中間層の所得は、今後、回復するのか?
対米不動産投資家の中山道子です。最近、家計関係の統計を研究する時間が増えてきました。金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」/平成25年によると、
2人以上世帯の平均保有額は1,101万円、中央値は330万円
なんだそうですね。
数年前まで、中央値という言葉は、報道ではそれほど出てきませんでしたが、だんだん用いられるようになってきました。
平均値は、すべての数字を足して、数字の数で割ったAVERAGE。それに対し、中央値は、MEDIAN、つまり、すべての数を並べたときの真ん中の数字です。
例として、ここに、
1、3、5、6、30
という数字のセットがあるとすると、
平均値は、
(1+3+5+6+30)÷5=90
中央値は、1と30から同じだけ離れている5です。
貯金が、100万、300万、500万、600万といった人たちのグループに、一世帯だけ、貯金が、3、000万という世帯が混じっていたら、それだけで、貯蓄の平均値は、
900万
になってしまい、5世帯のうちの4世帯が、「うち、平均すら、クリアしていないの?」と真っ青になるでしょう。しかし、実際には、桁外れなのは、3,000万の一世帯だけ、、、
ということで、ここで、中央値というコンセプトを導入し、それが、
500万
ということになると、300万の人、500万の人、600万の人が、それぞれ、「そんなものか」と思い、100万しかない世帯と、3,000万ある世帯が、アウトライヤー(OUTLIER、外れ値)だということになり、実態に、より近くなります。
ここで、金融広報中央委員会が実施した調査に戻ると、平成25年段階で、金融資産の平均保有額は単身世帯798万円、2人以上世帯1,101万円、中央値※は単身世帯100万円、2人以上世帯330万円となっているということで、やはり、相当な乖離があるようです。
これは、資産額が高い層がアウトライヤーとなっているからですね。実は、日本は、アベノミクスによる?株式市場の活況で、家計の金融資産残高が過去最高、昨年末に1、645兆円を記録したんだそうですね。社会としては、「しかし格差が広がっている」ということが、問題になっていると感じます。
同じことが、「なんでも先進国」《一歩先というか》の米国では、さらに深刻です。NYTの報道によると、ラッセル・セイジ財団調査の結果、以下のことがわかったということです。
The inflation-adjusted net worth for the typical household was $87,992 in 2003. Ten years later, it was only $56,335, or a 36 percent decline, according to a study financed by the Russell Sage Foundation.
2003年次、インフレ調整後の典型的な資産は、8万7,992ドルでした。10年後、それは、ラッセル・セイジ財団によると、5万6,335ドル、または、36%の減少を見たのです。
これは、それまでの順調な資産の伸びが、ひとえに、不動産に大きく依拠するものだったため。2003年というと、バブル時ですから、この統計の取り方、??ですが、リベラルなシンクタンクなので、「格差が広がっている」ということを主張したいということで、この区切りをわざと選び、やはり左翼系のニューヨークタイムズが取り上げたというわけなのでしょう。
不動産の含み資産が、このバブル・ピークに戻るという状況は、、ここ1、2年では、起こらないでしょうが。
この期間、トップ5%は、14%もの資産増加があったということです。米国もこの時期、株式が好調でしたから、この状況は、どういうことかというと、資産家は、不動産だけではなく、金融資産の伸びからメリットが得られたということだと一般に評価されていると思います。
The Typical Household, Now Worth a Third Less
ここからは、少し話をはしょり、具体的な統計は、また別の機会に出してきますが、今後の米国の人口増は、ヒスパニック系のマイノリティ《とこれまで呼ばれてきた》が担うことになります。それ以外では、人口比でいうと、高齢者世帯が増えます。
どちらも、これまでの社会の中心と認識されてきた層《白人子育て世代》と比べると、平均値や中央値を取ると、押しなべて、所得が低いのです。
つまり、この「下半分の経済力が回復しない」というのは、長期トレンドになっていく可能性があります。高齢者は、都市部を好み、ヒスパニック系人口は、メキシコ寄り南方により多く居住します。買ったり賃貸したりする家のタイプも、「小さめ」(高齢者)だったり、「エリアが違う」(ヒスパニック)かもしれないわけです。
今後、こうした流れというのは、今まで以上に、「超ピンポイント」になっていきそうです。たぶん、もっとも重要な指標は、、、、長くなるので、また、次の記事で。
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