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米国一流大学の学費値上がり率は、年率4.8%!

こんにちは。中山道子です。

知り合いのアメリカ人のお嬢さんが、高校を卒業し、去年、スミス・カレッジにご入学。スミスは、いわゆるセブン・シスターズに数えられる名門女子大です。【アイビーリーグが昔、女子禁制だったとき、対抗してできた歴史ある有名女子大学のことをいう】

なんとフェミニズム運動の歴史的指導者、グロリア・スタイネムもスミス出身。このお嬢さんも、フェミニストでありたいからということで、いまどき、「ふぇみにずむ」は、DIRTY WORD【かっこ悪いイメージ】なのかと思っていたおばさんは、びっくりです。


いずれにせよ、この夏、Lちゃんが、大学生になってはじめての夏のインターンシップで、チンタオにある中国海洋大学のなんたら研究室に、やってきました。よくわかりませんが、実験管などをいじっているらしいです。

Lちゃんのお父さんは、米国の海洋学の先生で、こちらの大学の先生と共同研究をやっているため、その関係で、こちらに来ることにしたということでした。理科系志望の学生なんで【とはいっても大学はわざわざリベラルアーツの女子大を選んでますが】、中国でなくてもいいのではないかと思いますが、カルチャーや言語体験もしておくに越したことはないということになったようです。

Lちゃんのご両親は、ドイツ系で、いまだドイツとの行き来があるため、Lちゃんは、ドイツ語が流暢。その上、中国語も勉強したいということで、結構なことですね。

そんな中、つらつら考えてみるに、昨今の米国の大学の学費の値上がりには、目に余るものがありますね。

スミスの場合、2014年から2015年の学費は、


基本額 $44,450
寮費 $7,480


が基本で、医療保険や夏のインターン監督など、各種費用が計上されると、合計で$60, 950がかかります。これには、テキスト代、さらには、食費などの日々の生活費は入っていないようです。

また夏の2ヶ月は、通常、寮に住むのは別料金で、インターンシップ(多くの場合無料または低収入)やアルバイトなどを行うことが期待されており、さらに、冬も、1ヶ月のお休みがありますので、この期間、旅費と生活費がかかります。

今回、Lちゃんは、中国の旅費(たぶん往復で1,500ドルくらいで、実家に帰省もする)や生活費はご両親に出してもらい、滞在のアパートの費用を研究室から出してもらうのだそうです。

スミスの場合、初年度は、寮に入らなければならず、また、車は持っていてはいけないそうです。なので、2年目以降、車を買って、オフキャンパスに住めば、これに、また、最低5,000ドル加算されるような気がします。唯一、近所の家賃が米国としては安めなのがいいところでしょうか。


もちろん、学生の親が全員、毎年7万ドル、8万ドルの負担ができるわけではなく、特に名門校に入ることができる場合は、FINANCIAL AIDが、必要に応じて、提供されます。

スミスの場合、上位20%の学生には、成績に基づくスカラシップが提供されるということ。Lちゃんは、第一志望は、ブラウン大学で、「ここは、合格率4%とかだから、無理だということはわかっていたのよ」ということです。スミスは、第二希望で、Lちゃん、高校ではトップ20%の優等生でしたが、「周囲はみんなそうだから、スミスの中ではトップ20%というわけにいかないの」ということです。

考えてみると、Lちゃん、高校の成績は、普通にいいほか、ヨーロッパ居住経験があって、ドイツ語を流暢に話し、しかも、高校時代には、半年間の間、お父さんの研究滞在に合わせて、中国の高校での勉強までしました。そのときに、我が家とご縁が、できたのです。

こんな国際的な背景があるのですから、こうしたカレッジ入試において、決定的といわれている入学エッセーは、相当読ませる内容だったのではないかと、想像するのですが、それでも、”その程度”では、米国の名門リベラルアーツカレッジでは、ユニークさを考えても、奨学金を出してでも、欲しい人材のレベルには、入らないということ。

いやはや、熾烈ですね。時の運も、競争のうちなんでしょうし。

Lちゃんのボート部のお友達は、奨学金をもらっているため、せっかく始めたボート部の活動も、「やっぱりやめて勉強に専念する」ことにしたそう。Lちゃんは、奨学金をもらう立場も、楽じゃないから、「奨学生じゃなくて、やっぱりよかったわ」といいます。ううむ。


