本当にオーナー実需案件のほうが、ローン返済率は高いか?
アメリカの不動産市場というのは、トランスペアレンシー(透明性)が高く、日本の不動産のプロが舌を巻くようなレベルのデータが、一般向けにアクセスしやすかったりします。
よく言いますが、アメリカの経済というのは、透明性が高いため、the good, the bad and the ugly (いいところも、悪いところも、最悪な部分も)どーっと世界ニュースになってしまうという特徴がありますが、他方、ヨーロッパや日本などは、そうした情報提供の仕方が確立されていないゆえに、「どうなっているかわからない」ことが、よいときも、悪いときも、最悪なときも、あるのではないかと思います。ましてや、中国のような国は、オフィシャルな統計も、どのレベルで取得されたのかと疑問に思う場合もあるかもしれませんし、、、
そういう意味では、どこが、どうなっているか、比べることは、難しいです。
というのは、枕詞で、今日のブログでは、「本当にオーナー案件(自分が住むため家を買う場合)は、投資家案件に比べ、滞納率が低いか」という問題について、アメリカの有力なクレジットレーティング会社、イクイファックスが、よい資料を出してきていたので、それを見てみたいと思います。
日本でもそうだと思いますが、一般論としては、アメリカでは、投資家案件(investment loan、投資用ローン)と自宅用ローン(owner-occupied loan、自宅用ローン)を比べると、後者のほうが、デフォルト率が低いとされており、その故に、
金利も、優遇されています。
銀行には、こうした資料がきちんと蓄積されているのかと思いますが、銀行さんは、こんな資料を公開したりはしないでしょう。
それに対し、Equifaxというアメリカの個人与信評価会社がありますが、この会社が、ついこの2010年3月10日に、「本当に、owner-occupied のほうが、investor より、返済率が高いか」という調査をしたということを、プレスリリースで発表しました。
その結果、驚くべき?結果がわかったのです。
まずは、これまでは、「自宅用と投資用」については、loan origination、つまり、ローンを発行した時点での一般資料しかなかったようで、それを見ると、下のような感じで、確かに、デフォルト率は、違いました。
ここでいう、
principal residence は、自宅用
second home は、別荘
investor property が、投資用。
いずれも、きれいに、デフォルト率が、上がっていきますね。
しかし、これは、一般知識の範囲で、ニュースというほどではありません。
イクイファックスのこのたびの資料は、「これは、origination のときの話」であるということで、より正確性を出すために、独自に、最新データを盛り込み、ローンが組まれたときには、自宅用だった物件について、追跡調査を行なったという報告。
実需案件が、1年もたてば、賃貸用になっているというのは、アメリカでは、珍しくはありません。
仕方がない例としては、転勤や失業などの就業状況の変化、結婚や離婚などによる家族状況変化。
本当は連邦犯罪に当たる例としては、融資書類に、最初からそうでないのに、自宅用と主張し、割安の金利をゲットしておいて、実は、賃貸など投資用にまわす方法。これも、思いっきり、盛んに行われ、「婚約したから大きい家がほしくなって」などという説明をしておけば、「後で破談になって」といったつじつまあわせで、逃げ切り可能です。
いずれにせよ、そうした状況をさらに盛り込んで、出たデータが、下だというのです。
これによると、2008年11月段階で、自宅用ローンだった案件の「最初の12ヶ月内にデフォルトする確率」を、案件が、本当に自宅であり続けたかどうかと連関させて調べると、、、
18%が、自宅でなくなっており、そのカテゴリーの12ヶ月内デフォルト率は、7%。
それに対し、66%が、自宅であることが確認できており、12ヶ月内に滞納が始まる率は、この半分、3.7%。
残りは、「調査したが、詳細がわからなかったカテゴリー」で、そのデフォルト率は、5.3%。
さらに、それを、プライムローン、オルトA、サブプライムローンカテゴリーに分けると、、、下のように。
プライムローンの実需案件の12ヶ月内デフォルト率は、2.2%。
それに対し、サブプライムローンであって、融資後、実際に、投資案件に鞍替えされたことがわかっている物件の場合、12ヶ月内滞納開始率は、7.3%。
オルトA案件で、やはり、結局、オーナー実需でなくなっている場合は、さらに、8.2%と「最初の12ヶ月内でデフォルトする率が一番高い」のはなんでなのでしょうか。
いや、丁寧な資料です。合計200万ドルの実際の融資案件を調査したそうです。ご苦労さん。
どうして、そんなことをするって?
「モーゲージ債を評価するバブル期までのシステムが、loan origination 時の数字を使い、その故に、正確性を欠いていたことにかんがみ、このたびの金融危機問題が浮上したという指摘がある元、こうした金融商品のリスクアセスメントがより正確に出来るよう、個人与信評価で、業界ナンバーワンの当社が、非機関投資家様諸兄のお手伝いをさせていただきます」だってさ。
イクイファックスは、いやらしく個人情報を収集するびっぐぶらざーの一人ですので、大体の人のbilling addressを掌握してます。そこから、融資を借り起こしている物件の住所とつき合わせたのでしょう。それでも、わからない場合があるのは、私もそうですが、billing address を自宅にしないで、わざわざ私書箱を借りたり、また、融資を受けている自宅物件の名義を、信託等にしてしまい、照合を難しくする人がいるから。
実際のレポートをご覧になりたい方は、下から。
これがすらすら読める方は、ずばり、ギョーカイの方ですね。私のかわりに、隔週土曜日午前の投資英語塾のレクを代行していただけるか、ご相談させてください(笑)m_m。
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