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決済直前のばたばた なぜ決済日自体が決まらないのか?

来週決済を控えている中山道子です。決済日は、なぜ、いつも、最後まで決まらないのか? 
決済書類は、なぜ、いつも、直前まで来ないのか??


これで、びっくりしたり、苦労された方も、多いかもしれません。


昔、私は、東京の米国大使館で、公証にハワイの不動産の売却書類をもってきたご家族が、書類の名前が、正式なIDのスペルと異なっていたことを、その場で指摘され、何十枚もある書類の中から、自分の名前を探して訂正する羽目になっていたのを目撃したことがあります、、、

書類が直前に来て、あわてて持ってきたのでしょうね。なぜ、毎回、決済書類は、時間のゆとりを十分持って作れないのか?これでは、受け取る側は、何にサインしているかもわからず、また、間違いがあっても、訂正する時間的余裕もないではないでしょうか?


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そもそも、不動産英語で、決済は、CLOSINGといいます。

CLOSEは、閉じるという一般動詞ですが、いろいろな意味がありえます。米国ドラマなんか見ていると、よく、CLOSERという言葉が用いられているのを見聞きします。

《THE CLOSER》という人気警察ドラマもありましたね。これは、「決済する人」ではありません。

CLOSERは、現代米語では、一般的な意味に、最終的に問題を解決する人、案件を片付ける人といった意味で使われるようです。上の警察ドラマでは、「裁判所で通用する告白を取り付ける人」という意味で使われていたようですね。

CLOSE A/THE DEALは、取引を、成功裏に片付けるということ。CLOSE A/THE TRANSACTIONともいいます。

さて、ということで、不動産の話に戻ると、売買や、銀行融資を受ける場合、不動産は、毎回、「決済」というプロセスを経ることになります。

通常、タイトルエージェンシー(TITLE AGENCY)で、行われます。タイトルエージェンシーのことは、私自身は、「決済(代行)会社」とでも訳していますが、実際には、決まった訳はないのではなく、日本には、まったく同じような制度がないのですね。(弁護士が必要な州では、弁護士が書類を送ってきます)

タイトルエージェンシーには、いくつかの役割があります。これを、英語では、wear several/different hats(いくつかの異なる帽子をかぶる) といいます。

第一には、契約書に基づき、取引双方や、各方面への支払いや、登記書類の段取りをすること。税務当局に提出する取引明細なども作成します。

第二には、名義保険(TITLE INSURANCE)の販売代理店としての役割。名義保険は、米国では、「名義が変わることを、保険会社が保証する」ために一般的に普及している保険。売買自体にあたって、購入義務があるわけではありませんが、それまでお互いを知らなかった相手同士が取引をするにあたり、一般的には、リスク回避の手段として多用されており、また、銀行が融資をつける場合は、物件の担保力を確保するため、融資条件としての購入が要求されています。

以上のように、決済代行会社は、日本で言えば、「司法書士の役割」のようなことを期待されているわけですが、双方が独自に司法書士を立てるのではなく、両方に対し、第三者として行動するわけですね。

そして、通常は、決済書類は、このタイトルエージェンシーまたは弁護士から、届けられるというわけです。



決済書類のことは、CLOSING DOCUMENTSと呼ばれます。略して、CLOSING DOCS(クロージングドックス)。


通常、CLOSING STATEMENTとか、SETTLEMENT STATEMENTと呼ばれる計算書類が最初にあります。この書類は、連邦住宅都市開発省(DEPARTMENT OF HOUSING AND URBAN DEVELOPMENT)の雛形にしたがって作成されるので、HUD1(ハッドワン)とも呼ばれています。


HUD1の雛形(HUDウエブサイトから)


この他、名義書き換え書類や、固定資産税課税当局への提出書類などがいろいろパッケージになっているのですが、いずれも、重要なのが、基準算出日。


つまり、どの日を、CLOSING DATE(決済日)とするかですね。


これにより、保険だろうと、固定資産税の日割り計算だろうと、水道局の支払いだろうと、どの日が起算日になるかということで、金額が小額ながら、動くわけですね。実際の振込みが行われるのかこの日ですから、利息の発生日や返済予定日なども、この日を基点とします。

その意味で、決済日は、大変大切なターニングポイントとなるわけですが、この期日の決定プロセスには、山があり、谷があり、というのが、ちょっとテクニカルながら、今日のお話です。

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通常、不動産の決済日は、売買契約が成立した段階で、ゆるく決まります。たとえば、

 On or before 10th, March, 2014, or as soon as all conditions are met.
 2014年3月10日またはそれ以前、または、すべての条件がそろったとき

といった言い方ですね。

その際に、「すべての条件」という言葉が、ポイントで、決済担当者は、書類を作成するに当たっては、ある意味当然ながら、「すべての条件がそろって初めて」、正確な決済書類を作成することができるわけです。

