Forensic Loan Audit とはなにか
■この記事は、2010年に3月17日に最初掲載しました。2012年10月14日、末尾に補足をしました■
結構業界の方も読んでくださっている不動産英語集。
英語も、生きた言語で、日本語同様、造語や新しい言葉が沢山あり、私も、アメリカ在住者ではないので、多くを知っているわけではないと思います。英語がネイティブの方がいても、居住地でない英語国の最新風習などは知らないことがありうるでしょうし、、、
このように、一般口語でも、これは、そうですが、不動産業界でも、いろいろな、新語がありそう。
今日は、たまたまですが、今流行のツイッターの広告つぶやきで、we'll do a forensic audit of your loan というモーゲージカンパニーに遭遇しました。
Forensics って、犯罪とかで、法廷で通用する証拠を科学的に収集するプロセスのことじゃ、、、これも、ある意味、造語のようなものなのでしょうか?
読み進めると、何だという感じでしたが、概要は、以下の通り。
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私たちは、これまでとまったく違ったモーゲージカンパニー。あなたは、銀行に、ショートセールの申し入れをしたり、loan modification (融資条件変更)の要請をしてみたり、すでに、打てる手は打ってきたのではないですか?
しかし、今の銀行業界は、数多くの案件処理を抱え、あなたのこうした要請には、耳も貸さない、、、その間に、不合理な支払いを押し付けられたあなたの与信は、下がるばかりです。
私たちは、単に、”よりましな条件のローンへのリファイナンスをしましょう”、という会社ではありません。
あなたが受けた融資条件を、詳細に検討することで、銀行側が、連邦や州の法律違反を犯している場合、これを、法廷で通用するレベルの契約条件監査((forensic audit、audit が監査)を行い、その証拠固めをした後、あなたは、銀行に行って、再交渉を優位な立場で、引き出すのです。
これまでのところ、当社が審査した融資は、100%、何らかの法令違反を指摘することができました。
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いや、そういうforensicsですか、、、
多少調べてみると、forensic accounting といった言葉もあり、一般人は私同様、「始めて聞く」言葉の可能性が高いでしょうが、他方では、業界では、結構、こういうHPが沢山あることを、今日始めて、知りました。
多分、2005年次、イケイケだったころは、モーゲージカンパニーのHPの看板としては使われていなかっただろうことは、確実な言葉ですが、現在のアメリカの現状においては、こういうアプローチは、確かに、ありですね。
この宣伝をしていた会社が、まっとうなところなのか、数分調べただけですので、判断する力は私にはありませんが、一応、連邦は、融資条件を改善してあげることで、フォークロージャーを避けられた場合、モーゲージカンパニーに、報酬を支払うことになっていますので、こういう部分で、破綻者を助けることも、可能なのかもしれません。
一般の新規購入による融資付けだけを待っていては、イマドキのモーゲージカンパニーは、商売あがったりですから、こういう政府支援プログラム取得のために動くマーケティングスキームを考えることは、自らの生命線のためにも、必須なんでしょう。がんばっているんだね、君たちも。
よくある破産ビジネス、日本で言う、貧困ビジネス、あるいは、オレオレ詐欺?的なものとしては、「3,000ドル払ってくれれば、決着をつけてやる」といって、負債に追い込まれた一般消費者の最後の虎の子を取り上げた上で、何も有効なアクションをとらない、といった弁護士や会社が多いと言うことも、アメリカでは、現在、広く問題になっています。
しかし、この会社が、怪しそうな気もするのは当然としても、その反面で、「審査した融資案件の100%から、連邦や州法違反が見つけられた」というHPのこの部分だけは、なぜか、真実味を帯びているような気がする、私でした、、、
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2010年3月にこの記事を掲載したときには、forensic loan audit, forensic mortgage analysis の文脈は、私自身、わかっていなかったと思います。こうした流れ自体、比較的新しかったのではないでしょうか。
今年になり、こういう領域への投資をヘビーにしている仲間とのやり取りが多くなり、私自身、フォレンジックローンオーディットへの理解が深まってきました。なので、ここで、補足します。
フォレンジックモーゲージアナリシスの必要になった背景は、例えば、下のようなところにあります。
現在、低額所得者、困窮者のみならず、高額所得者についても、不動産抵当権のUPSIDE DOWN問題があります。
例えば、お金持ちが、2億掛けて、新築物件をバブル時に建設し、その後、自宅として居住し、ローンもきちんと返済して現在に至る。
この人が、失業すれば、LOAN MODIFICATION(融資条件ネゴシエーション)を要求する根拠になりますが、経済的困窮(financial hardship)がない場合は、物件の資産価値が減っても、当然、融資銀行は、返済能力のあるオーナーに「それは悪かったですね。それじゃあ元本減らしますよ」とは、言いません。
こういう場合、実際、毎月の返済能力は、融資返済条件を満たせるわけです。単に、「元本を払うのが悔しい」という、まあ、自己中心的といえば、そういう考えではあります。しかし、「バブルの付けを、当時、物件の価値を鑑定をした銀行がまったく支払わず、自分だけが払うのは納得いかない。」という背景があるわけで、そこで出てくるのが、こうした人たちが表のロジックとして使える主張の必要性。
というわけでの、「契約違反や法令違反があったかということを、銀行の融資書類等から調べなおす」というフォレンジックスなんですね。
本人の返済能力が高いときは、この銀行の落ち度探しをして、”ほら、お前法令違反だろう。訴えてやる。それがいやなら、妥協や和解しろ”と脅すことになるわけです。
こうしたことをヘビーにやっているミシガン州の仲間によると、「この3?5年は、こうした案件が続くんじゃないだろうかなあ」ということでした。
逆に言うと、ミシガンを例とする限りは、後3年や5年は、不良債権処理は、終わらないだろうというひとつの指標なのではないかなと思います。(その後どうなるかは、また分かりませんが)
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