経済の発展が、必ずしも、不動産市場の発展につながらないわけ ノース・ダコタ編
2014年5月11日のこの前、セミナーをやっていたとき、受講者様から、こんなコメントが届きました。
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アメリカ物件を買い進めており、シェールガス、オイル関係で、テキサス、ノースダコタに次行ってみたいです
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アメリカの経済関係の報道をよく研究されているようですね。しかし、この「経済発展や成長」と「不動産市場」というのは、どう関係するかを、ぜひ、立ち止まって検討されることを、お勧めします。
この投稿は、別段、ノース・ダコタについての記事というより、ケースとして、新しいエリアにどう参入するかの問題として、考えてみる一助としてください。
私自身、ノースダコタで急激に仕事がたくさん増えているらしいといった情報はもちろんたくさん入ってきていて、興味がなかったといえば、もちろん、うそになりますが、自分の守備範囲内でも、おかげさまで、それなりに忙しく、また、単発的に入ってくる情報は、ずばり、
仮設住宅の家賃がすごく高い
といった程度の限られた”投資話”ばかりだったので、真剣に、このエリアを、研究するまでのモチベーションが沸かないなと感じていました。しかし、やはり、報道されると、興味を持つ方もおいでです。有料セミナーでもご質問が出るとなると、「興味なかったんでぜんぜん知らないんです」というわけにも、いかないでしょうか(笑)。
セミナーも終わりましたが、たまたま、今日、単なるちょうちん記事ではなく、この間の事情を説明する記事を見つけ、自分が「ノースダコタの不動産市場は活況」という表面的な理解に対して違和感を持っていた理由が、明確に説明されているのを見つけたので、ご紹介します。
それが、こちら。クリスチャン・サイエンス・モニター紙の2013年6月30日の記事。少し前のものではあるのですが、ずばり、タイトルは、「ノースダコタで、石油産業は盛業かもしれないが、不動産業が、追随しないわけ」。
記事のオリジナルリンクは、こちらから。
Oil may be booming in North Dakota, but real estate is slow to follow
+++++記事抜粋と和訳
While billions of dollars of oil money is flowing freely to North Dakota, investment in new real estate has not followed. With demand far outpacing supply, rents and land prices are sky-high, and residents have few retail options.
ノースダコタには、巨額の資金が投入されているが、不動産への投資は、されていない。需要が供給を大きく上回って、家賃や土地は、天井高だが、居住者には、ショッピングする場所すらない。
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どういうことかというと、、、
同州のオイルブームの拠点は、WILLISTON。しかし、人口がもともと1万6,000人のこの市には、ショッピングする場所は、1950年代に作られたJC PENNY’Sだけしかありません。まともなショッピングのためには、何時間も運転してよそに行かなければ行けないそのわけとは、、、
ずばり、金融機関が、商業案件だろうと、居宅案件だろうと、融資に後ろ向きだから。
このような状態のため、2ベッドルームのアパートの家賃は、なんと、2,500ドルとぼったくりもいいところ。これって、投資のチャンスじゃないんでしょうか??金融機関は、ブームに乗らなくていいのでしょうか?
実は、全米トップデベロッパーのDRホートンや、パルティなどビッグネームも、NDには、まったく興味なし。パルティは、「今、既存マーケットの仕切りなおしに忙しい」と回答、ほかの会社にいたっては、取材への返事すらなかったそうです。
実は、理由のひとつとしてはっきりしているのが、今のオイルブームで、実際に現地に赴いているのは、男性の単身赴任組が中心であるという事実。みな、「出稼ぎ」でであって、妻子帯同という「永住パターン」ではないのです。稼ぎはいいですが、ほとんど、「他州に住む家族に送ってしまい、別段、地元に金を落としたり、収入にふさわしい?新築の家を建てたり」する気はさらさらなし。
こんな寒いところ、不便だし、誰も本格的には引っ越してこないよ、とは、地元のレアルターの弁、、、汗
ということで、2013年の最初の5ヶ月のうちに、ウィリストンで新築物件着工許可が降りた例は、なんと、たったの20軒。アパート建築は、、、482軒の許可が出たというのですから、確かに出稼ぎ組のニーズがあることはわかりますが、長期滞在の気持ちがあるかどうかは、不明。
どうやら、ND(NORTH DAKOTA、ノースダコタ)では、これは、「よくあるパターン」だったらしく、1950年代と1980年代に、開発のために、巨額投資が地元側からも行われた過去があり、それらのブームは、結局、投入資本回収どころか、地元にとって、不発に終わり、融資を引いた結果、返済が焦げ付いたというのですから、”ゴールド(ここでは石油ですが)ラッシュ”って恐ろしいですね。
WELLSFARGOのスポークスパーソンは、
「ウィリストンみたいなところで、金を貸しても、エグジットストラテジーが見えないです」
と、これは、正直な回答をありがとう。(原文:"What we don't want to do is go into a community like Williston and engage in speculative lending and not have an exit strategy,""We're happy to make loans. We want to be repaid.")
ということで、実際にアパートを数多く建築しているKKRなどは、この2013年の段階では、クリスチャン・サイエンス・モニター紙のインタビューに答え、「融資、取れるとは思うんだけど、だめなら、自社資金でやります」と、これも正直だ。
KKRが、2012年に、このために、ノースダコタでアパート作りますというREIT債による自社調達の段取りをしたようなことは、WSJに出ていましたね。2014年現在のKKRの株主向けプレスとかは調べてないですが、これだけ家賃高いんだから、今の運用成績自体は、よさそうですね。後は、元本回収が何年の経営でできるかでしょうか。REIT債って、考えてみると、該当案件は、融資審査のベテランのはずの銀行がお金を貸してくれなかったって言う意味なんでしょうか。(←たぶん、皮相な理解ww)
全米一、失業率が低く、フォークロージャーの低さは、第4位。優等生なはずのノースダコタが、これだけ、石油でがんばっても、
「先が読めないから、NDは、NG」
(原文"I don't think anybody can clearly articulate how any of this is going to develop," "There is inherently some ambiguity and therefore some risk to it.")
(不動産で有名なプライベート・エクイティ・ファンドのカーライル・グループのスポークスパーソンより)
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