【失敗例】ある投資家のデトロイト遠隔投資
先日、デトロイトの取引先と例によって打ち合わせをしていましたら、「テリー覚えている?」という話になりました。テリーさんは、オレゴン在住の投資家です。
実は、私が現在の取引先から家を買うにあたり、「あなたの取引実績について話をしてくれる照会先を教えてください」とお願いをし、2人くらい、お客さんを紹介してもらい、お話をさせていただいたということがありました。それもあって、自分自身が、安心して、取引を開始することができたという経緯があります。
そのとき話したうちの一人が、テリーさん。感じもよく、「オレゴンでは、まだまだ、値上がりが見込めるんだよ」なんていう話もあって、「アメリカ人は、やっぱり、いろいろなアングルがあるんだなあ、ほーっ」とうらやましく思ったものです。
ですが、資本力のない私は、だからといってオレゴンの新築狙いなどはとてもできません。しかし、テリーさんの推薦の辞もあって、そのまま、今の取引先との関係をスタートさせ、デトロイトを自らの投資先と定めたわけです。
「あのテリーがね」、、、
テリーさんに起こった話はこうです
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私もよく知っているX通り。テリーさんは、やはり、私のお客様と同じくらいの値段で、つまり、2万5,000ドルで、Aさんたちから、修理済みの3BRの物件を買いました。
最初、Aさんは、好意で無料で賃借人をつけてあげて、しかも、管理会社を探す手間を惜しんだテリーさんに泣きつかれて、管理もしてあげることに。10%の手数料を取って、テリーさんに、家賃を送っていました。
しかし、すぐ、テリーさんは、「うまくいきはじめたようだから、それなら、Aさんに管理をしてもらうまでもないや」と考えます。
Aさんには、「賃借人には直接家賃を送ってもらうから」と断って、管理委託は打ち切りに。
Aさんだって、別段、毎月賃料の10%の65ドルがとても欲しい、というわけではなく、フォローでサービスでやっているだけですから、「それならもちろん、ご勝手に」です。
実は、テリーさん、本業または別の投資で苦しくなったのか、毎月の収支が合わなくなっていたらしく、それで、こういう「けち」をしだしていたらしいのですね。
3ヵ月後。
Aさんたちは、テリーさんからの連絡で、結局、Aさんが管理をやめた後、賃借人が、一度も自発的にテリーさんへ、家賃を送ることはなかったのだという状況を知ります。
結局、その賃借人は、出て行ったようで、それからが、さあ大変。
物件を確認しに行ってあげたTさん、物件のアルミサイディング【外壁】が盗まれていることに気がつきます。
好意で、「原価で修理してあげるから、保険を請求したら」と連絡したところ、テリーさんは、なんと、保険を打ち切っていたというのです。
それならそれで、自腹を切るわけで、金額自体は、2,000ドルにも満たない額だったので、その修理や保険の再発行を手配し、次のテナントがつけられれば、なんとか、問題がそれでも、その段階で収められたはずなのですが、このオファーを受けてもテリーさんは、「お金がない」ということで、状況を放置。
サイディングが盗まれたことを知ってから、1週間以上たって、たまたま、取引先が、また、X通りを通ったところ、テリーさんの家は、今度は、中まで押し入られてしまい、ダメージは、もう、2,000ドルどころではなくなっているというのです。
「僕たちが、あの家をテリーに2万5,000ドルで売ったときは、まったく何の問題もなかったのに、、、テリーは、今一銭も予備金がないらしいから、修理なんか、もうなおさらできないだろう?仕方がないから、僕が買い戻してあげようかと思うんだ。」
心優しいTさんに対し、あくまで第三者モードの私は言いました。
「テリーさんは、ちょっと今冷静さを失っていると思うから、あなたが、好意で、その家を、例えば、1万ドルで買い戻してあげる、とオファーしても、かえって、その好意が理解できず、逆上する可能性もあるかも。メール1本だけで、オファーを入れて、それ以上には、あまり、親切にしないことね。誤解をされて、『俺の不幸でまた金儲けをしようとしているのか』とか、八つ当たりしだすかもしれないわ。」
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群れの中で一番弱い獲物を狙うライオンと同じで?、こうした泥棒は、「人の気配」に敏感です。最初、アルミサイディングを誰かがちょっと盗んでみる。
しかし、1週間たっても、誰も騒ぎ立てる様子がない。修理に来る気配がない。警察も来ない。
これは、本当に誰も気にしちゃいない家なんだ。だったら、ここは、一気に行くしかない。
こういうロジックで、泥棒は、何度かにわたって、進入してきたのでしょう。同じ一味の可能性は高いですね。
空室物件に押し入って取れるものといったら、サイディングもそうですが、銅などのパイプ類、ヒーター関係の備品など、どんな家でも、何千ドルもするものが、鎮座ましましています。もちろん、こうした人たちは、そういう品々を、ほんの二束三文で売るなどして、ドラッグマネーをゲットしようとしているだけなのですが、、、
Aさんが毎月、行って催促していたからこそ、家賃をしぶしぶ払っていた賃借人。そもそも、毎月の家賃10%分をケチりさえしなければ、テリーさんは、今でも、毎月、数百ドルの家賃をらくらく受け取っていられたはずなのです。
そして、泥棒も、人が居住している家で、サイディングを盗むようなことはせず、「もっと楽に悪さができるよその家」を探したことでしょう。
残念ながら、それまでは、地元投資しかしていなかったテリーさんは、本業やらの台所事情もあって、遠距離で投資するときの割り切りの見極めがつかなかったのですね。
地元オレゴンの彼のエリアでは、Home Owner's Association【管理組合】がある、gated community【出入りにセキュリティが必要な計画区画】なんかが、一般的でしょう。そういう、ちゃんとしたワーキングクラス向けの家々と、デトロイトの市内ダウンタウンの物件管理の現実がどんなにかけ離れたものなのかは、想像がつかなかったのかもしれません。
今のテリーさんにとっての合理的な選択は、ずばり、デトロイト撤退。
テリーさん、私がこんなところで、「忠告」しても仕方ないですが、ここは、黙って損切りをして、買戻しのオファーを受け、小額でいいから、現金を手にして、巻き返すしかなさそうですよ、、、
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