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Furnished と unfurnished の違いにみる教養英語と実務英語の違い

大人になってからのビジネス英語の勉強というのは、なかなか厄介なものです。

しばらく前、実は、英語のできるお客様が、ラスベガスに買った新築の家に、カーテンをつけたり、洗濯機やドライヤーなどを備え付けるという作業をレアルターさんに手配してもらったとき、そのプロセスのことを、来日した取引先に、furnishという単語を使って、ご説明をされていました。

彼は、それを受けて、私に、「ベガス投資は、短期レンタルなの?Yさんは、家に家具を入れたといっていたよ」と聞いてきたのです。

Furnish the houseといえば、家に家具を入れるという意味で、通常は、日本でも、家具=ベッド、いす、テーブル、机といった、生活に必要な家具一式を意味します。

日本でもそうかと思いますが、そういう場合は、通常は、短期家具付きレンタル市場をターゲットにする戦略になります。1年単位が通常のアメリカのlong term leaseと異なり、short term rental、monthly rental、vacation rental、executive rental/stay(ビジネスマン用のいい方)といったいい方になります。

ちなみに、一般コンド等の短期賃貸は、ホテル業との競合をしないように、例えば、ラスベガスでは、1ヶ月単位を守る必要があるといった規制もあるようですので、その点にもお気をつけください。

さらにいえば、このお客様は、円ローンを使っておいで。この多通貨ローンでオフショア融資を受ける場合、1年未満のリースを使った短期レンタルは、ご法度となっています。銀行の担当者に、このような言葉遣いで、世間話をしてしまったとしたら、「融資条件違反をするつもりなの!?」と、イキナリ、痛くない腹を探られる羽目になりかねません。

確認すると、一般に、アメリカなどの多くの国では、

refridgerator 冷蔵庫
washer 洗濯機
dryer 乾燥機

は、ワーキングクラス以上のunfurnishの家のスタンダード(デトロイトでは入れませんが)。これを備え付けることは、少なくとも、実務不動産アメリカ英語では、furnishとは言わないのです。

ちょっと考えてみれば、冷蔵庫って、家具/furnitureとはいわないよなあ、という感じは、わかっていただけるかと思います。

このように、このお客さんは、軽い気持ちで、furnishedという言葉を使いましたが、受け取るほうは、それで、まったく別の投資方法まで、イメージしてしまった。これが、業界用語、ビジネス英語の力というか、インパクトです。

こういうときのslip of the tongue(口がすべる)というのは、相当、ギョーカイに慣れてこないと、直りません。このお客様も、別のエリアでは、スペシャリストでおいでなので、ご自分の専門分野では、自然に、英語で、超高度なshop talk【業界トーク】をされているはずですが、どうしても、新しい分野を習得するというのは、自国語であろうと、外国語であろうと、こういう習得時期を伴うものなんですね。

私自身も、このお客様同様、「英語ができる」状態で、不動産に身を投じましたが、それからが大変でした。

サラリーマンというのは、失敗があっても、組織がカバーしてくれますが、裸一貫のオーナー、一投資家として行動をする場合は、こういう問題において、何らかの伝達ミスがあったとき、不利益、ロスをかぶる可能性もあり、しかも、それをかぶるのは、100%自分なので、心構えは、おのずと違ってこざるを得ません(なんていうと、個人では動かせないような大規模プロジェクトに従事されているサラリーマンの方なんかからは、「こっちのほうがプレッシャーが大きいよ」と、お叱りを受けそうですが、、、汗)。

今の私が、業者さんや仲間と日常的に行う会話についてこれる非不動産関係のアメリカ人というのは、そんなに多くないかも知れません。しかし、これは、私自身も、昔に比べて、英語がすごくできるようになったということでも必ずしもなく、単に、得意分野が増えた程度、自分にとって、必要になってきたことが、多少、できるようになっただけであって、依然、不得意分野が圧倒的なわけです。

こう考えると、「英語ができる」「できない」という区分法自体、実は、それほど、意味がないことも、お分かりいただけるかと思います。

毎回言っていますが、逆に言うと、「できない」と思われている方は、「不動産投資だけ、単語のつなぎ合わせでやり取りできれば、別に、気の利いた社交英語なんか、できるようにはならなくてもいいや」位、割り切っていただければ、必要な攻略範囲を大きく絞れることにお気づきになれるでしょう。

すでに、日本で、ビジネスマン、不動産投資家をされている方は、そういう意味では、アメリカで、社会経験のない大学生なんかが不動産投資用語を勉強するのと比べれば、社会というものがわかっている分、圧倒的に有利なのです。

ちなみに、最後に、この不動産投資というエリア、実は、さらに難関となるのが、legalese(=法律用語のことを、口語で、「法律語」と茶化すいい方)。

私自身は、弁護士の頭の働きなんかについては、若いとき、英米法をシステマチックに勉強しておいたことが、多少は役に立っていると思います。それでも、なかなか、実務レベルには、ついていけません。ゆっくり、勉強を続けるしかないのです。

というのも、不動産関係の弁護士であっても、向こうこそ、こっちのやりたいような不動産投資のことはまったくわからなかったりします。不動産投資にもいろいろなので、向こうのスタンスは、「客が、ビジネスに、どんなものを求めているか、それは、そのお客さんの判断であって、こちらが口を出すことではない。こっちは、向こうのいうことを、法的に表現する手伝いをするだけ」なのですね。

こういう弁護士さんというのは、専門家の常で、自分のエリアの話については、業界トーク、省略話法炸裂。他方、人の話をじっくり聞いて、「そういうことがしたいなら、こういう風にしたら」といったような、クリエイティブな提案をしてくれる人というのは、なかなかいないものです。専門職ではありますが、結局、時間給だから、こちらがよほど要領がよくないと、いけないんですね。

つまり、「弁護士の言っていること、法律を、どうやって、自分にとって金になるような話に落とし込むか」というのは、こちらが実力をつけて、自分で実現していくしかないのです。

このレベルになってくると、必要とされているスキルは、実は、まったく語学力ではありません。私たちは、偉大なる素人【すべてのエリアにおいて、専門家になる時間と手間をかけるのではなく、オールラウンドな総合力を身につける】となることが、要求されているのです。それでも、ポイントは、コミュニケーション力であることには、変わりありません。

自分で英語が操れれば、通訳や仲介者が不要になりますが、だからといってディールメイキングができるかどうかは別の問題。逆に、ビジネス経験豊富なお客さんとのお付き合いで思うのは、経験や才能のあるビジネスマンというのは、私のようなコーディネーター/通訳を使いこなすのが、上手だなあということ。

語学
コミュニケーション力
そして、ビジネスの経験やセンス、企画力
資金力

いろいろな要素が、必要あるいは有益で、但し、すべてを兼ね備えているプレーヤーというのは、なかなかおらず、誰しもが、自分なりのハンディーを持ってプレーしています。もともと、有利に見える人もいますが、ゴルフと同じで、年齢が進んでも、経験や努力で得られるスキルが、もともとの才能や、親から相続した資金力を凌駕することだって、ある。

だから、ビジネスって、面白いんですよね。

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