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海外投資のハードルは、高くなるばかり?日本社会のガラパゴス化は、私たち一人ひとりの責任でもあります

2003年から対米不動産投資をやっている遠隔投資家の中山道子です。円高海外投資熱は、ここ数年、高まるばかりですが、他方では、ハードルも、高くなっていくような気がしますね。

この前、ちょっとしたことがあって、確認する機会があったところ、オフショア生命保険型貯蓄商品販売大手であるフレンズ・プロビデント・インターナショナル(Friends Provident International)社は、2012年7月、「日本居住者への新規販売停止」を決めたということを知りました。

実は、私は、自分自身が、一不動産投資家なわけですが、2008年に、ちょっと修行のような気持ちで、東京にある《在日外国人向けのWealth Management Advisory Firm(ファイナンシャルプランナー兼各種国際投資商品紹介のようなサービス)》で、アルバイトをしていたことがあります。

理由は、香港人の友達が、そこでファイナンシャルプランナーというか、そういう投資アドバイザーをやっていて、「アシスタントがすぐやめてしまう!ちょっとでもいいから、道子、私のアシスタント業務を、手伝ってくれない?」と言ってきたから。もともとは、私は、彼女の、お客さんだったのです。

彼女は、とても頭がよくて、すごく稼いでいたので、自営業で、投資家修行中(今もですが)の私は、勉強のよい機会と思い、「少しなら、いいわよ」ということで、ここで、結局、当時、自分自身のビジネスに加え、合計、1年近く、毎日6時間くらい、友人のチームで、働いていました。ここは、在日外国人が、在日外国人相手に、英語で営業をしていた事務所で、日本人がいてはいけないという決まりは別になかったのですが、実際問題として、普通の日本人はおろか、日本語ができる人すら、ほとんど、いませんでした。

リーマンショックまでの東京というのは、アジアの国際金融の主要都市、ゲイトウエイ、ハブという位置づけがあったのだと思います。こういう事務所が、結構あって、当時の主力商品が、このフレンズプロビデントインターナショナルのプレミア(Premier)といった商品だったりしたのですね。

国際企業に勤務し、常に転勤を余儀なくされて生きる expatriate 族(国際転勤族、略称で、expat、エクスパットと呼ばれます)というのは、どの国出身であろうと、つまるところ、

■「子供は地元の英語系インターナショナルスクール」(子供を英国の大学にいかせたいか、アメリカの大学にいかせたいかで、アメリカ系かイギリス系を選ぶ)
■投資や年金後の資金繰りは国際ファイナンシャルサービス(米国人は国の規制の関係で、オフショアNGなのですが、それ以外の国の出身者なら、フレンズプロビデントのようなグローバルな投資商品を居住地にかかわらず、資産形成に使うのが理にかなっている)

といった”継続性”を、自らの生活において、必要としているわけです。そのため、主要国際都市では、エクスパット御用達の投資助言業を営むという事業に対し、まっとうなニーズがあるわけですね。

やり手の友人の手腕は見事なもので、彼女の扱う国際ファンド・生命保険や国際不動産の紹介サポートやフォローなどを通して、私は、ずいぶん、実践的な勉強をすることができました。

時給は、確か、1時間、1,100円で、交通費が出るだけの本当のアルバイト待遇でしたが、私的には、「学校に行ったり、セミナーに行くより、今の自分にとっては、役に立つ」という判断だったわけです。

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ちなみに、脱線すると、私は、時々、「出身大学は、東大、大学院はハーバードで、エリートですね」といわれますが、時給1,100円のアルバイトでも、自分に役に立つ、あるいは、サバイバルに必要だとなれば、このとき同様、今後もできると思います。(生意気なので、使ってくれる人は限られるかもしれませんが)。

「自分はこういうことしかできない」とか、「あれは自分にふさわしくない」といったような考え方に縛られていては、激動の時代、前向きにすごせるとは思えません。「いい年をして、大学院卒の人間が、アルバイトなんて、時間の無駄じゃ」と思われる方もいるのかもしれませんが、私は、このマインドセットが、学歴より、むしろ、自分という人間の本当の強みだと思っているのです。

