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家族間コミュニケーションギャップ 不動産編

私は融資のお手伝いをしますが、自分自身が投資家であるので、いつの間にか、「そういう目」(投資をプロデュースする目)で、ご相談に乗ってしまっていることが多いです。

私自身も、融資の相談はいやになるほどしましたが、考えてみると、私の事情を聞いて、私のためを思って、アドバイスをしてくれた融資担当者というのは、いないので、「そういうことをすると、商売にならないんだろうな」と思います。

前も、銀行の利益が私たち投資家の利益と相反することがありうる、ということをいいましたが、あまり、思ったことをそのまま口に出すのは、good businessではないのでしょう。そもそも、不動産にかかわる方すべてが、投資家的な視点を理解できるとも限りません。

また、もちろん、よく考えると、FPではないのですから、融資の受付が、何らかの投資アドバイスととられるかもしれないような擬似コンサルを提供しているように見えるとしたら、会社は、それを、奨励しているかのような経営体制をとるわけには行かないかとも思います。

私の場合は、上司もいないし、通常、相手に対し、思ったことをそのままいえます。自分ではそれができる立場にあることが気に入っていますが、但し、そういう場合、「お役に立てば」と思ってする親身のお話ではありますが、よその会社さん同様、「仕事にならないこと」に、あまり長い時間を割くことも、できません。

その結果、相談されるほうは、あまりに直球が来るので、びっくりされることもあるかもしれません。


この前ご相談に電話をしてこられた男性は、息子さんが、アメリカで勤めており、これからもずっと賃貸だというので、円ローンの頭金を出してあげようというお話なようでした。

15分のやり取りで、大体の事情は、わかるものです。


相談者のプロフィール

  リタイヤ、年金+不動産賃貸収入で悠々自適

相談者の息子さんのプロフィール

  アメリカ勤務が長期化する独身30前後、月収3,000ドル、家賃1,000ドル

希望購入物件

  カルフォルニアの40万ドル前後の物件


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皆さんだったら、どうコンサルされますか?

私は、単刀直入に、このお二人では、円ローン融資対象となりにくいことを申し上げました。昔は違いましたが、現在は円ローン取得には、円収入が必要なところ、円収入があるお父様のほうは、もう返済期限の70歳に近くなりすぎているのです。そもそも、息子さんが実住であれば、円ローンの規則違反でもあります。

この方は、いろいろ、不案内だということで、しきりに、会って、ゆっくり話を聞いてほしいとおっしゃいますが、お目にかかるまでのこともなく、私が思ったことは、5分でご説明ができました。

冷静に考えると、カルフォルニアで、もし、頭金を、20万ドル投入し、40万ドルの家を買ったとしても、お父様の想定に反し、この息子さんには、このようなローンの返済能力があるかどうか、疑問があります。

この方は、円の金利で、融資が取れるということを聞き、「それなら、ローンをとっても、返済額は、家賃相当ですむのでは?」と思われたのです。確かに、円融資なら、そうなのですが、よしんば、この息子さんが、円ローンが取得できたと仮定したとしても、それでも、実は、問題があります。

というのも、家の購入には、ローン返済のほか、固定資産税や保険といった、何百ドルもの月額固定費が発生するから(中古の一戸建てなら、管理組合がない場合も多いですが、逆に、タウンホームなら、管理費が、高くなります)。

つまり、今、家賃が1,000ドルだということで、ローン返済能力が、1,000ドルだと思ったら、実は、毎月の出費は、それより大きいわけです。こういった考え方をしていくと、この男性が、今の家賃と支払額を変えずして、自力で返済できるローンというのは、月額700ドルといった額になるかもしれません。

おととし、去年までの円ローンであれば、金利のみ返済オプションをゲットできましたので、こういう算段が可能でしたが(それでも、primary residenceはNGでした)、他方では、円ローンには、マージンコールの危険性がありますから、貯蓄がゼロの方がするようなことでは、本当にありません。いずれにせよ、金融緊縮の2009年の今は、こんなシナリオは、非現実的以外の何物でもありません。残念ながら、英語で言う、the ship sailed(船が出てしまった。時期遅し)の状態なのですね。

こういう状況において、お父様は、息子さんが、将来結婚して、子供をもたれることを、想像しておいでのようです。まことに、親心の有り難きかな。


私の考えでは、皆さんの根拠のない夢は、できるだけ、早いうちに、壊してあげるのが、私の役目です。聞かれれば、単刀直入に、自分の思うことを申し上げます。


「Iさん、息子さんがまだ30なら、結婚するのは、10年先になるかもしれませんよ。今は、結婚しない方もいます。また、結婚しても、イマドキは、すぐ離婚するかもしれませんから、お子さんができたとしても、結局、また、一人になるかもしれません。年収が4万ドルに届かない息子さんが、家族生活を見越して、今、40万ドルの一戸建てを買うことには、特段、意味はないのではないでしょうか。Iさんは、今回、2,000万の援助をされて、それで済ませられるおつもりのようですが、これを実行に移してしてしまったら、2,000万だけでは、すまないかもしれません。」


