書評 井形慶子『老朽マンションの奇跡』
前に英語塾でも紹介したことがある本です。このブログを週1回以上見てくださっている方は、絶対、エンジョイされることと思います。
ずっと出版業界に身をおいている有名な作家先生なのですが、不動産関係、投資関係の方は、あまり知らないことが多いようなので、ちょっとご説明を。
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著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
井形 慶子
長崎県生まれ。日本外国特派員協会会員。ザ・ナショナルトラスト・ブランド顧問。大学在学中からインテリア雑誌の編集にたずさわる。その後、世界60カ国に流通する外国人向け情報誌を創刊。28歳で独立、出版社をおこし、情報誌「ミスター・パートナー」を発刊。出版社経営のかたわら、イギリスについての著作を執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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私もミスター・パートナー、BアンドB特集号を、購入したことがあります。イギリス好きにはたまらないだろうと思いました。
そんな著者が、去年2009年11月に出版したのが、不動産関係者必読?、『老朽マンションの奇跡』 。
吉祥寺を愛し、不動産があると、必ず内見に立ち止まる著者が、駅から近く、45平方もある、日当たりのよい1,500万の老朽メゾネットマンションを値切り倒し、500万でゲット。修理費200万で見事、自社スタジオにリメイクし、賃貸業者に、「13万で客付けするから任せて!」と言わせるまで。
最新不動産動向がさりげなく盛り込まれ、妙な投資セミナーに行くより、勉強になると思います。
「お金じゃないんだ」、「人間が住むところなんだ」。現実的な予算内で、若い人の住環境をよくする方法を示してあげたい、相場相当の給料を払っても、地方出身者は、住み心地のよい住環境を確保することも、出来ず、下手をすると、多重債務者に転落しかねない。そんなの、おかしいじゃないか。
このような骨太の哲学があってはじめて、多忙な経営者が、この計画に3ヶ月以上もかかわることになったという経緯があるのですが、実際には、この物件は、一階は、自社発行雑誌撮影スタジオに利用するということで、二階には、独身男性社員を住ませて、管理人に任命。社員に払ってもらう家賃も6万円で、結局、利回りは、10%プラス、今後の撮影スタジオ/倉庫利用代無料化、物件の資産価値は、確実に、1,000万台に跳ね上がったでしょうし、その上、これをネタに、本書ができて、この3月で、もう4版になっている、と専従投資家をもうならせるディールメイキングと相成りました。
中に織り込まれているエピソードも、自分が経営する会社の中堅の社員に、予算内で、夫婦の理想のマンションを買わせるために、飛び込み爆弾テクで、気に入った定価7,000万の物件を3,300万に値切らせた方法など、業界を震撼させるディスクロージャーが目白押し。
これまでの方法で生き残りたい関係者は、しがらみがない著者が、まったくの素人さん向けに出してしまったこの本を読んで、心臓発作を起こさないように!(著者暗殺もやめませう)
ほかの登場人物が、仮名なのに、200万で、(当然出てくるであろう?)不慮の水道管トラブルにも対応してくれた業者さんの名前だけは、実名表記。追加の手間賃は、宣伝で、カバーする戦略と見ました。あにはからんや、業者さんのHPには、この物件のことが、大きく取り上げられています。首都圏中古マンション投資家なら、必ずや、これに、食いつくことでしょう。
いや、抜け目ないぜ。
今のこの世の中で、家を作ったり、買ったりしたい人、小規模事業主にも、必読です。商売って、キット、こうやって、生き残るんだね。
ちなみに、著者は、「身の丈ライフ」推奨者で、『イギリス式年収200万で豊かに暮らす』という本も書かれている。
私も、著者の節約スピリットを大切にする愛読者たらんと、地元図書館に購入依頼をかけて、気長に連絡を待ち、1ヶ月以上待った後、見事、最初の借り出し人になり、貴重なこの本を、読むことができたのでしたm_m。
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