例えば、このときのアルバイト経験で、この業界のことがわかりましたので、国際ファイナンシャルアドバイザーになろうと思えば、自分でも、トレーニングを受ければ、そっちの道に進めるということもわかりました。私は、アメリカ不動産投資が好きですが、対米投資がだめになったら、そっちに行くことも考えようと思います(笑)。

中年を過ぎた人間が、特に女性の場合はなおさら、新しく勤務先や転職先を探すというのは、ほぼ不可能だと思っている方もいるかもしれませんが、実際には、そうとばかりは、限りません。参入障壁の低いアルバイトから、本格エントリーできる業種、職種というのは、探せば、案外、あるものです。


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いずれにせよ、当時の話に戻ると、私の友人のお客さんの中には、証券会社勤務で、まだ40になるかならないかの年なのに、こっそり、何億ものオフショア投資をやっているような別格の人もいたりして、接客サポートだけでも、それは刺激になったものです。

そういったバブリーな状況において、ちょうど、この時期、リーマンショックが、世界を、そしてまた、東京を、ヒットしたわけですね。


それから4、5年のうちに、こうした景気のよい環境は、当然、ガラッと変わってしまいました。

その事務所で稼ぎ頭だった私の友人は、エクスパット富裕層が撤退していくのを、一番に肌で感じたのでしょう、結局、2009年に、いち早く、東京を見限って、香港に戻り、今、当時より、さらに稼いでいる雰囲気。世の中にはすごい人がいるものです。

そして、当該事務所は、金融庁の監督強化と、顧客喪失のダブルパンチに耐え切れず、その後、東京オフィスを閉鎖しました。この会社は、ドバイや香港などでは、依然、営業を続けていますが、当時東京で、この事務所に籍を置いて、ファイナンシャル・アドバイザーをやっていた他の人たちは、どうなったことやら。

欧米系の人は、最後は、「英語を教える」という方法で、必ず食っていけますから、ひょっとすると、今頃、中国で、英語を教えている人もいるかも。


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というわけで、それまで、こうしたオフショア投資商品紹介というのは、日本では、この事務所の例のように、主として、エクスパット向けに、英語で、内々に、行われていました。

そのためといってしまっていいのか、一応、もちろん、管轄は、日本政府だったわけですので、規制は、当時からありましたが、実際には、金融庁は、在日外国人相手のニッチな商売相手に、それを実際に遵法させるために、そこまで、具体的に動いていなかった感があるのです。

そして、それまでの業界の実態としては、「細かいことを言えば、日本政府の国内規制に厳密に、適合するかといわれれば、確かに、解釈によっては、微妙なところがあるのかもは知れないが、しかし、実際には、国際的なエクスパット・コミュニティにおいては、ごくごく一般的といえる商業慣行の積み重ねの一環として、業務が遂行されているのである」という認識が、コミュニティ内にはあったと思うのです。

私たちの事務所のオフィスマネージャーも、例えば、当時、ドバイ本部からの決定で、スコットランド人が、派遣されてきましたが、その人の前のポストは、バンコク事務所勤務。社内コンプライアンス同様、人材育成についても、自社トレーニングが、国際レベルで、きちんとあったわけです。業務は、基本、対面、エクスパットコミュニティというのは、人間関係が、緊密で、口コミも盛んでしたし、お客さんも、大体、国際的に名の通った会社に勤務していて、ファイナンシャル・インテリジェンスが高い層の方々ばかりでした。

バブル期にふさわしいドタバタは、確かにありましたが、他方では、決して、無法地帯とか、無免許放漫営業とか、そういう性質のものでは、ありませんでした。

それに対して、ちょうど、外国人富裕層流出に伴い、日本人に対し、こうした商品を積極的に勧誘するという動向が、台頭しました。その際に、実は、中心となったのは、英語ができる、業界新参の日本人であって、こうした商品を長らく扱ってきた実績があるにもかかわらず、日本語はまったくできないようなベテランのファイナンシャルプランニングの事務所ではなかったわけです。

