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ご相談をお断りしなければいけないとき

遠隔対米不動産投資家の中山道子です。視察旅行の後は、夏の間は、デトロイトに滞在しています。来週、1週間、シカゴに行く予定です。

さて、私は、このブログを開始したときから、「思ったことを言う」(「うそをつかない」)をモットーにしてきました。

いい年をした社会人が、素で本当に思ったことを言うというのは、どうかなと思われる方のほうが多いかなと思いますが、物にはいいようがありますし、相手のことを思って言うのであれば、大体理解してもらえると思っています。

一応、自分の専門外のことではなく、自分が専門家として相談をされている場合ですね、、、汗 

つい先だって、ある方のご相談のメールがあって、今週、電話会議と相成りました。

大体、どういうことを伺うかというと、失礼ですが、予備的なお話は、ずばり、資産状態等細かい個人プロフィールです。普通にご挨拶する方には、そんな失礼なことはしませんが、、、笑


■日本や他で不動産投資をされているか。
■直近の資金がいくらか。
■家族構成や職業概要。
■海外経験や英語力。
■所得状況や貯蓄状況。
などなど、、、


初めて電話でお話をする方に、イキナリこういった全部聞きます。別に、刑事とかじゃないですので、あくまで、軽くですが、興味本位ではなく、いろいろな理由があります。

例えば、(不動産)投資歴で、投資家としてのバックグラウンドを伺います。日本で青色申告大家さんであれば、私より、不動産の知識や経験は豊富であると想定してかまいません。日本での税理士さんとのお付き合いや、税金関係の知識も、おありですね。それに対して、不動産も投資も初めてであれば、私のほうで、いろいろご案内することや、その方にふさわしい状況を作り出すにあたり、別の配慮をすることに意味がある場合があります。

あまり細かく説明するのもはばかられますが、自分をつくろっている方でなければ、大体、10分くらいで、その方の状況をうかがうことはできます。長くやっているので、それで、いろいろ勘が働きます。

今週お話をさせていただいた方は、8月までにぜひ、一軒取得したいということでしたが、実際にお話を伺った後に、お断りしました。

失礼なつもりではなく、おせっかいな面もありますが、新規投資着手するべき方でないと、私が勝手に判断したからです。

どうしてかというと、、、


***

その方は、不動産投資は、あまり経験がなく、約10万ドルの予備資金を持っているところ、現在、経済状況が上向いたので、その資金を、老後のための投資に振り向けてみたいと判断され、私のところにご相談に。おいでになった段階では、直近、他に2件、投資に着手されたばかりで、今の残預金は、4万ドル程度という状況ででした。

******


皆さんなら、どう判断されますか?私は、正直に、感じたとおりのことを申し上げました。


 素人が、短期間に各方面に分散投資をするのは、一番やばいパターンです。他の二つの動向が、確定し始めるまで、私は、更なる投資をお勧めしません。1年たって、他が落ち着いてきていれば、また、私でよければ、ご相談ください。
 他の人にも、残りのお金は、上げないでください。お金を寝かせることを心配されているようですが、Xさん(とします)の状況をうかがうと、20万ドルくらいまで、現金でためなおしてもおかしいとは思いません。


投資家の気質のひとつに、忍耐というものがあります。

私自身、若いときはそれが利かず、この方同様に、短期間に、いくつも、乱暴な投資をいくつもしました。幸い、たいした度胸はなかったので、路頭に迷うほどは深刻にはならず、それを、ブログのネタにするレベルですんでいますが、時間の経過を味方につける訓練というのは、実は、投資家にとって、一番大切な素養のひとつといって間違いないと思います。

今、何か欲しい。お金があるから、すぐ、動ける。英語で、instant gratification (瞬時に欲望を満たそうとすること)といい、米国なんかでは、米国人の消費癖、浪費癖の問題として、ようやく、反省も起こっています。まあ、早い話が、衝動買いに近い感じです。

投資でこれをやると、何が問題かというと、自分のリテラシーが、それに追いつかないのです。

この方の場合、虎の子を、3分割し、それにより、ポートフォリオを作ろうという発想で、投資分散自体については、いけないということはないのですが、イキナリ、素人が、これをやるときは、それぞれのエリアでの知識が、浅い状況、それぞれの投資状況が見えてくる段階まで待てないで、次々と、行動をされるわけですね。

