私が(日本の)マンション投資が怖いわけ
日経関係のショッキングな記事を見かけました。日本の話ですが、多くのマンションで、修繕金が不足しているかもしれない、というのです。
以下、記事引用。
あなたの修繕積立金、“原則方式”ですか?
マンションの運命を決める大規模修繕に潜む怪
2007年6月11日 月曜日 山岡 淳一郎
住まい マンション 大規模修繕 支払一任代行方式 修繕積立金 原則方式
昨秋、日本経済新聞朝刊1面(11月7日付)にショッキングなアンケート結果が報じられた。築20年以上のマンション1576件の管理組合への調査で、修繕費に充てられる積立金が「不足している」との回答が全体の43パーセントにのぼったのである。
全体では6-7割が積立金不足か
調査対象のマンション管理組合は、すべてNPO法人「全国マンション管理組合連合会(全管連)」に所属している。全管連に加入し、住民のマネジメント意識が高いとされるマンションで、この数字だ。維持管理を管理会社に「丸投げ」し、管理費や修繕積立金を「右から左へ」運用されている他のマンションではもっと深刻化していると予想される。高経年マンションの6-7割は修繕積立金不足、との見方もある。
私は、以前、団地の住民が「建て替え派」と「修繕派」に分裂し、建物の維持保全に不可欠な大規模修繕が後回しにされたために凄まじい状態になっている現場を見たことがある。
外壁の亀裂から、のべつ雨水が住戸内に入っていた。天候が悪化すると、部屋にブルーシートが広げられ、あちこちにバケツが置かれた。天井から水が漏るのは間違いないのだが、風向きや雨の強さで水漏れ箇所が七変化し、予想がつかないのだ。住人は、外出中に雨がパラつくと飛んで帰る。
夜の雨となるとこれはもう拷問だった。滴が水面を叩く音が延々と続き、蒸し風呂のような湿気が神経を切り刻む。その団地では紆余曲折の末、「修繕派」が主導権を握り、大規模修繕を敢行。惨憺たる状況は、ようやく改善された。
大規模修繕は、マンション住民の「人生を左右する」といっても過言ではない。
世帯数と修繕にかかる金額の関係は?
一般に管理費は「管理人の人件費」「公租公課(税金)」「通常の共用施設の保守維持費」「事務経費」「共用部の火災・損害保険料」「清掃費、ごみ処理費」「管理組合の運営費」などに充てられる。一方、修繕積立金は、大規模修繕に回されるお金である。管理費が足りなくなったからといって、修繕積立金を取り崩すことは基本的に許されない。
その大切な積立資金が、大多数の高経年マンションでは足りなくなっている。なぜ、このような状況に追い込まれてしまったのか。どう対処すればいいのか。錯綜した問題を解きほぐすため、まずは、管理費と修繕積立金の「相場」をつかんでおきたい。
東京カンテイの調査データをもとに1-3の表を作成した。まず1の首都圏と近畿圏の「管理費+修繕積立金(年額)」の水準比較をご覧いただきたい。
(1)2005年の首都圏、近畿圏の「管理費+修繕積立金(年額)」と
分譲価格(70平米換算)との水準比較(東京カンテイのデータより作成) 東京都 神奈川県 埼玉県 千葉県 大阪府 兵庫県 京都府
管理費
(単位:円/年) 169208 153722 143738 139730 115003 114874 120630
修繕積立金
(単位:円/年) 70501 64146 63656 62974 50807 50937 49133
分譲価格
(万円) 4411 3400 2869 2752 3063 3095 2972
比 率(%) 0.54 0.64 0.72 0.74 0.54 0.54 0.58
*比率は分譲価格に対する「管理費+修繕積立金(年額)」の割合
地域によって違いはあるが、毎年支払わなければならない管理費と修繕積立金の合計は、分譲価格の0.54-0.74パーセントとなる。東京カンテイの試算によれば、仮に物件価格の0.6パーセントの年間負担で、35年ローンを組んで完済まで住み続けるとすると管理費と積立金の総支払額は、物件価格の約2割にも達するという。分譲価格4000万円のマンションなら、約800万円の管理費、積立金を払う計算になる。これだけ大きなお金がマンション全体で動く。いかにそのマネジメントが大切かはいうまでもないだろう。
(2)階層別の管理費(月額)の推移(70平米換算) 1997年 1999年 2001年 2003年 2005年
首都圏 20階未満 13723 12516 12422 12771 12933
20階以上 20323 14333 16544 16849 16192
近畿圏 20階未満 9600 9107 8886 8922 9145
20階以上 12038 10874 10672 10947 11797
*単位:円/月
2からは、20階以上のタワー型マンションの管理費が20階未満に比べて30パーセント前後高い事実が浮かび上がる。超高層マンションは、電気、水道、エレベーターなどライフラインの維持やアメニティ施設の運営費などが高い。それでいて建物の維持に不可欠な大規模修繕のノウハウは、まだ確立されていない。
こんな話を聞いたことがある。そろそろ築後10年になる超高層マンションの住民が、管理会社に大規模修繕の方法を質した。すると管理会社は建物に「足場」を組んで外壁を補修する図面を持ってきた。
「うちの上階は猛烈な風が吹いてますよ。てっぺんまで足場が組めるんですか」と住民。
