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国際的なビジネスマインドと対米不動産遠隔管理

対米不動産投資家の中山道子です。2013年始めての投稿なんですが、今年の展望や抱負などの立派なものではなく、right down to business (イキナリ日々の実務レベル)の話になってしまいまいそうです。

年末年始と、正直休む間もあまりなく、動き続けているので、あまり、更新もままならなかったのですが、最近の国際化の動向に関連して、今日、少し、考えるところがありました。

私自身、いわゆる「帰国子女」。子供のとき、両親は、2年毎に違う国で勤務を繰り返すスタイルで、ずいぶんと多くの生活を経験させてもらいました。こうした国際的な経験をする子供たちのことを、欧米では、Third Culture Kidsというようになっています。

そのようなネーミングをする本が出たために、「パスポートを所有している国以外で、成長する」子供たちのことを中心に、それらの人々の育ち方や、あり方が、取り上げられるようになっているのです。

日本語訳は下から。


英語圏では、この本が起爆剤となって、サードカルチャーキッズのコミュニティができたり、いろいろしているようです。日本では、昔から、”KIKOKUSHIJYO”という言葉がある、ということも、この本に、取り上げられています。

よく、聞くのは、例えば、「オバマ大統領も、サードカルチャーキッズ」であるということ。

彼の父親は、ケニア人。母親の再婚で、インドネシアに居住したり、人種のメルティングポットであるハワイで育ったりと、まさに、普通の人がついていけないくらいグローバルな方ですね。

彼が、日本に来て天皇陛下に深々とお辞儀した写真が世界中に配信されたときには、多くのアメリカ人は、「米国の国の代表が、他国の国の代表に対して、屈したのか」と、ショックを受けたのですが、こういう行動、つまり、TPOを踏まえて、「その場にふさわしい振舞い」を、否が応でもしてしまうのが、サードカルチャーキッズの一番大きな特徴だと私は思います。

このときのLA TIMES の報道は、

「どこまで頭を下げれば気が済むんだい?(How low will he go?)」

でした。まともなアメリカ人なら、アメリカ的な価値観(=人間に上下はない。王制反対)を、体現し、チーニー氏が陛下に面会したときのように、互角に握手をするはずなのに、というわけです。

それに対し、日本での天皇陛下の地位を理解できてしまう国際知性派のオバマ大統領は、「日本流の陛下への敬意の払い方」をしてしまった。過去には、クリントン大統領も、うっかりお辞儀しそうになってそれを揶揄されています。オバマ大統領が、このような過去の歴史を知らなかったとは思えないので、その意味では、無意識にではなく、確信犯的に、お辞儀をしたのでしょう。

いずれにせよ、そのような行動が出てくる背景には、文化多元主義的な世界観があるわけで、「万人は平等」と、深く信じているであろうオバマ大統領も、「他国では、マナーは違う」ことを、どうやら、米国人にアピールしても、いい頃だろうと思ったのでしょう。

案の定、その行動は、一部には不評だったわけですが、そんな彼も、無事に再選されたわけですから、やはり、アメリカ自身が、こういうリーダーをリベラル過ぎるとまで思わない、そういう時代に突入しているんだというオバマ大統領の”時代読み”は、正しかったのでしょう。

不動産から大幅に脱線しているように思われるかもしれませんが、こうした人々の特徴というのは、国際化の洗礼を受けていないタイプの人と、ドラスチックに違うことのひとつの例として、この例が、私にとっては、とても印象的なのです。

こういうとき、アメリカ人であって、あまり国際的な考え方を知らずに育ったような人というのは、

 「なんだあの大統領は!アメリカ人としての矜持はどうした?」

と思い、また、

日本人であって、外国のことがあまりわからない方は、

 「どうして日本にきて、陛下にご挨拶することがそんなにいやなんだ!」

と思うわけです。

ちなみに、マッカーサー総督と、裕仁天皇の写真を覚えている方々にとっては、オバマ大統領の面会ぶりは、米国リーダーが、日本の天皇にお辞儀をしても問題ないと判断するところまで、日本が民主化・盟友化したのだという、そういう感慨をも思い起こさせそうです。

前置きが長くなりましたが、このたび、「国際的な不動産経営」について、悩ましい?やり取りがあったので、こんな話になりました。

私自身、自分が手がけた案件については、管理サポートをずっと続けています。(自分が関知していない物件についてはご相談に乗れません)多くのオーナー様が、それがないと、ご不安だろうと、正直思います。日々の仕事は、実際、過去の決済案件の管理フォローに、一番多く時間をとっています。

この前も、数年前からお付き合いしているオーナー様から、SOSが。

この方は、英語もお上手なのですが、何回、やり取りしても、管理担当者と意思が疎通できない。電話をしてもつかまらない、というお話で、私のほうで、担当者のみならず、経営者とも、この件について話しをすることに。

そのケースは、本当に小さいことで、問題になっているのは、360ドルのお金の行方。

このオーナー様は、修理に当たって、

1)最初、クレジットカードでの決済了承書をファックス
2)前後して、小切手を送り、

そのときに、「気を変えたので、CCには計上しないで、小切手のほうを使ってください」」と連絡をされたのですが、あいにく、会計の担当者への申し送りが、されず、結局、両方がチャージされることになりました。