株式の場合は、元本をなくすだけで、更なる垂れ流しはありえませんが、不動産の場合は、ローンを組んでいる場合は特に、更なる赤字流出といった事態が生じえます。

こういう方に比べ、日本国内ですでに投資をされている投資家の方とのお話というのは、例えば、以下のように進みます。

「サラリーマン兼業大家です。日本では、不動産は、10年選手です。これまではうまくいってきましたが、将来のことを考え、今後の多角化も想定して、アメリカの勉強をしてみたいです。まずは、1,000万、とりおいてみましたので、相談に乗ってください。」

これが、本当の投資の資産分散の王道だと思います。

簡単な会話ですが、言葉遣いで、すぐわかります。後者のベテラン投資家の場合は、


■こういう方は、生活は、大体、お給料の範囲でおできになっています。投資資金計画は別にあるのです。所得がすでに、二種類、確立しているので、立場的にも、経済的にも、安定されています。
■「とりおいて」という言葉遣いから、その1,000万は、その方の金融資金の全額ではなく、私に相談する前に、対米投資のために予算を組んでおいでなことがわかります。そこから、その方から、それ以上引き出そうとする「敏腕」営業マンもいるかもしれませんが、私は、余剰資金をお勧めしているので、こういう考え方の方にご挨拶できるときは、大変安心します。私自身、その枠内で、準備金も組み入れて、内輪目に予算を考えます。
■日本で10年の経験がおありで、それまでに、よそみは、あまりしていないのです。これで、やはり、相当、熟慮型の方だということが、わかります。ひとつのことをある程度見極めてから、次のことに進まれるのでしょう。


総合的にいって、こういう方は、10年単位で、過去、そして将来を見据える能力が備わっておいで。お手伝いをするときは、いい物件を取得し、そのご説明を丁寧にすることに、意識を集中すれば、後のことは、投資家様のほうで、必要に応じて、いいように、リードしてくださいます。

それに対し、上の相談者様は、失礼ながら、過去の投資歴がなく、実は、お金の使い方の時間の機軸が、「この1年間」でしかありません。将来については、「老後」という視点はありますが、点と点が結びついていない感じなのです。

このご相談者様は、素晴らしいことに、お金を稼ぐ能力は、大変、高いのですが、雑談の中で、伺った範囲では、投資については、ご自身がおっしゃるように、初級者でおいででした。また、これまでに、苦労もされているので、貯蓄も、現在、これ以外には、あまりない様子。

ビジネスオーナーが、本業の才能が高いのに、経営のほうを安定させられてこなかった歴史が続いたというのは、やはり、別の種類の事業経営である不動産、または、投資一般に乗り出すときは、黄色信号のひとつだと、思わないといけません。

居住地についても、今、仮の状態と、不安定要因が大きく、それこそ、不吉ではありますが、今、家族が病気をしたら、いや、そこまでも行かなくても、着手したばかりのよその不動産投資の目論見が多少でも狂えば、今感じておいでの気持ちの余裕は、すぐになくなる可能性があるのではないかとも、思いました。

なので、こういった方の場合は、私は、その方の立場に立って、投資計画を立て直すところからはじめることが、必要だと、勝手ながら、思っているわけです。

この方には、


■素人が分散投資を短期間にすると、どの投資にも習熟する時間的余裕がないため、すべての投資において、危険をはらむこと。
■残りのお金は、他の投資案件の状況がはっきりしてくるまで、予備金にされたほうがいいこと。
■ビジネスでお金を稼ぐ能力がある方は、短期的には、そちらのほうが、リターンは高いから、まずは、そちらで、もっと貯金をつくる中で、投資計画は、もっと長期的に考えること。
■その間、セミナー等の勉強は勧めること。私のブログなども無料なので、そうしたものを、ある程度の期間にわたって、読んでいただきたいということ。
■気安く営業マンに声を掛けると、相手のことを考えないで成談させようとする人のほうが多いから気をつけること。
■1年たって、他の二つがよい状況で展開していて、予備金も必要ないようであれば、私でよければ、また、ご連絡いただければお手伝いできるということ。