Lちゃんのお宅は、それなりに高所得。お父さんは大学の準教授で、お母さんも働いているので、たぶん、世帯年収は10万ドル台前半に、なるはずです。〔公立大学に勤めておいでなので、お父さんの年収は、オンラインで、出ていた、、、汗〕

なので、成績ベースのFINANCIAL AIDが出ない場合は、家庭背景を出発点として、親の自宅のエクイティや401K、ビジネス収入の有無、子供が何人いて、どれほどの資産を築いているかを前提に、審査があり、Lちゃんの親御さんは、6万ドルのうちの半分の大体、3万ドル位のFINANCIAL AIDを受ける資格があると判断されたということです。

ここで、お宅に多少貯蓄があり、お子さんが1人だったりすると、「全額支払ってね!」となってしまいます。

ということで、Lちゃんは、たぶん、学費や生活費合計3万ドル+休暇中の負担で、3万5,000ドル位が、毎年のベースラインになりそうな計算。累計で14万くらいの予算でしょうか。大学卒業時には、家族で、卒業式に行ってあげないといけないですね。

Lちゃんは長女なので、下には、男の子さんが二人。インテリ家庭なので、当然、似たようなコースを想定しているはず。年齢も、それぞれ、数年はなれているのは、進学を見越してのことでしょうか?


しかし、離して生むのはいいですが、一番下のお坊ちゃんは、まだ小学校にも入っていません。後10年のうちに起こることといえば、、、 


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そう、学費の値上がりなのです。
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例えば、アイビーのリーダー校のひとつ、ハーバード大学の報告書によると、1990年から2010年にかけての同学の学費の値上がりは、年率4.8%で、インフレ率を大きく引き離しています。

資料は、こちらからです。

そして、当然、他のトップライバル校も、みな、足並みをそろえているのですね。


1harvardtui.jpg


1990年には、1万3,000ドルだった学費が、2010年には、33、700ドルに!

そして、2014年秋の基本学費は、ハーバードのウエブサイトでは、43、938ドルと表記されています。


食事や寮費で、やはり1万5,000ドルくらいが計上され、ウエブサイトによると、合計支出モデル総額は、スミスと類似の6万5,000ドルくらいということです。


どの大学でも、「家庭の経済事情」を入力すると、どれくらいのFINANCIAL AIDが得られるかの目算が算出されます。

ハーバードの場合は、「合格できさえすれば、外国人学生を含め、ご家庭の事情にマッチしたFINANCIAL AIDをご提供することを約束します!」と標榜しており、これが、


アジア出身の学生〔日本在住の例〕
3人きょうだいの長子
親が年収1,000万〔9万5,000ドル〕
家族の貯蓄が同額


という「日本人アッパーミドル家庭」出身であれば、実質コスト負担は、1万ドル強とでます。

1harvardtuit2.jpg


さらには、その日本人学生が、


3人兄弟の長子
親が年収500万円
家族の貯蓄は1,000万


の場合の親の負担は、3,000ドルで済むので、実際、入学さえできれば、渡航費などは別ですが、外国人を含めて、進学自体は、あきらめなくてよさそう。

実際には、親の年収が、6万5,000ドル以下の生徒の比率は、20%と高くはないのですが、存在感がないとまではいえません。日本では、国立である東大の年収構成でも、似たような結果が出ています。


このように、トップの大学に進学できる場合、


親が年収500万位以下の「低所得」の親は、なんとかOK
超富裕層は、たぶん、大きな問題なし


と、ここまでは、わかりました。

年収500万といえば、一般社会では「低所得者」ではなく、普通にマジョリティなんですが、言い出したらきりがないので、そのことは、もうここでは、置いておきましょう。

今回の記事で取り上げたいのは、アッパーミドルについて。

この「本来、豊かなはず」の層でも、米国で子供を大学にいかせることは、Lちゃんのご家庭にとってそうなるかもしれないと思われるように、大変な負担になる可能性があるんですね。


その時々の収入状況にもよるので、確実にプランニングは無理ですが、Lちゃんのご家庭の場合、弟さんたちが、同様のランクの大学に進学し、ローンも含め、似たようなレベルの助成を受けるとしても、この一家は、大学だけで、


■Lちゃんは、13万5,000ドルの負担
■すぐ下の弟さんが、少し値上がりして、15万?
■末の弟さんは、もっと値上がりして18万?


なんと、実に、累計45万ドルといった教育費を、大学だけで、覚悟することになるのでしょうか?


