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銀行は、あなたの、味方とは限りません

普通の方にとっては、不動産というのは、一生に、1度か、よくて数回、購入するかどうか。それも、日本人なら、フツーに日本国内だけで。それだけでも、大変なのですが、それに加えて、これが、国際的なニーズが出てきたりすると、さらに、大変、ややこしくなります。

この前ご相談を受けた若いご夫婦のケースも、大変かわいそうに思いました。

このお二人、ご主人は、オーストラリア人で、日本勤務。奥様は、日本人です。

日本円の収入があるうちにと、オーストラリアのマイホームを購入する手当てを、2007年にされているのですが、その段取りが、また、なんとも、微妙なのです。


■購入時期  2007年
■購入場所  オーストラリア某州
■購入価格  36万AUS
■購入目的  将来帰国時マイホーム
■購入時為替 1AUS=100円
■購入時資金 1,300万の貯蓄と、年収850万


このブログをごらんいただいている方は、ここまできたら、「ああ、あの話か」とピンと来るかもしれません。

そう、この方は、オーストラリアの現地銀行がオファーする円キャリーローンを利用しているのです。そして、今、AUDは、70円、、、その後、すごい円高になっているわけです。


*******決済詳細*********

→ 36万AUDドル=100円で、3,600万円
→ 頭金は、1,260万円投入
→ 融資比率は、65%=2,340万
→ 毎月の返済は、これまで、元本あわせて、9万円弱【金利は2%台変動】

********


ここまでは、このご夫妻、うまくやったと思われていたかもしれません。

オーストラリアの金利といえば、一般には、アメリカより高いわけですから、私自身も、「対AUS、NZ投資は、円ローンなら、すごいメリットです」とよく言います。

しかし、このオーストラリアの地元の銀行は、どうやら、商品説明をあまり、厳密にしていなかったようなのです。あるいは、このご夫妻は、自宅を買うということで、投資家マインドがあまりにもなく、そうした通り一遍の説明は、聞いても、そのときは、具体的なリスクが、なかなか、簡単には、イメージできなかったのかもしれません。

貯蓄のほぼ全額を、自宅のローンの頭金に投入する。何が危険といって、これほど、危険な行動をする人は、「自宅は負債だ」【byロバート・キヨサキ氏】が、グローバルスタンダードになりつつある昨今、探すのは難しいのでは、と思うくらいの空恐ろしい暴挙です。

2007年、、、、「今はバブルが続いている。絶対値上がりするだろう。資金を全部投入して、帰国したときのため、手の出る中で、最高ランクの自宅を買っておこう。毎月の返済も、AUDで借り起こすのと比べると、半額以下だ!」と思い込んでいたんでしょう。

しかし、2009年4月現在、私にご相談を頂戴した段階でのご夫妻は、2年前のプチ富裕状態【自宅なし、貯蓄1,000万単位、子供ナシの高額所得者】から、大きく後退してしまいました。現状は、こうです。


********2009年4月のその後********


→ 300万ほどの繰り上げ返済もして、現在、残高は、2,000万
→ 現在の物件価格は、36万ドル前後で変わらず
→ 現在の物件の担保価値は、日本円で再評価すると、2,520万に落ち込む
→ 融資比率65%で調整すると、2,520万のうち、本来、1,638万しか、貸せないことになる
→ 借り起こし額との差額【2,000万-1,638万=362万】の差し入れを要求されている
→ 購入時に貯金を全額はたいたことが災いし、現在の貯蓄総額は、250万
→ 当初合意した融資条件である、追加担保要求を満たす貯金が、今、ない!


************


━(艸゚Д゚il!)━


重ね重ねも失礼ながら、このご夫妻は、やっていることが、本当にダメダメ。


 今貸しています


とおっしゃるので、家賃を伺うと、なんと、月額800ドル。表面利回りは、マンハッタン中心部か、はたまたサンフランシスコのノブヒル【Nob Hill、超高級エリアらしい】の間違いかと見まがう、2.6%なのです【36万AUD÷9,500AUD】!

