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「両手」は、なんていう? ちょっと、ニッチな、不動産用語です

昨日は学芸会ラッシュで、英語塾の参加者が少なかったですが、少人数で、例によってじっくり勉強をすることができたと思います。土曜日の英語塾は、勉強熱心な皆様とまったりすごせて、私的には、憩いの時間となっております。

さて、この前、日経ビジネスオンラインで、「民主党、政策BOOKで、両手取引禁止を掲げる」という記事がありました。

しかし、「業界外」の方は、「両手が英語でどういうか、というより、そもそも、日本語で、両手って何だ?」と、目が点になるかもしれません。


話題の記事は、こちらから。

日経ビジネス記事


不動産仲介において、業者さんは、それぞれ、通常、3%の手数料を、もらうのが通例だと思いますが、大手などの場合、「片手」、つまり、3%だけでは、利益が薄いので、意味のある営業利益を確保するため、いくつかの慣行がある、という話ですね。

それが、「預かった売り出し物件を流通させず、購入希望者が自分のところに来たときだけ、こっそり出してくる」という「在庫寝かせ」や、そのときの、物件の相場、あるいは、合意可能価格ではなく、自分が成約させたいと思う値段付けを優先する「価格操作」であるというわけです。

売主としては、物件を売りに出すときは、本来、市場にできるだけ露出させたいと思うだろうに、せっかく預けた物件が、しまいこまれてしまう。他方、買主としては、できるだけ広く市場を見て、自分の気に入るものを見に行きたいと思うだろうに、自社在庫ばかりを、薦められる。

これが、両手横行の日本における弊害だというわけで、これについては、過去にも、言及したことがあったと思います。

それに対し、民主党は、両手禁止を掲げ、ただでさえ不況で困っている業界(大手)は、戦々恐々、という話ですね。

もともと、相当の営業網がない限りは、両手を試みようとしても、むしろ、売り上げがたたず、逆効果ですから、地域で寡占状態があるような場合でなければ、小さい不動産屋さんで、両手を常態としているところは、少ないでしょう。

そう考えると、公正な取引、流通量増加という観点からすると、あるいは、「大手は困るが、中小は、歓迎」の政策かもしれません。他方、日本では、まだまだ、専属媒介契約が一般的ではなく、物件を売りたい場合、何社でも、業者さんに、売却を依頼することができる一般媒介契約が可能ですから、「別に、関係ないよ」という人もいるかもしれません。

この状況が「不動産取引制度先進国」アメリカではどう処理されているかというと、実は、両手は、必ずしも、別に、禁止されているわけではありません(すべての州を見たわけではないので、一部の州で禁止しているところがあったりするかもしれません)。

ただし、両手の場合、多くの州で、利害対立が潜在することを、告知する義務が、レアルターさんの側で、課せられているのです。

不動産取引において、売主、買主双方のエージェントを勤めるこの状況を、英語では、dual agency(双方のエージェントを勤めること)といいます。

別の言い方では、dual agent, double agent。

センチュリー21など、大手のフランチャイズでは、自社倫理規定を作っていて、ダブルエージェントは、自粛しています。

日本と違い、物件の流通や露出が、ある程度スムーズなアメリカで、デュアル・エージェントが、依然、問題になるのは、「抱え込み」をするからではなく、物件瑕疵があったりする場合、開示不十分なまま、買主にババを引かせる問題行動の温床となりうるからだと思います。

売主に対しても、「成約させるため、強引な割安価格で売らせよう」とするプレッシャーは、実際、かけるでしょうし、それは、当然、売主の利益阻害となるでしょうが、他方では、売却価格が割安すぎて、逸失利益があったといった訴訟より、瑕疵訴訟のほうが、通りやすいでしょう。そういう意味では、デュアル・エージェントは、買主の利益を阻害する面のほうが一般的なのではないかとなんとなく思います。

アメリカでは、こういう問題があると、結構訴訟となりやすいですから、こういうことが、常態化したら、エージェントやブローカーの保険料等が直ちに跳ね上がる構造になっているはず。それが、大手の自粛の根拠なのだと思います。

アメリカのこうした状況を前提とすると、日本では、まだ、「両手取引」のこの部分は、分析が進んだ問題にはなっていないんじゃないかと邪推する余地もありそうです。指導課への駆け込みや保証協会だけで、すべて、円満に解決しているものなのでしょうか。

一般投資家は、つい、「おいしい話はないかな」といった目先、自分の利益だけを追求してしまいがちですが、マクロな市場の整備なくして、中古市場は、成長しないことを、そして、さらに言えば、市場体制が、ある程度、整備されてきても、問題が解決するばかりでもないことを、アメリカの先例は、教えてくれているのではないでしょうか。


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