それならそれで仕方ない、とその方は、頭を切り替えられ、その後の明細を確認したところ、計上されている入金は、一件だけ。

それはさすがに困るということで、この方は、担当者に、何度も連絡をしたのですが、担当者からは、「そんなはずはない」的な返事しか来ず、オーナー様も、また、担当者も、最終的に、私にSOSを送ってきたのです。

状況を聞いてみると、本当に簡単なことで、このオーナー様は、上手な英文で、状況を説明し、添付ファイルとして、

1)管理会社が360ドルを計上したクレジットカードの明細書の該当ページ
  "PDF copy of the credit card statement"
2)引き落としされた360ドルの小切手の画像
 "JPEG file of the canceled check"

をきちんと添付されています。(引き落としされた小切手のことは、なぜか、CANCELEDチェックと呼びます。支払い停止を手配した小切手のことはstopped checkというのです。)おなじメールを何度送っても、あちらが理解しない、とフラストレーションがたまっているのです。

それに対し、管理担当者(PM)は、同様に何度も、管理会社のソフトウエアの入金明細のPDFを返事として添付し、「どうしてわかってくれないのか」と、こちらも、息切れ状態。

そして、肝心の入金記録には、何度見ても、360ドルは、1度しか計上されていないのですから、オーナー様が正しいのです。

しかし、それをメールで言い添えても、「それじゃあ説明するから電話してくれ」と、担当者が言うので、仕方なく、電話しました。

そこで、ようやく、管理担当者の誤解を解くことができたのですが、それにあたって、どうしてここまでこの程度のことで事態が紛糾したかというと、これは、この担当者のメンタルブロックの問題一点でした。

私は、「PDFファイルを開けて」と何度もメールで言ったのですが、電話で、再度、同じように指示したところ、「カードの明細書は、あけても日本語だからわからない。これで、何をいわんとしているのかは、おれには理解できない」というのです。

冷静によく見れば、明細は、ほとんどが日本語ではあるものの、引き落としをした管理会社の名前は、英語で出ており、引き落とし額は、日本円で、30、112と出ているものの、その右には、360.00USDという小さい表示もあり、勘がいい人なら、メールの本文とあわせ、「いわんとしていること」が理解できて、おかしくないように見えます。

しかし、この担当者は、日本語中心のファイルを見ただけで、メンタルに拒否反応を起こしてしまい、いわば、情報をプロセスすることを拒否するモードに入ってしまっていたのです。

ここら辺、私は子供を生む機会があってよかったと思うのですが、こういうとき、20台の頃の私は、真剣にキレていたと思います(苦笑)。

子供を育てる人間というのは、

「こんなこともできないのか!?
いやよく考えたら、人間というのは、習得するのに、何度かの反復が必要なんだ。うちの子が特段、飲み込みが悪いわけなんじゃないな。
自分自身、そうやって大人の常識を習得していったのに、それをいつの間にか、忘れていたんだな」

という”思い当たり”経験を蓄積しながら、自分自身が人間としての成長をしていくものです。(お子さんがおいでにならなくても、過去の私と異なり、部下が多い等、人間関係が豊かな方は、こうしたことをご存知かと思いますが。)

そこで、失礼ながら、この担当者に対しても、正直、「あたかも、頭のいい中学生に、世の中の仕組みを教える時をイメージしながら」と自分に言い聞かせながら(但し、その際に、相手を軽んじてはいけないというのも、私にとっては、子育ての教訓のひとつで、子供に向き合うには、あくまでおなじ共感目線で行わなければなければいけないものですよね。人間というのは、子供の時代から、そうした disrespect に敏感に反応するものですので)、


「ほら、このファイルは、彼のクレジットカードの明細。確かに、大体のところは、日本語だけれど、真ん中へんに、お宅の会社の名前が、英語で出てくるでしょう?会社の住所も、MICHIGANとなっているわ。その隣に出てくる、30,112という数字は、日本円なの。だけれど、その更に右のカラムを見て。小さいけれど、そこに、360.00USDという表記が出ているでしょう?日付は、左の2012/11/XXとあるここ。これは、この日に、引き落とされたという意味よ」

と説明をし、更に、

「ほら、もうひとつの画像ファイルは、アメリカ式の小切手で、こっちには、ちゃんと銀行のスタンプがあるでしょう?これは、あなたの知っているキャンセルチェック。ほら、ということは、小切手の引き落としと、クレジットカードの明細が両方、似た時期に、されたということなのよ。それにもかかわらず、あなたが彼に送った1月9日付けの管理入金明細PDFを見ると、この時期、360ドルは、一度しか計上されていない。つまり、入金に、一件計上漏れがあるわけ。オーナー様が指摘したがっているのは、そのことなのよ」