自宅にするから、ということで、周囲より割安で貸しているのか、あるいは、バブルエリアで、本当に、家賃が低いのか、、、

お金のある方は、プライムなロケーションに、こういった利回りの物件を、securityのために、現金投入で買ったりしますが、それは、

「お金が余って、持っていく先に、困る。銀行に預けても、金利が低い。税理士は、リスク方向が違う資産で持てというから、投資信託や株式ばかりももてないし、、、まあ、マンハッタンのイーストサイドなら、堅実な貯金代わりになるし、時々は使ったり、将来、子供に持たせてもよいし、、、」

といったご判断でされること。

また、もう1つのパターンは、自国の通貨が、強いときこういうことをやって、不動産市場は変わらないけれど、自国通貨が弱くなるのを待って、売ったりといった為替プレイによる短期利益幅を取るような、そういう、キャピタルゲイン式の不動産投資をもくろんでいれば、低利回りは、別段関係ないのです。(つまり、このご夫妻がやっていることの真逆をするsophisticatedな投資)


一般ピープルの私たちが、融資を受けて、利回り2%投資をやったら、ダメでショー!


こんなに毎月の家賃が低くては、AUDにスイッチしなければいけないときに、まったく、気持ちが、動きません。

私自身、

「円ローンは、それなりのバックアップキャッシュがあってやることです」
「不動産を買うときは、余剰資産をおいて」
「毎月のキャッシュフローは、プラスでないと」

といったことを、セミナーやこのブログでは、口をすっぱくして申し上げています。このブログを日常的に読んでくださっている方々は、正直、そのレベルのことを、ベタに言われたら、「そんな初歩のことを」と、苦笑されるかもしれません。

しかし、本当を言うと、表面的には、そのレベルになっても、普通の人間が、不動産投資家のマインドになって、自然に行動できるようになるまでには、相当な道のりがあるのは、私自身が、自ら、経験してきていることです。


このお二人は、マージンコールの危険性を、銀行側から、説明されなかったのか?


それほど、細かく説明されなかったとしたら、問題ですよね。とはいえ、すべて、書類に書いてあり、それに任意にサインをするのですから、「わからなかったよ」は、通りません。

周囲の説得に、「かまわないよ」と強硬に、高級な自宅取得に固執してしまったのか、それとも、周囲は、「自分たちの報酬は、コミッション制だから、買えるだけの物件を買わせてしまおう」ともくろんだのか、、、当時は、みんな、何でも値上がりすると思っていたもの。今となっては、当時の事情を云々してみても、時間の無駄というものです。

奥様が、ローン借り換えができますか?というご相談にお電話をかけてこられましたが、考えてみても、よしんば、私の銀行のローンに借り替えができたとしても、それほど、メリットがあるというほどでもありません。

頭金比率は、70%になるものの、借り替え手数料と、弁護士費用を加えると、返済に充てられない出費が、何十万も、あります。結果、必要な資金額は、100万も、違わないのです。

そもそも、この状況では、私の担当銀行も、「まあ、それは大変ね。任せて!お手伝いしますよ。なんなら、当面、金利のみではじめましょうよ」なんて、絶対言わないだろうと想像がつきます。晴れている日に傘を貸す、それが、銀行です。ましてや、今は、銀行自身が経営不透明な時期で、nonperformingな融資なんか出したら、議会で槍玉にあがります。

今の融資銀行が、マージンコールに対する担保追加に関連し、繰り延べ交渉を飲んでくれるのであれば、payment plan【返済計画】を約定して、会社のボーナス等の支払いなどをやりくりするのが、一番、気持ち的にラクで、早いかと思います。私自身も、重い気持ちになりました。


++++++++++++


2年前は、このお二人は、30前後のご夫婦としては、それなりに、先発組だったのではないかと思います。この年齢のサラリーマンが、きちんと家庭を構えながら、1,000万台の現金を貯蓄するのは、並大抵のことではありません。

しかし、この二人は、自分たちの安定の源が、

■悪い負債がないこと
■キャッシュを持っていること

であるという状況分析を誤り、自分たちのsource of strength(強みの源泉)を放棄。しかも、

■2007年という不動産バブル末期に
■AUDのバブル破裂直前に、日本円をすべてAUDに変えてしまい、
■投資として見ると、ネガティブキャッシュフロー案件の頭金として沈めてしまった