普通の社交の場では、いくら私でも、こんな会話にはなりません。しかし、この方は、私にいろいろ教えてほしいということなのですから、正直に、downside potential(悪くなる可能性のあるシナリオ)をバシバシ指摘することになってしまいました。

そう、Iさん自身は、確かに、たくわえも、不動産もお持ちで、生活自体は、悠々自適ですが、息子さんに毎年、引き続き送金することは、考えておいでになりませんでした。

大体、そこまでは聞きませんでしたが、ほかに兄弟がいれば、必ず、問題になりますので、贈与の問題処理だけではなく、相続対策も絡むでしょう。

「今、2,000万援助してあげられるなら、キャッシュで20万ドルの物件を買ってあげたら、どうですか?どうせカルフォルニアでしたら、小1時間、運転して職場にいっているはずですから、それだけ範囲を広めれば、いくら、ベイエリアの周りでも、今なら、十分、一人暮らしに適当な物件が買えるはずです。結婚しても、赤ちゃん一人までくらいなら、そこに住めるはずです。その段階で、その家なりコンドミニウムを、売って、頭金にして、そのとき、奥様も、働いていれば、一緒に、大き目のローンが組めますから、物件は、その頭金に使われるのであれば、その段階では、それは、結構なのではないですか。」

Iさんには申し訳ないのですが、解決方法は、簡単。

他方、簡単でないのは、感情の処理。

そして、それは、私がお手伝いすることができるのではなく、Iさん親子が経なければいけないプロセス。


私に言わせれば、この息子さんには、家を買うために、今、2,000万を援助してあげる必要はないのです。


親子ですから、最後には、Iさんの資産は、息子さんが相続されます。いつあげても、Iさんの勝手。しかし、Iさんは、息子さんが頼りないと思っているから、赤の他人の私なんかを頼って乗り出されてきていて、しかし、その状況が自分では、認められていないのです。

頭金を出すから、家を買ってあげる、といわれれば、やる気があれば、相当、自分で動き回れるはず。30過ぎて、融資の相談の電話まで、お父さんにやらせようというのは、自分が、それほど、乗り気ではないからではないでしょうか。

そもそも、これは、どうやら、息子さんのアイディアではないのです。

■30過ぎているから、
■そろそろ結婚を意識しないといけないから、
■結婚したら、子供が生まれるだろうから、
■そうしたら、一戸建てが必要になるだろうから、

これらは、Iさんの考えに過ぎず、息子さんがそういうロジックでお父さんを頼ってきたような様子ではありません。「家賃を1,000ドルも払っているというから、それが後10年も続くのなら、家を買わせてやろうと思ったのですが、その前に、どうやら、まだ、考えるべきことが、たくさんあるようですね、、、」とIさん。


こういうのを、世に、親ばかといいます。


Iさんの気持ちは痛いほどわかりますが、私がIさんと、何時間、会って話を聞いてあげても、息子さんに、結婚を決意させることはできないでしょう。しかし、2,000万をえさにして、イマドキのご時世で、へたに、20万ドルのローンなど、組ませてしまったら、逆に、息子さんを、ローン返済地獄に突き落としかねないのです。【景気が上向きで、融資条件が良好なときは、別段この心配はそれほどありません】

息子さんは、1,000ドルの家賃が、きちんと払えて、海外赴任を立派にお勤めになられ、ちゃんと社会の役に立たれているようす。2,000万の家を買ってあげる位は、いいですが(あるいは、10万ドルのローンくらいは、アメリカの融資でゲットしてもいいと思います。しかし、4,000万の家、つまり、20万ドルのローンを、息子さんにしょわせるのは、私には、それほどよいアイディアとは思えません)、Iさんは、本当は、今は、息子さんのことは、ほうっておいてもおかしくないのです。

結婚を真剣に考えたり、将来の資産形成に関連して、自覚が出てくれば、お父様にも、そのことが、伝わるはず。そのとき、ご家庭の事情に応じて、援助や相続問題を話し合えれば、それで、十分なのです。


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私のこれまでの経験でいうと、こういう「家族間合意」ができていないケースや、「家族の複数メンバーが意思決定や資金捻出にかかわっている場合」、必要とされているのは、家族が、お互い、率直に意見交換をしあうことによって、そもそも、どの方向に進むべきかを決定することであって、不動産の知識や無理な融資を組むためのウルトラCではありません。