など、思ったことを、そのまま、お伝えしました。

初心者様のご相談を受け付けないということではなく、おなじその方が、半年前に、最初に、10万ドルを持ってきてくだされば、いろいろブリーフィングしながら、そのうちの、3万ドルくらいの投資を、お勧めしたかもと思います。同時に、残りはしばらく置かれ、二軒目は、まずは見合わせるように、お願いしたはずです。

幸い、私の趣旨をよく理解してくださり、「そんなことを言ってくれた人はこれまでいませんでした。楽観的に考えていたかもしれません。ありがとうございました。」と、大変感謝してくださいました。投資家の二番目の素質は、素直さや、実直さというか、正直さだと思います。この方は、私のアドバイスを素直にお聞き届けになってくださり、よかったです。

今後も、これをご縁に、何かあれば、投資のことでなくても、せっかくお友達になれたのですから、気軽にメールをしてくださいと申し上げ、失礼をしました。

ここまで、コンサルをするには、やはり、立ち入る点もありながら、総合的に、ご事情を伺っておけるほうが、いいと、私は思っているわけです。時間は、雑談も含めて、30分もかかりませんでした。

このX様と、ベテラン投資家Y様(としましょうか)のような方を比べても、教育レベルや、本業の収入レベル、ましてや人間としての総合的な資質などにおいて、別段、Y様が上といったことは、ありません。どちらも、それぞれに、素敵な方々なわけです。

ただ、唯一の違いは、私に言わせれば、Y様は、10年以上前から、投資(やたぶん人生全般)において、順序だてて、行動されてきた、忍耐や行動力の使い分けどころを意識しながら、行動されてきたというその点のみなのです。

X様は、現在の収入も高いですし、今後の1年を、凝縮してキャッチアップに使うことは可能です。また、今、三方向にお金を使ってしまっても、”結果オーライ”の可能性もありますが、しかし、やはり、人生にかかわることなので、「転ばぬ先の杖」でいいのではないでしょうか。

ですから、やはり、お金のマネージメントというのは、「今この瞬間」、したいことをしては、ダメなのですね。そろそろ、老後のことを検討する年齢におなりなので、あせる気持ちがあるのは当然でもあるのですが、それでも、やはり、自らの現状をありのままに認識することが、出発点となるべき。

言い過ぎになることはわかっていますが、過去に、ご自分が、信頼していた人につけ込まれ、事業経営破たんに追い込まれたといった事実を、冷静に見つめなおし、将来、おなじ間違いを起こさないためには、どうしなければならないかまでをも、自分自身で、問い直さなければいけません。

これは、上から目線で言えるようなレベルのことではなく、私自身が、自分の生い立ちにおいて、お金の問題を理解することなく、いい年齢の大人になり、その後、自らを冷静に見つめることなく、失敗を重ねてきた中で、自分自身の対話との中で、感じてきたことです。私は、この4、5年間は、ファイナンシャルリテラシーの勉強のみならず、持ち前の短気や、自己中心的な考え方など、自分の人生に問題をもたらしてきた根本理由である、そういう自分のメンタルのあり方の問題点と向き合うために、カウンセリングなどをずいぶん積極的に受けてきました。

それで、ようやく、今の程度ですから、別段、本当に、X様に、物言う立場にはないのです。しかし、やはり、「その人なり」に、やらないよりは、先に進めるということを感じていて、そのことで、10年前とは劇的に違う人間になれたと、思っています。また、その結果、実際に、ストレスフリー、問題を抱え込まない、自由なライフスタイルを送ることもできるようになりました。

ご相談があった方に、思ったことを、きちんと指摘するというのも、その一環。そのことで、コミュニケーションの質が劇的に高まり、お互いの時間を無駄にすることもなく、その方のために、最善と思える行動をとることができます。

刺激的なタイトルをつけてしまい、また、内容的にも、各方面にご宥恕いただかなければならない物言いがありましたが、ブログを読んでくださっている方にも、ご参考になるといいと思い、あえて、実例を、取り上げさせていただきました。X様には、匿名に免じて、特にお許しいただければと思います。

全員がそうだということではないのですが、私にご相談に来てくださる投資家様の中には、数年間、こうした計画を温めているような方も、おいでになります。昔の私同様の、「今したい」症候群の方は、そうした例も知って、”軽はずみな行動”と”行動力”の区別を、体感できるようになられるよう、お祈りしております。


中山からのお願いです。
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