トランプタワーに融資が付かないワケ コンドテル購入の罠
《2015年1月追記;融資基準は、変動がよくあり、この記事を書いた後、トランプタワーに対し、5割融資が再開したりといった波があります。必要がある方は、「必要がある時」に、ローンオフィサーに問いあわせをされることをお勧めします。》
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ドナルドトランプのフラッグシップコンドテル、トランプタワーは、日本人にとっては大変なブランドで、しばらく前にオープンしたワイキキ・トランプ・タワーでも、購入者の多くは、日本人だったようです。
さて、トランプタワーといっても、ロケーションはいろいろなところにあるので、案件ごとに、商品の内容は変わりますが、一般に、トランプタワーは、コンドテル(condotel)という種類の、特別な商品であることが多いです。
コンドテルとは何か?コンドミニアム(アメリカで言う区分所有、つまり、一般用語でいうマンション)とホテルの合体語で、ある意味、新しいハイブリッド商品なため、この二つを合成した造語を使っています。
バブルの申し子で、大手ホテルなどが、ネームバリューを使って、開発資金の早期回収とホテル経営のノウハウをマッチングさせた、「さすがアメリカ」とでもいうべき商品。
これらのコンドテルの特徴は、大体、バケーション型施設であること。
ごく一般的なイメージとしては、
□オーナーは、権利行使は、年6週間の滞在権
□それ以外の時期は、ホテルの一室として営業し、その収益は、オーナーへ
といった感じでしょうか。
ホテルとして稼動するため、ルームサービスフィーなど、定期的にかかる自己負担分が結構高くなったりして、稼働率にもよりますが、一般の区分所有と異なり、収入の半分といった額がホテル側に逆流するシステムになっていたりする、といった悩みもあるかと思いますが、それは別として、このプレスティージや便宜、ステータスシンボルとしてのメリットを享受することを希望される方は、後を絶ちません。
しかし、ここ3年ほどのアメリカ不動産の低迷期においては、このコンドテル(コンドホテルとも)は、実は、業界的には、やばい商品と評価されるに至っていました。
これは、どうしてかというと、まず、背景からご説明をする必要が出てきます。
一般に、アメリカの銀行は、住宅を抵当に、個人に融資を貸し付けた後には、その債券自体を、フレディーマックや、ファニーメイといった連邦住宅金融抵当金庫に、売却します。そのことにより、資金を回収して、その回収資金でさらに他の融資貸付をする、というシステムをとっているのですが、これらの政府機関が、こうした民間支援をする正当化根拠として、そうした融通が、持ち家政策を促進するものであることや、融資する抵当権がしっかりしていて、回収可能性が高いことなどを、要求しているわけです。
その帰結として、フレディーにもファニーにも、債券購入時の審査があり、コンドテルは、商品的に、この購入審査に引っかかるのです。
例えば、その例としては、以下のようなものがあるようです。
□一人のオーナーが、10%以上の所有をしていないこと
□50%以上の区画が賃貸用にまわされていること
具体的な理由は、私も出所を調べたわけではないのですが、例えば、上のような特徴があれば、公益に資する一般住居提供目的とは言いにくくなってくるからかもしれません。
単なる投資案件であっても、普通の区分所有や一戸建てなどなら、誰かがそこに、普通のファミリーとして居住することが目的なわけで、賃貸住宅供給という公益目的がありうるのに対し、単なる閉鎖的なプライベートクラブ運営なら、連邦資金を使ってやってもらっては困る、といったことでしょうか。
さて、以上の結果、コンドテルに融資をすると、連邦からの資金回収が困難になるわけです。こうなれば、金融恐慌以降は特に、資金繰りが苦しい銀行が、好んで手を出すエリアとはなりにくくなっていたことは、容易に想像が付くと思います。
ここまでが背景。
さて、しかし、それでも、競争が盛んなアメリカのこと、ここしばらく、融資NGになっていたコンドテルで、政府の再購入保証(ちょっとテクニカルになりますが、non-conformingといいます。物件に着目するときは、non-warrantableというようです)がないのに、融資を再開する銀行が出てきた、ということが、今回のニュース。
頭金は、25%からで、金利は、やはり、一般のローンより、0.5%ほど高いところからはじまってるようです。
但し、日本人にとっては、ひとつだけ、catch(問題点)があります。
米銀による国外の外国人向け(NRA, non-resident alien)融資の窓のほうは、現在、まだ、開かれていないのですね。
実際の日本人オーナー様におかれては、「私は、現金で買うから、まあ、関係ないよ」という方のほうが多いことが推察されますが、資産家層にとっても、こうしたニュースは、無関係ともいえません。というのも、融資の動向が、まさに、資産の流動性に大きなインパクトを与える(つまり、転売したいとき、キャッシュのある方が現れるのを待たないといけないので、流動性が落ちる/資産価値が下がる)ということがあるからです。
こういう商品は、やっぱり、「1億円あるから、夢を実現するため、有り金をはたいて、買う」ものではなく、「5億、10億ある人が、ちょっとした余裕資金で、ついでに買う」ものですね、、、(ため息)
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