たとえば、タイトルエージェンシーは、タイトル(権原・名義)保険の注文を受け、TITLE INSURER(タイトルインシュアランス販売保険会社)へ、名義保険発行可否を照会します。

名義を移転させるためには、売主側に名義があり、その名義に傷がないことが確定されなければいけません。通常、売主側にも、銀行融資などの抵当権があることが多いので、これらの未払い債権を、決済時に払い込む段取りができて初めて、名義保険販売のOKが保険会社から出ます。

それにあたっては、保険会社の司法部門が、TITLE SEARCH(タイトルサーチ)という調査を行います。名義に瑕疵がないかをリストアップするのですね。

その調査の結果が、返ってこないと、実際に売買が成立するのか自体が、不明なわけです。

銀行の融資だけ位なら、その結果は、1週間くらいで帰ってきますが、まれに、保険会社が、追加調査を要求することがあります。

この前は、デトロイト市内でのある決済で、「固定資産税の抵当権」がまだ抹消されていないという話があり、売主側は、「これは、市の手違いで、固定資産税は払った」という主張をしてきたため、「それでは、レシートをもってこい」といったやり取りがありました。売主も、決済するためには、追徴金を含めた滞納税を、再度、払うかどうかという話ですから、必死です。

そうなると、権原保険が発行できるか、つまりは、決済書類がいつできるか、決済がいつできるかは、市役所と売主、権原保険会社とのやり取りがいつ解決するかという話になり、タイトルエージェンシーは、「返事待ち」という状況になります。


書類一つ一つに、こういった背景があるわけなので、3月10日の決済のためには、1週間前の3日に、決済書類を上げて、売主や買主に見せておき、十分に時間をとって確認してもらう」というわけにはいかなくなるのですね。

勢い、購入者は、決済当日に書類を初めて見せてもらい、決済の場で、いきなりサインをさせられる羽目になったりします。

遠隔の場合、「自宅近くで書類に公証をして返送すればOK」ではあるのですが、ぎりぎりまで、どの日に公証すればいいのかが、はっきりしない場合まで、あるという具合。

お手伝いする側もやきもきします。私も、ざっと確認し、名前など、「担当者が間違えやすい場所」を指摘したりして突き返す場合もあります。固定資産税の残高を、役所のサイトで確認することもあります。なんとなく、LAST MINUTEにならないと、関係者が、やる気を出さない、そんな雰囲気が感じられる場合もあり、なかなか、難しいところです!


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冒頭の話に戻ると、来週控えている決済の案件は、リファイナンス。


もともと、この案件では、投資家様は、2013年10月に、シカゴのC通りにある物件の購入と修理フィーを融資してくださいました。

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上は、この物件を購入した段階の写真です。ごらんいただければわかるように、この案件は、状態が大変よかったので、パートナーのフィックスアップ屋さんは、「いつものように、短期転売をするのではなく、自分の中長期の賃貸ポートフォリオに取り入れたい」ということでした。

そのため、その際には、大幅な修理(GUT REHAB)ではなく、ペンキを塗り替えるなどの表面的な修理(COSMETIC FIXUPS)だけを行い、12月には、テナントさんが入居しました。

物件は、4ベッドルームの大型物件。このエリアの多くの物件同様、二階は、実際は屋根裏で、背の高い人には微妙ではありますが、現地の人は、これに慣れており、マスターベッドルームを、広々して射光もいい屋根裏に置くご家族も少なくありません。

ということで、賃貸料は、1,260ドルと結構な高額。5人家族です。

融資を受けたパートナーの話では、当初は、13ヶ月で、返済したいという計画でした。通常、物件購入後の銀行のリファイナンス、融資にあたっては、物件購入後、1年の時間経過が必要だと考えられているからです(SEASONINGと呼ばれています。シーズンは、”季節”と同じ言葉で、ここでは、動詞。「時間の経過」を意味します)。

ところが、1年たたないうちに、今回、融資を受けたパートナーから、「この物件が、購入後すぐ、テナントがついて、収入が発生しているため、自分が他に持っている物件とあわせることで、普通の銀行が、商業ローン扱いの融資(リファイナンス)してくれることになったので、返済をしたい。」という連絡が入り、融資を受けてから、6ヶ月しかたっていないのですが、来週のクロージングとなったというわけでした。


融資をされた投資家様は、第一抵当権者ですから、その抵当権を抹消し、リファイナンスをしてくれる銀行の第一抵当権を設定しなおすことになります。

ということで、この際には、抵当権を解除してあげる書類に、公証していただく必要があります。このお客様の居住されている地方では、週2回しか、米国大使館の公証事務所が、開いていないということで、こちらは、こちらで、打ち合わせを済ませたところです。

また、この資金は、再度、3月か4月に決済ができそうな別の案件に、再投資をしていただくことが、決まっております。

中山からのお願いです。
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