これは、たぶん、この業界にとっては、不幸なめぐり合わせで、オフショア金融投資商品というのは、大変複雑で、販売側には、表面的な英語力のみならず、結構な量の商品知識が必要です。

例えば、私の香港人の友人は、上に述べたように、すごいやり手。商品知識やノウハウが本当に豊富で、他のFPの人たちと比べても、別格の実力があり、事務所内では、常に嫉妬や小競り合いの対象になっていましたが、とにかく、どんな人をも黙らせる実績の持ち主で、感心させられることしきりでした。しかし、こういったランクの人たちは、彼女のように、日本から、いち早く出て行ってしまったりして、日本人相手のビジネスへと転換したりはしなかったわけです。

しかし、こうした商品と言うのは、購入後のサポートも大変で、担当者というのは、毎年のポートフォリオ再評価や、ファンド構成見直しといった定期フォローアドバイザリー業務の他、株式取引等の随時受け付け(スイッチ)、さらには、クレジットカード再登録・住所変更や解約手配など、手間ばかりかかる事務手配に、四六時中、追われています。

私自身、このアルバイト歴は、「大変勉強にはなった」とは、上で言いましたが、それは、業務全体の流れや配分とか、段取りとか、接客とか、コンプライアンスとかの一般的なレベルで、自分の仕事の参考になったというだけで、実際に、「オフショア保険商品が細かくわかるようになった」というレベルではなく、「これは、もし研究したければ、本業の米国不動産以上に本腰を入れないと、だめだなあ。うかつに手を出すことはできないなあ」と感じたというのが実際のところです。その後も機会はありましたが、現在にいたるまで、これらの商品は、自分自身、買っていませんし、その後、ずっと、紹介マージンはもらえる立場にありましたが、実際に、どなたかに、プレミアなどの商品をお勧めしたことも、まったくありません。


時は流れて、この2012年7月に、FPI社が、「日本居住者NG」を出すにいたるまでには、この”顧客層の転換”と、”それに伴うトラブル多発化”=>”金融庁の監督強化”といった環境変化が、あったということなのだと思います。


そうなってみると、オフショア商品販売側としては、

■エクスパット層から非エクスパット層へという日本市場の顧客層の質的変化や、
■日本人保護の観点からの金融庁による遵法強化の諸方策を受け、
■市場自体の規模や将来性を前提に、当該市場をターゲットにすることのキャリーコストを計算

した結果、「日本市場は相手にするに足らず」というドライな経営判断をすることになったといった感じでしょう。

それまで長い付き合いがあった欧米系のブローカーは、バブル期までの顧客層を失って、ばたばた潰れ、それに対し、新しい顧客を連れてくることになった新参系は、同時に、それまでなかったようなトラブルをも持ち込むようになった、、、

そもそもがところ、こうしたオフショア投資商品販売会社というのは、世界中を移動しまわる人たちをターゲットにする商売なわけですから、日本人顧客を確保するとしたら、当該顧客が、例えば「ドバイ駐在中」に、キャプチャーする、というのが、本来のビジネスモデル。これは、日本在住者NGになった現在も、可能です。

もともとは、FPI社とて、観光以外で、日本から一歩も出たことがないようなタイプのいわば、”まったく免疫がない層”を、取り込むことが主眼であったわけではないのです。

それなのに、販売元の意図を離れて、日本市場では、欧米人の期待するような意味でのファイナンシャルリテラシーが高いエクスパット《=英語で業務についているようなホワイトカラー/国際企業勤務中堅層》でないような層が、商品説明もろくろく受けずに、大量契約をしていることがトラブルの種になった(らしい)わけですから、これは、商品提供側としては、まあ、最終的には、当然の決断をし、本来の顧客層追求という原点に立ち戻っただけなのであるといっていいのではないかという気がします。


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以上の流れの中で、とばっちりを受けるだろうと思われるのが、「フレンズ・プロビデント社の商品を買ってしまい、しかし、使いこなすことができず、また、紹介者が頼りない」といった購入者層でしょう。


