バンカメ、滞納住宅ローン元本減額合意のカラクリ
バンクオブアメリカ、通称BoAが、このたび、一部滞納住宅ローンについて、連邦、各州政府から要求の強かった、住宅ローン融資額元本の減額に合意したということが、この前、報道されました。
こちらから。
オバマ政権は、これまでにも、銀行に、融資した住宅ローンの元本減額譲歩をするように、再三、要求してきました。
理由は、多くの滞納者やその予備軍の方々が、
1)住宅価格自体の暴落で苦しんでいる。
2)その場合、銀行との任意売却のほうが銀行にもメリットが高い
3)しかし、このネックになるのが、二番抵当が多いこと。
などで、抵当権の整理が進むためには、多分、何らかの方法で、誰かが、元本を泣かないと、合意まで進まないからです。
他方、銀行にとっては、これは、当然、譲れぬ原則論。本来は、こんな提案が、株主総会で、通るわけない、はずですね。
なぜ、住宅ローン融資銀行ナンバーワン(シェアは、25%だそうです)のバンクオブアメリカは、今回、最大4万5,000人に対し、ローン額の最大30%の”ディスカウント”をOKできたのか、、、
裏を明かせば、簡単で、実は、これらの融資のほとんどは、バンクオブアメリカが吸収したカントリーワイドという別の銀行が行った融資がらみラシイ。
この株式買収は、2008年に断行され、その結果、BoAは、現在の業界第一位の地位を確保できたのです。プレスリリースはこちらから。
このとき、Board of Governors of the Federal Reserve System 連邦準備制度理事会の許可が必要だったということなので、なんだかわかりませんが、結局、その買収からの業界優位が確保したのを待って、
PAYBACK TIME (支払いしなければいけない時)
ってことでしょうか?交渉は、この2年間、続いていたらしいです。
そう、上のリリースでは、カントリーワイドの株式取得に使ったのは、4 billion とアナウンスされていました。
私は株式はやりませんので、今回も、不精して、バンカメの財務諸表等、細かい内訳は見ておりませんが、個々の不良債権の取得単価からすると、アメリカ人がよく言う、pennies on the dollar (1ドルの額面価格を、それ以下でゲットしたという意味)だったんだろう、と思われます。
例えば、50 cents on the dollar は、50%引き。
一流銀行が、銀行業の根幹、体面や建前を放棄したから、”驚きニュース”なんですが、ただ、実は、カラクリ的には、特に、株主に大きな損害を与える行為ではないということについては、すでに、株式市場は、長らく、織り込み済み、了解されてきたのでしょうね。
だって、BoA(BAC)の株価、発表があった2010年3月24日からこっち、上がってますもん。
もし、BoAが元本減額を認めなければ、どうなるのか?
滞納ローンの処分に入らないといけない。
↓
二番抵当融資機関のせいで任意売却合意ができない/任売なら元本の6割回収
↓ ↓
抵当権行使し、フォークロージャー
↓ ↓
各コスト支払い後、元本の4割を回収
↓ ↓
未回収分は、抵当権がはずれ、面倒なので、結局、債権回収会社に、pennies で売却
↓↓
債権回収会社は、1ドル数セント?で買った債権回収に励む
といった感じで、実際には、「いつ見切るか」「いくら見切るか」だけの話。
カントリーワイドという、他社が過去に出していた、ハイリスクローンについては、元本減額に合意するほうが、会社の信用、顧客ベース維持など、総合的に、将来への展望が開ける可能性があるということなんでしょうね。ああ、金融の世界ってシビレますね(←?)。
他方、連邦は、この一歩に勢いづいており、こうした debt forgiveness(借金減額)を、どんどん推進していきたい意向。
連邦によるてこ入れ政策を報じた下のニュースでも、元本減額について、言及があるわけです。
ロイター通信、こちらから。
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