と畳み掛けたところ、ようやく、

「わかった。それでは、会計に掛け合う」

といってくれました。


ここまで来るのに、オーナー様は、1ヶ月にわたり、何度も、おなじ内容のメールをし続け、また、電話もしてみたり(つかまらなかったようです)、また、電話会議を設定しようと連絡したりしたものの、やはり時差もあり、また、これが本業ではないですので、なかなか、解決できないままに日々が過ぎていたようです。

オーナー様は、英語も堪能なので、最初は、私を、ccしているだけでしたが、最後に、「どうしても、意思疎通ができない!中山さん、SOS」ということになり、私のほうはというと、これが本業なので、毎日あちらとは連絡を取っているため、状況を理解してからは(実はccを受けている間は、オーナー様のメールもわかりやすいし、PMが対応できるかと放置していたのですが)、24時間以内に、上の会話をすることができました。

実は、この管理会社の経営者も、実は、第一世代の移民で、彼にも、状況を話したのですが、

「そんな程度のことも、あいつがわからないという状況が本当にあったというのかい?信じられないな。あいつは優秀で相当将来性に期待しているんだけどな??そもそも、どうして、あいつは、MICHIKOに電話しないんだ?ちゃんと一度話さないとな。」

と、こちら側に立って発言してくれました。(私にはスカイプのアメリカの電話番号があり時差さえ掌握してくれれば直接話がいつでもできます)

そして、そんな管理会社社長にも、私は、「普通のアメリカ人が、海外の外国人と働くときのメンタル」を説明する羽目に。


***

あなたは、移民で、2ヶ国語を話すし、今もお客さんの半分は、外国人だから、まったくこういうことが引っかからないけれど、海外にいる人間に「時差を確認したうえで電話してね」といわれるだけで、フリーズしてしまうドメスチックなアメリカ人のほうが多いのよ。

そういう人は、結局、こちらには、絶対電話してくれないで、こちらが、むこうに都合のいい時間に電話をするまで、問題を回避しようとするの。

あなたの部下が不精だとか、欠点があるといっているんじゃなくて、これは、こういう、海外旅行をしたことが、あまりないタイプの人にみんな共通な特徴なのよ。これは、生まれたときからコスモポリタンなあなたにはわからないの。

おなじ伝で、担当者は、オーナー様が、CANCELED CHECKとCC明細を両方送っているのに、一方しか入金が計上されていないということを、どうしてもつき合わせて合点することができなかったみたいなの。

******


私は、たまたま、『サードカルチャーキッズ』などの本を読んでおり、こうしたコミュニケーションの齟齬の背景を、ある程度理論的体系的に掌握するメンタルなフレームワークがあったので、それで、状況を、より早く掌握することができたのだと思います。ここで、「このランクの人間じゃだめだな」などと、相手を見限っても、建設的な関係には至りません。また、このオーナー様は、英語での電話会議もOKなレベルで、実際、過去には、何回か、この担当者と話をできています。つまり、これは、語学力の問題でも、まったくないのです。

むしろ、ここは、わざわざ、アメリカに出向いているのはこちらであることを認識し、「まあ、自分もアメリカのことをいろいろ言われてもわからないからな。あちらが、日本語のクレジットカード明細を見るのが初めてだとしたら、自分が、米国の管理会社の明細を初めて見てちんぷんかんぷんなのと一緒なんだな」と、共感してあげるしか、解決方法は、ないのです。

現場のプロパティマネージャーというのは、日々、賃借人の方々とお話をするコミュニケーション能力のほうは長けており、そっちは、こちらにはまったく歯が立たないないだろうことは、これも、はなから明らかなのですから、やはり、これは、人間それぞれ、持ち味が違うということを、自分自身が思い至らないと、いけないのです。

過去の経験としても、私は、「外国に住んでいる、外国人だから」ということで、不動産の業者さんに「外人さん向けのサポートの仕方がわからないから」といわれて、仲介を拒否されたこともありますし、人によっては、「夜中にメールするとは、ネチケット違反だ」(こっちは昼ですけど、、、)などという人まで知っています。

ちなみに、ですから、海外の人が、日本で取引しようとして、同様の目にあっていることは、私には、容易に想像がつきます(笑)。

このように、国際的に仕事をしようとする方というのは、上のオバマ大統領とチーニー氏との対比に見られるように、国内を見ている人間とは、見ているものがまったく違うのであって、そのことを認識しないと、正直、仕事が進みません。

CULTURAL TOLERANCE(文化的な寛容さ)などというBIG WORDS(大げさな言い方)を使う必要があるわけではないのですが、不動産投資オーナーは、海外起業をマイクロレベルで行う立場です。日々のやり取りに消耗する、これも、私たちの日常であることを、率直にお伝えすることにも、何らかの意味があるでしょう。

ちなみに、ハワイが、日本人にとって、人気があるのは、日本語ができて、日本人のニーズを掌握している業者さんがたくさんおいでで、そうした方が、管理もそのままフォローする「米国内ミニジャパン体制」が、ある程度、できているからかと思います。もちろん、そうなっているにもかかわらず、「そう思ったら、トラブルに、、、」というお声を聞くこともあります。やはり、油断は、どこでも、禁物です。


中山からのお願いです。
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