上に述べたように、解約するだけでも、用紙を取り寄せ、間違いなく記入をし、しかも、解約前に、各種ファンドを現金化する等、段取りが、結構大変。

2008年当時、お客さんが、電話口で、「今金が要るんだ!不動産を買うんだから、すぐ解約しないと!」と私に何度も怒鳴り込んできたことなど、いまだ、覚えています。私なんかに怒鳴っても、2ヶ月といった期間(具体的には忘れましたが)、解約にかかるという事実は、変わらないわけで、、、あのお客さんが、結局、不動産の購入契約を全うできたのか、当時、”腰かけアルバイト”に過ぎなかった私は、わからないまま終わってしまいましたが、、、

しかも、解約届けを含め、申請書類の記載が間違ってでもいようものなら、その間、こちらが言い出すまで、当然、そのままたなざらしにされます。

日本の会社なら、記載が間違いがあれば、「ここを訂正してください」と、間髪をいれず、丁寧なお便りや、返信用の切手がついた封筒が来ますが、いくら大手でも、海外の波は、そんなに、生易しいものではありません。国際ビジネスでは、書類を出したら、それが、受け付けられたかを確認するのは、常に、自分の責任、、、

こういう風に考えると、金融庁も、わが国民が被害を受けているという状況を受ければ、課税所得捕捉と言う課題もあるしで、”外来種狩り”に乗り出さざるを得ないというのも、必然的な流れになります。

ここで、やはり、私たち一人一人が考えなければいけないのが、「自分自身が、商品を理解する」、「自分のわからないことはやらない」「トラブルはオウンリスクで」という投資の基本原則ではないでしょうか。

海外投資商品は(海外だけに限りませんが)、紹介してくれる人がいても、最終的には、自分自身が、可能な限りのデューディリジェンスを行い、また、それでも生じてくるであろう将来の問題を、何らかの形で解決する方策を考えるというメンタルなしでは、いかに、相手が業界大手、有名企業であっても、トラブル解決は、かないません。

自分自身が、簡単な英語の勉強を始めるのも大切ですし、それと平行して、オンラインの翻訳サービスや電話通訳サービスを使って、現地に直接連絡をするとか、「なんとしてでも解決しなければ」と自分が覚悟すれば、必ずや、何らかの方法があるのです。

政府が規制強化に乗り出す理由には、上に述べたように、二つあります。


■課税所得の捕捉
■国民・消費者保護


どちらも、正直、まっとうな介入根拠です。

いや増す海外投資熱に正比例しているかのようにも見える日本市場の「ガラパゴス化」の進行、グローバルスタンダードであるはずの海外投資商品販売停止やサービス停止といったアゲインストの状況が、国際化がますます叫ばれるこのご時勢になっても、また、新たに出てきているというのは、つまり、このケースで見たように、実は、日本人投資家のあり方自身の問題でもあるといっては、言いすぎでしょうか。

もちろん、詐欺まがいの確信犯的な会社はもとより、”ネット・アフィリ感覚”で、自分自身が理解できていないような投資商品を、これといった覚悟もなく、紹介するような人も、悪いのですが、そういう人は、別段、私のブログを読んでいないと思いますし、こうした方々については、別段、ここで、何を言っても仕方がありません。

他方では、遅ればせながら、このニュースに触れる機会が、この度、たまたまあったところ、自らの限られた経験を振り返ってみるにつけ、一般の海外投資希望者に対しては、「海外投資というのは、不動産取得どころか、国際大手相手の金融投資商品であってすら、経験のない日本人にとっては、手間もかかり、気を抜くことはできない」ものなのだということを強調することの重要性を、いまさらながらに感じたため、それに関連して思ったことを、記事にしてみる気になりました。

《あくまで個人の雑感です。このブログは、米国不動産投資についてのブログで、私自身、記事内でお断りしたように、オフショア金融投資商品の領域には、詳しくありません。(他の記事についてもそうですが)間違いや誤解がありましたら、訂正しますので、ご指摘ください。》

この記事は、2012年9月5日発行のメルマガに加筆訂正を加え、発表しています。メルマガでは、いつものように、もう少し突っ込んで、お話をしています。海外投資にご関心がある方は、下のメルマガに無料でご登録できます(名簿は販売しておらず、随時解約が可能です)。

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