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「そうですよね。すみません。じつは超高層の大規模修繕は未経験なんです。しっかり研究します」と管理会社は答えたという。高さ60メートル以上の超高層の最上階まで固定足場を組むような工事は、安全法規上、労働基準監督署が認めない。非現実的だ。そんな初歩的なことも知らない担当者が住民との窓口…。怖い話である。
(3)戸数規模別の管理費(月額)の推移(70平米換算) 1997年 1999年 2001年 2003年 2005年
首都圏 50戸未満 14969 13489 13386 13948 14611
50 - 99戸 12899 11977 11613 12711 12301
100- 149戸 11876 11267 11863 12382 11895
150- 199戸 11141 11372 13142 12742 12099
200戸以上 12791 12326 13255 13564 13437
近畿圏 50戸未満 10727 9812 9426 9546 9995
50 - 99戸 9151 8463 8375 8803 8846
100- 149戸 8204 8561 8421 8773 9020
150- 199戸 8211 8816 8455 8834 9151
200戸以上 9863 9163 9744 9416 10301
*単位:円/月
マンションの戸数と管理費の関係はどうか。3を見ると、首都圏、近畿圏とも50戸未満の小規模マンションの管理費は、負担者が少ない分、割高だ。ただし、戸数の少なさは、顔と顔の関係をつくりやすく、住民間の合意形成におけるメリットもある。50戸から100戸、150戸と戸数が増えるほど負担者の分母が大きくなるので、管理費は下がる。
「100-149戸」規模のマンションの管理費が、最も低く抑えられている。そして、150戸、200戸と規模がさらに大きくなると逆に管理費は上昇。建物が一定の限度を超えて大型化すると、とてつもない維持費用がかかるのである。近畿圏の2005年時点では、200戸以上のマンションの管理費は50戸未満よりも高い。おまけに住民が多くなればなるほど合意形成は、難しくなる。一棟に300戸、400戸も入る超高層マンションが「運命共同体」として抱え込んだ矛盾は、今後、どんな形で噴出してくるのか、予想もつかない。
巨額の資金を無頓着に預けていないだろうか
では、月々、住民が負担する管理費や修繕積立金(以下、管理費等)は、どのように収納され、管理されるのだろう。住民の身銭なのだから、当然、「管理組合名義」の収納口座に集められ、日常的な管理業務に必要な光熱費やさまざまな業者への報酬と修繕積立金を仕分けて決済。積立金と余った管理費は、管理組合名義の保管口座に移し、必要とされるまで大切に預ける、と誰しも考えるだろう。
このような管理組合名義の収納、保管口座で管理費等がマネジメントされる方法は「原則方式」と呼ばれ、国土交通省も表向きは推奨している。ところが、奇々怪々、所有権を持つ住民ではなく、管理会社に都合のいい例外もまたしっかり設けられているのである。
国交省は、「マンション管理適正化法」の施行規則によって、住民から口座振替された管理費等を「管理業者名義」の収納口座に入れて決済後に管理組合名義の保管口座へ移管する「収納代行方式」、口座名義こそ管理組合だが管理業者が収納口座の通帳と印鑑を同時保管して実質的にコントールする「支払一任代行方式」も認めている。
管理費の出納にかかわる業務は専門性を要する、との理由で代行方式という例外が設けられているようだが、金の流れを握った管理会社は、営利企業として利潤を求める。サービスに対する正当な対価なら住民側も文句を言わないだろうが、不透明な使途が常態化するおそれもある。全管連事務局長・谷垣千秋氏は、高経年マンションの43パーセントが修繕積立金不足と答えた背景を、次のように語る。
合理的な使い方をするには原則方式が優位。ただし…
「われわれが原則方式を主張するのは、建物の維持管理において少ないコストで大きな成果を出したいからです。同じ品質の材料を使って修繕工事をするなら、1円でも安いほうを選ぶ。でも、管理会社は利益優先だから、高い工事をしたがる。たとえば、今年はベランダの防水、来年はベランダ塗装、再来年はベランダの窓周りのシーリング…と、毎年、足場を組む工事の計画を立てたりする。こんな工事は、一回で、まとめてできる。足場代だけで1回500万円だとしても、3回に分けたら1500万円かかるわけです」
「高経年マンションの多くが積立金不足になっているのは、住民にとって合理的にお金が使われてこなかった現実もありますよ。そこを見直さなくてはいけない。代行方式では、どのようにお金が使われているか、細かいところまではわかりません」
じぶんの資産は、じぶんで管理する。それが自由主義経済の原則であろう。
ならば原則方式ならすべてうまくいくかというと、そこにもまた住民がつくる管理組合という組織の厄介さが横たわっているのである。絡まった糸をほぐしていくと、そもそもマンションを管理する主体は誰か、という根本的な問いに対し、業界の圧力に押されて答えを先送りにしてきた「官」の曖昧さが透けて見える。
(以下、次回へ)
アメリカなら絶対良いと言うわけではありませんが、この記事では、日本では、歴史が浅いこの事態にどう対処してよいか、まだ、ノウハウが蓄積できていないことが問題だ、と指摘されていますね、、、
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