビ二でも、常温の水を買うことは、難しいことが多いので、私の場合、一番簡単なのは、自販機で買っておいた水を、「しばらく持ち歩く」ことです。
上の中国人旅行者と話をして、自分も、カフェなどでは、1時間くらい滞在だと、氷を抜いてもらった水でも、手をつけない習慣になってしまったことを思い出しました。何せ、冷たすぎるのです。
なので、今は、大体、日本に旅行するときは、座っても、持ち歩いている「常温化したペットボトル」から、水を飲んでいます。これって、日本のカフェ、喫茶店では、行儀が悪いことでしょうが、外国では、こういう「一部持込」、結構、普通です。
そういうことをする人間が、どういう理由で、こういうことをするか、その理由まで、皆さん、考えたこと、おありになりますか?(もちろん、一部は、高い飲食費を安く上げようという少し微妙な理由もあるんでしょうが、、、)
最後に、アトキンソン氏の言葉を、再度、日経のインタビューから、引用します。今後、「ガラパゴス化」してしまうかしないかは(英語では、tunnel vision、視野狭窄といった言い方をしたりします)、私たち自身が意識していかないといけないのではないでしょうか。
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アトキンソン:なぜ急にみんな、「世界一のおもてなし」とか言い出したんでしょう。自己満足の部分が結構あって、日本人同士で世界一ですよと言い合っているんでしょう。もしそこへよそ者が入ってきて「いや別に自分はいいと思わない」と言っても、あなたは分かっていないからと処理されてしまう。
自分が最初に日本へ来た25年前に比べて外国人の数が激減していますから、そういう(意見を聞く)機会自体が少なくて、自分たちで言い合って自己満足していても成立してしまうのではないでしょうか。昔は、日本人はあまりそういうことを口には出さない人たちだったと思うのですが。
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