アメリカの不動産決済の実態はこうだ 融資編
アメリカの決済は、タイトルカンパニーのエスクローオフィサーという役職の人がつかさどりますが、ここだけの話、例によって、rock the boat【和を乱す】するような発言をすると、決済がスムーズに采配できるように対応しようとする敏腕関係者の腕の見せ所は、はっきり言うと、「いかに、説明をしないで済ませられるか」だといって、ほぼ、間違いがないのではないかと思います。
こう書くと、「不動産の人ってひどいわ」と思われるでしょうが、ここで、決済の方式を考えてみましょう。アメリカでは、以下のようになっています。
■不動産業者(レアルター)さんの役割→物件をゲットし、契約締結まで
■ローンオフィサーさんの役割→融資付け
■エスクローオフィサーさんの役割→契約に基づき、名義書換
ここで重要なことが、いくつかあります。
まず、レアルターさんは、決済書類の説明はする立場にはなく、場合によったら、クロージングには、同席すらしないでしょう。但し、親切な方なども多いですし、フォローの一環として、決済時に同席してくれることがあっても、例外ともいえません。
ローンオフィサーさんも、銀行融資の段取りをつけたら、それで終わりで、下手をすると、銀行の担当者どころか、ローンオフィサーさんも、一回も会わなくて済ませられます。ここで確認しておくべきなのは、通常、複数の融資プログラムをブローカーしているモーゲージブローカーの場合は、銀行員とやり取りをするのではなく、ローンオフィサーは、いわば、フリーだということです。特定銀行から直接ローンを組む場合も、決済時には、銀行員は、同席しません。
そうすると、タイトルカンパニーのエスクローオフィサーさんは、決済時に、名義書換書類のみならず、融資書類の説明もしなければいけない立場だということが、お分かりになるでしょう。
こうなると、エスクローオフィサーさんの立場から言えば、決済って、こう見えてたりしないかな、というのが、私の邪推です↓
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こっちは給料プラスタイトルインシュアランス販売の歩合がちょっとあるかどうかくらいなのに、レアルターさんや、ローンオフィサーさんは、大きな金額のコミッションをたくさん取っていて、やっていられないわ。
まあこっちは、セールスは不得意だから、給料もらって、医療保険とか入ってもらっているほうが、楽なんだけどさ。彼らなんか、一ヶ月、収入がないこともある自営だもんね。
でも、トーシロのお客さんに、ローンの書類へのサインをさせるって、本当、面倒で大変よね。
毎回、みんな、いろんなローン取ってくるし、そもそも、そういうの、私が取らせているわけじゃないし、よく読めば、条件が不利なローンをとらされている人も多いけど、そんなこと、私がセールスをしたわけでないから、私の知ったことじゃないし、大体、細かい融資関係書類なんか、全部、私自身、ツボのところ以外、いちいち細かく読んじゃいられないわ。
そもそも、融資書類なんか、経験があまりない人に、説明しだしたら、きりがないわよ。その場でサインとか拒否されたり、夫婦が、けんかとか始められても、困るしね。
まあ、書類の説明は、さらっとやって、とにかく要領よくサインをもらって、決済を手順よく進めるのが、私の仕事だから。他の人の尻拭いとか期待されるような給料もらってないって。
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つまり、一回、汽車が動き始めたら、モメンタムは、その汽車が終点に無事スケジュールどおりたどり着かないと、nobody gets paidです。タイトルオフィサーのところに書類が来た段階で、タイトルオフィサーの至上命令は、書類説明をすることではなく、書類にサインをさせることになり、買主がバックオフしたりしたら、大変なことになります。
ひとつの典型的な例は、一般的には、契約書類は、相手には、事前に見せず、決済の場でのみ、見せるという方法。これだと、精査することができず、その場でサインをすることになります。【事情は日本でも大同小異ではないでしょうか。日本でも、経験のある投資家さまでない限りは、決済書類を、決済日の前に目を通している方は、少ないのではないかと思います。】