と、何重ものミステークを犯しています。


この二人が、2007年にお金を使ってしまっていなければ、今、2,000万ほどの円貯蓄があるはず。それを持って、今こそ、同じような物件を取得するための相談に来てくれていたのだったら、事情はまったく違ったのに、と心から残念に思わざるを得ませんでした。そうしていたら、同じランクの物件を、頭金と諸費用合わせて、1,000万以下で購入できて、予備資金が、やはり、1,000万というcomfortableなポジショニングができたのです。


こんなことを言うのも、私自身、つい先月、同じオーストラリアへの「将来のセカンドホーム」購入ご希望の若い日本人のご夫妻のファイルを決済したばかりだから。この二組の夫婦は、一見、そんなにプロフィールは変わらず、同じ都市居住であれば、社交仲間だったとしても、おかしくないくらい。

しかし、この日本人のご夫妻は、今、現地物件を、為替レートが異なっているというそれだけで、実質、3割安で、買いに入るポジションが、確保できたわけです。もちろん、マージンコールについて私がしているご説明も、丁寧に、資料を見たり読んだりしてくださいました。

そして、その結果、この二組のカップルは、いやな言葉を使うと、「勝ち組スタート」対「負け組スタート」をきりながら、それぞれの30代を過ごされることになります。年齢、職業的な階層、教育的な階層としては、多分、ほとんど、変わらないカップル同士なのに、、、

もちろん、ご主人には、きちんとした仕事があるのですから、ここ数年の苦しい一時期を乗り越えれば、遅すぎるということは、毛頭ありません。

しかし、この立ち遅れを、真剣に、数年内に取り戻したければ、このご夫妻は、奥様は、現状のフリーのアルバイトではなく、なんでもいいので、定職をゲットし、出産は数年遅らせるくらいの気迫で挑む必要が出るでしょう。

さらに厳しい指摘をすると、ご夫妻がエンジョイされている低金利円融資オプションは、帰国時には、撤回されますので(収入が円建てでなくなるから)、オーストラリアに帰国し、夢のマイホームに住まれたら、今の9万円というローンの月額返済額も、大きく上方修正されざるを得ません。

電話口では、「数年後に、オーストラリアに帰る予定でいるから」というお話でしたが、キャッシュポジションが安定するまでは、そんなことすら、しないほうがよいかもしれないのです。


いかがでしょうか。

どなた様も、融資の相談をちょっとしたくらいで、私なんかに、出産計画や、生活する都市まで、指図されるいわれは本来、毛頭ありませんが、この方々は、2007年に、こういう「おせっかい」が回りにおらず、自分たちの30代をturbulent(=波乱)な時期と自己規定してしまいました。

ただ、成功裡に投資を開始されたご夫妻の話を、引き合いには出しましたが、こういうことが、最初からできている方って、なかなかいないものなのです。

この日本人のご夫妻、ご主人は、会社では、資産管理部門にご勤務で、いわば、お金の運用については、「プロ」の方でした。私のお客様って、こういう方が多いです。うらやましいなあ、すごいなあとは思いますが、私たち全員が、こういった仕事に従事できて、20代から、仕事で、このレベルのシミュレーションが、日常的に、できているわけではないんですね。

私自身も、振り返ってみれば、仕事もまったく別のところからはじめましたし、もっとひどい状況で30代を過ごしました。こういう一番苦しいときに限って、外部の人間には、お手伝いできることというのは、まったくないものなのです。

しかし、私なんかが、えらそうないい方ですが、これを乗り越えることで、人間というのは、真の強さが、生まれてきます。

どのご家庭も、投資や、自宅購入といった最初のステップというのは、こんなものなんです。ここからが、本当の勝負。

私には、かげながら、声援を送るくらいしかできません。がんばってください。

参考:AUD対日本円、過去5年。ヤフーファイナンスから↓
1Aus.gif
過去10年にさかのぼると、AUDは、2001年の60円くらいから、金融恐慌まで、強くなる一方でした。2007年当時、ご夫妻が、AUDが永遠に高くなり続けると思ったのも、むべなるかななんですね、、、

中山からのお願いです。
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