失礼を承知で、勝手なことをいうと、Iさんは、孫ができたときの息子さんの家の間取りが、今から心配なほど、時間に余裕があるのであれば、ボランティア活動でも、犬を飼うのでも、なんでもいいので、まずは、自己充実を考えられれば、いいと思います。

2,000万といえば、結婚して20年以上たった夫婦間では、居住用不動産の場合、2,000万まで、土地または上物について、贈与税免除が、1回、認められます(基礎贈与枠とあわせると、単年度に、2,110万)。Iさんは、そもそも、奥様への自宅の一部の分筆は、お済みだったでしょうか。

当然、こういうことを言うのは、私の分を過ぎているわけですが、指摘するべきなのは、「収入を超えた家を買ってあげることで、息子さんに、プレッシャーをかけても、『そろそろ、落ち着いてほしい』という、Iさんのもくろみは成功しないかもしれないという事実。それに対し、Iさんには、足元で、もっとやられるべきことは、たくさんあるはずなのではないのですか」ということなんです。


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ブログを読まれる皆さんも、資産形成に関連した決断を下す場合は、自分の家族のおかれた状況というものを、できるだけ、客観的に評価してみる習慣をとっていく癖をつけることを、お勧めします。

自分自身と、正面から向き合うということは、そんなに簡単なことではありません。しかし、これをしてからでないと、外部の誰が、回答を持っているのか、誰に相談をしたらいいかすらが、わからないような五里霧中の状態で、ご自身のfinancial lifeを過ごし続けることに終わります。

私自身も、人の家だから、偉そうに診断を下せるのであって、私自身が、過去20年間、ここ数年仕事柄得た知見に基づいて行動できていれば、今頃、自分の資産状況は、桁が、まったく違ったでしょう(爆笑)。

誰しも、自分の家で、家族の考えを、お互い尊重しながら、一家に最適な、みんなが幸せになれるような、financial decisionを下していくのは、そんなに簡単ではないのですね。

しかし、だからこそ、今、考えはじめるくせを、つけなければ、いけないのです。

自分が立てたゴールに向かい、適切な判断を下すことができる自分を作っていくためには、私たちは、みな、日々、一歩一歩を、確実に歩んでいかなければなりません。今流行の、コーチング、メンタリングなどを受けてみるのも、刺激になって、いいかもしれません。

これは、例えば、健康維持や、語学習得、資格取得といった、さまざまな分野における自己向上で必要とされる日々の努力と一緒なわけですね。

このように、一回、資産継承についても、計画的にものを考え出す癖をつけると、それは、不断のプロセスとなり、自分のライフスタイル自体を、決定付ける重要な要素の1つとなっていくことに、気が付かれるでしょう。

最終的に、資産形成を考えていくご家族は、それを視野に入れずに行動されるご家族とは、まったく違う家族生活を送られることになります。

例えば、Iさんのご一家が、こういった考え方をされる習慣を、常日頃、持っているご一家だったとしたら、今の段階では、こう考えるオプションがあったかもしれません。


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お父様の2,000万を使って、息子さんが、今、金利が割安になっているアメリカのローンを組んで、40万ドルの一戸建てを購入。開いているベッドルームは、若い人たちに、ルームシェアに供し、ローン返済分を家賃収入で補う。自分は、これまで、家賃にまわしていた分を貯蓄して、婚活にいそしみながら、不動産の資産回復を待つ、なんて、、、

東京以上に物価が高そうなベイエリアですが、今、息子さんが、これくらい、がんばれれば、本業の給与所得を補う資産形成に着手することが、可能になります。逆に言うと、今の息子さんの収入を前提とすると、お父様がどうやらイメージされているような、「お子さんを二人生んでくれる専業主婦の奥様」を想定した生活設計は、息子さんご自身が、こういう、普通の人にはまねのできないような努力をしていく覚悟をしないと、実現が難しそうに思います。

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これだけのことができる日本人というのは、なかなか、いないと思います。私だって、30のとき、そんなことを言われれば、目を回したはず。今となれば、なおさら、イヤですr(^-^;)。

ですので、このブログで分析してみたように、この親子にも、いくつものオプションがあるものの、私は、「この状況でアドバイスをしろといわれたら、2,000万の小さめの物件をキャッシュで買ってあげる」くらいが、ちょうどいいのでは、と思ったというわけですね。

しかし、上に述べてきたように、相談する方によっては、「それなら、これくらいのローンを組んでしまいましょう」といった方向に話が進んでしまいます。

このお父様のように、簡単に、誰にでも、「2,000万ありますので使い方を教えてください」なんて、言ってまわるものではありません。状況をcontrolするのは、あくまで、自分でなければ、ならないのです。

このブログを読んでくださっているあなたならば、これから、日々、どんなライフスタイルを、選択されていきますか?

中山からのお願いです。
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