こんなことを言うのは、この前、クロージング中で、銀行側に、言われたことに、納得がいかないが、どうなっているのでしょうか、、、といった趣旨のご相談のお便りを頂戴したから。
実は、このような方は、多いのですが、私はいつも、ご質問者にも、ある程度の常識は、わきまえてほしいと思っています。レアルター、融資付け担当者、エスクローオフィサー、と、この方の決済から、高額の報酬を得るべき立場にいる担当者が複数人いるのですから、やっぱり、それらの方に、報酬分を、いくらでも、働いてもらうのが筋。ワタシは、赤の他人なんですケド、、、( ´Д`)
他方、こういう「どこに相談していいのか、わからず、不満を抱えるシロートさん」が多発するのは、上のような仕組みになっているためです。私自身が、5年前は、こうでした。
この方は、名義に関連し、銀行の言ってきたことに不満があったようですが、担当者も、「やってほしいことを伝える」以上は、こういうことを、細かく説明するのは、大変嫌がります。弁護士でも、CPAでもない上に、取引の一方当事者関係者として、この段階では、相対している形になっているので、親身になる立場には、ないのです。
担当者も、内心では、「そんなの自分で調べろよ」くらい、思ったことでしょう。
こちらは、「お客さん」なんだと思って、お客さんとしての丁重最高な扱いを求めている。この方も、アメリカ人と結婚して、アメリカに住んでいながら、この「こういう場合は、私はお客さんヨ」という日本式の思考パターンから、脱することが、できていません。
しかし、向こうは、一回、引っかかってこの段階まできたら、こちらを、利害関係の対立する取引相手と位置づけるわけです。そこからは、いかに、この「お客さん」を、丸め込むか。それが、アメリカの契約社会の実態ではないでしょうか。
こういうことを、いちいち、納得がいくまで、きちんと、説明してもらい、自分に一番有利に事を運びたければ、本当は、この方は、最終的には、最初から、自分自身の利益のみを代理してくれる、家族法/不動産関係の弁護士と財産法のCPAを、ご主人と別に、自前で雇うことになるだろうというのが、実際のところです。【ただし、ローンを組むときは、結局は、オファーしてくれる銀行の言いなりになることが多いので、自分の利益など守ろうとしても、にっちもさっちも行かなくなったり、大体、よいCPAや弁護士に出会うまで、そもそも、放浪があるわけですから、やっぱり最初のうちは、こういう段取りは、間に合わない確率が高いわけですが】
そう返信しましたが、使えないやつだとだけ、思われたのでしょう。返事もありません。こういう方は、だいたい、いつも、これっきりです。ああ、やっぱり、その程度の人に、親切にしなくてよかった(爆笑)。
もちろん、CPAや弁護士でも、多少の質問は、一般的な入り口営業の範囲内で、返事をしてくれます。私同様、コアなブログを書いている方も多いですし、wikiに書いてあること程度でも、相当、リサーチで、わかることがあります。さらには、アメリカにある「低額の月額払いで、弁護士と、話をすることができます」という弁護士サービスを使うのも、ないよりはましかもしれません(私の経験では、レベルの低い弁護士ばかりで、話しても無駄な感じがしましたが)。
いずれにせよ、相当な自助努力で、状況をカバーしない限り、あらゆるレベルで、わけがわからないうちに終わるのが、アメリカでの取引、不動産の決済というものです。
こうは言っても、通常は、皆さん、自宅を買うくらいで、弁護士に相談をすることはされないわけですが【お金もかかりますし、やり方によっては、そんなことをしたら、うまくいっていた夫婦仲がこじれだすでしょう】、本当を言うと、アメリカで、不動産を買うときは、アメリカの社会について不案内な日本人は、配偶者に隠れて、自分の州の夫婦財産法や相続法のスタンダードな本をコッソリ読むくらいのイニシアチブがないと、離婚になった場合は、後で、配偶者に、してやられることになる場合も出るかもしれません。なんといっても、アウエーなのですから。
そういう状況の中で、「離婚で、与信を大きく落とした」は、共同名義、共同負債に関連して、もめた場合、相手の不履行により、自分自身が不利益をこうむるという形で、よく生じる現象なわけです。
アメリカンライフは、大変だなあというのが、いつも、私の率直な感想です。
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