なんと言う世の中に、なったものか、、、

FINANCIAL AIDをもらうことの交換条件として、学生本人も、自己負担をしなければいけません。

そのため、Lちゃんは、秋だけ、大学のカフェテリアで、働く他、話題の学生ローンを、毎年4,000ドル借りることにしたそうです。カフェテリアの仕事自体、一般応募ではなく、FINANCIAL AIDの一環として、斡旋してもらい、ようやく稼がせてもらうというシステムになっているそう。こうした昨今の名門大学事情に触れるだけで、こちらも、本当に、疲れてきました、、、

このLちゃんは、お父さん同様、学者希望。

MBAやロースクールではなく、大学の先生を育成するPhDプログラムにアクセプトされる場合は、米国では、学部学生のローンを返済する義務も免除される上、修士コースの段階から、ほぼ生活が保障され(キャンパスでアルバイトする権利を含む)、自己支出はあまりなく学業に打ち込めるのですが、それを前提に、予定を立てるのも難しいですね。

世帯所得10万ドル以上というと、米国では、総世帯比トップ20%です。全世帯の中央値は、大体、5万ドル。

現在、米国で、階級の固定化、分化が進んでいるといわれていますが、アッパーミドルにとっても、教育の問題は、子供が、自分たちが築いたアッパーミドルライフを継承できるのか、という問題以前に、自分が老後をどのように過ごすかを左右する大きなハードルになっていることが、予想されますね。


そもそも、米国農務省の調査によると、「2012年に生まれた子供を、ミドルインカムの家庭で、18歳までに育てる費用」(つまり、大学は入っていない)は、24万ドルと算出されたそうです。


ソースはこちら
から。

日本の大学の学費自体は、程度はまだましですが、総合的な環境を見ると、子育て費用、教育費については、日本も、米国類似の道をたどっているようにも、思えます。

教育機会を広げることは政治の役割ですが、私たち個々人も、「世の中、そういうものだから」、「自分も、親に、いい教育を受けさせてもらったから」または、逆に、「自分は、そうでなかったから、子供にだけは、お金に糸目をつけない教育を受けさせたいから」といった通り一遍の考え方では、やっていけなくなる、そんな予感がしてきています。

インディアナ州元知事、ミッチ・ダニエルズは、地元名門公立パーデュー大学学長のポジションに就任した際に、ギャロップ社との共同調査の結果を紹介、「どこの大学に行くかより、何を得るかが大切」という調査を発表し、こうしたトレンドに挑戦状をたたきつけました。

WSJの見出しは、衝撃的な

Elite Colleges Don't Buy Happiness for Graduates
Poll of 30,000 Grads Finds Strongest Correlation Between Inspiring Professors and Future Well-Being


彼は、知事在職時代には、財政危機をすくった腕利き。州立大学も、多く、私立ほどではありませんが、みな、値上げを当然としているのに対し、パーデュー大学では、学費凍結とあいなりました。それでも超名門の同大学は、州外、外国人学生には、相当な高額です。

教育機関の自己都合・学費値上げは、今後も、支持され続けるのか?反発があるとしたら、それは、今後の大学経営に、どのようなインパクトをもたらすか。オンライン大学といったような代替オプションは、今後、より広く、社会に受け入れられていくのか。


あまり知られていませんが、「有名大学に入る学力がある学生が、それ以外の大学に進学した場合、卒業後のサラリーは、有名大学卒者のそれと、実は変わらない」といった調査も出ており、学費が高額な名門大学卒という学歴が、(容易に、または格安に手に入る場合以外を除き)本当に、圧倒的多数の学生にとって、そこまで大切かどうかを疑う余地は、実は十分にあります。


名門校卒業の学歴は、サラリーにどれだけのインパクトを与えるか?


簡単に言うと、有名校に入る人材は、「能力が高いため、有名校に入っているのであり、その逆、つまり、有名校に入ったから、就職がうまくいったのではなく、もともと、就職でも、うまくいきやすい人材なのである。そのため、このランクの人材になると、どの大学に行っても、就職市場における価値は、あまり変わらないようだ」というわけです。

有名校に入る実力があることはどうやら確かにすばらしい。しかし、有名校に入ることができれば、就職がうまくいくようになると思い込む、その結果、有名校卒業の肩書きに、無理をして、何千万も払い、また、背伸びをしはじめるとしたら、それは、ひょっとして、「違うのかもしれない」、ということになります。


子供を持つ親は、教育をも「聖域」扱いせず、冷静に、情報を収集し、それを分析していきたいですね。


中山からのお願いです。
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