米国不動産投資と銀行口座
対米不動産投資家の中山道子です。不動産投資においては、お金のやり取りが重要な役割を演じますね。正確性は、当然で、重要なのはスピード。海外送金の場合、通常、2営業日で着金しないと、決済に差し障る場合があります。
《この記事に書いてあることは、エピソード的な話が中心で、個別の銀行について、最新の情報をご提供することを保証するものではありませんので、必ず、ご本人で、その時点での情報を別途収集されてください。》
私自身、銀行口座は、いくつか持っていますが、大体、用途ごと。
仕事の関係で、「米国への決済用の銀行口座」についても、調べることが時々ありますが、規制などもあり、状況は、そのたびごとに、変更します。
例えば、口座開設可能な銀行。あるとき、C銀行が、「渡航なしで、まったく係累のない外国人の口座開設にOKをする」と、内々にいってくれると思うと、半年後には、「あれは、NGになった」といった調子なのです。
このように、911のテロリズム後の米国で、銀行口座を開設する段取りは、なかなか、敷居が高いです。
英語の堪能な方は、大手から、オンラインなどでどんどん聞いていくと、その方の状況に応じて、口座開設に、大きな問題がない場合もあります。
例えば、米国の社会保障番号を持っている場合、それだけで、郵送口座開設にOKしやすい、といったケースもあるかもしれません。
私が外から見るところ、銀行側の思惑には二つあって、
□ テロリズム関係のIDチェック 郵送だと困難か?
□ 顧客の手間とリターン 日本人の場合、英語ができるか?
が、審査の対象になっていると感じます。
第一は自明で、だから、米国のSSNを持っている場合は、こうした問題に世界一うるさい米国政府のトラッキングができている証拠ですので、米国内銀行での口座開設に、有利。
また、後者については、このニーズは、アジアなどのオフショア銀行もみな同じ問題を抱えていますが、
英語ができないと(アジアなら北京語でもOK)顧客管理に支障が生じる
という経験が蓄積していて、「たいした額を預けないなら、コストに見合わないな」とそろばんをはじかざるを得ないのです。
なので、英語が堪能な方の場合は、英語ができることを直接電話のやり取りの中で見せ付けるだけで、基本、対応が変わります。英語がしどろもどろだったら、「プレミアバンキングをご利用いただけると、日本人バンカーの担当をお付けします」といったことをいってきます。
例えば、私の見聞きした例だと、シティーバンクNAは、米国でも、シンガポールでも、2万ドルくらいの貯金残高があれば、日本人バンカーがつくプレミア口座が作れたと思います。
スムーズに、一連のやり取りを英語で行い、その際に、「いえ、一般口座で結構なんです」ということがいえれば、その場で、対応が変わります。
たいした係累がなく、英語も堪能でない場合、一般の方に、依然、一番簡単なのは、
ユニオン・バンク(旧 UNION BANK OF CALIFORNIA改め)
でしょうか。
理由は、この銀行が、もともと、駐在員用の銀行で、現在は、三菱東京UFJ銀行の子会社として、日本語対応デスクがあるからです。日本語のやり取りを前提に、郵送のみで口座開設をする方法が確立しており、便利です。
ただし、LLC口座を開設する場合は、UBの場合でも、実際に、現地窓口に来訪する必要があるといわれていたと思います。《こうした状況は変更や状況判断がありますので、必要があればご本人でご確認ください》
投資用の銀行口座開設で大切なポイントは下のいくつか。
□ 米国貨幣小切手の振り出し、受け取りデポジット機能
□ オンライン・サービスや電話サポートの充実度
□ 送金の段取り
上の二つについては、方法はともかく、目的や概要は、ある程度自明だと思いますので、今日は、3つ目のお話をします。
不動産決済においては、タイミングとスピードがすべてです。
MLS(業者仲介リスト)を経由し、一般仲介で、普通に家を買う場合、慣行にもよりますが、多くの場合、売主が、決済の業者を選びます。
決済サービスとして選ぶのは、タイトル・エージェンシーが多いですが、その際に、いろいろなアイテムについて合意をしながら、売主の指定するタイトル・エージェント(決済担当者)への振込みをして、その業者が、すべてのお金のやり取りを、中立的な立場から、采配するわけですが、多くの場合、売主も、プロではなく、「いつもこのエージェントと付き合っている」といった状況があるわけでもないので、決済を担当する業者が誰かということも、売主と連絡を取りながら、やり取りします。
最終的に決済エージェントが、「ここに振り込んでください」といってくるのは、決済の直前、3日前くらいという例が、圧倒的に多いです。これは、その頃にならないと、振り込み金額が、確定しないからです。
しかし、そこまで直前になってしまっている場合、押せ押せなので、決済日に、お金が、決済業者の口座に着金していないと決済ができないわけで、毎回、あわてることになります。
ここで、気をつけないといけないのが、送金の着金速度。
例えば、日本からの送金の場合、3日しか余裕がなければ、郵便局は、絶対、使わないでください。
日米間の送金に、最大、1週間といった期間がかかります。全国津々浦々にあり、送金費用もそれほど高くないのですが、日本国内の段取りに手間取っているのかもしれません。
それに対し、やはり比較的安心なのは、多くの都市銀行です。
なので、ゆうちょ銀行をメインバンクとされている方が、海外送金で、例えばハワイの物件の頭金を送金する予定があれば、大手都市銀行に口座を作っておくことに意味があります。
また、ここで、いきなり、すべての資金を、ドルに換金してしまい、それから、決済の前に、米国側(例えばユニオン・バンクやハワイの銀行)に送る場合は、くれぐれも、「その銀行におけるオンライン送金手続き」を確認してからにされてください。
私も、お客様の例で経験がありますが、「決済に必要なドル資金を作り、米国に送ってしまったところ、オンラインで、1日の送金上限が、これこれの額しかなく、決済の資金段取りをするのに、大いに苦労した」といった場合もありえます。
実際、普通の一般仲介で、売主が、まったく他人の場合、海外の投資家が、こういうことをすると、大変印象が悪くなり、もめることになります。そうしたトラブルを金銭で解決するために、EARNEST MONEY(手付け)があるわけで、こちらが送金をするのを手間取っている間に、こちら側の不履行を理由に、手付けを没収され、物件を売ってもらえないなどということがおきるとしたら、大変です。
地方の信金の場合も、個別に、やはり、着金予定を聞く必要があるのですが、実は、日本の金融機関は、確実がモットーらしく、表立って窓口で聞くと、小さい銀行でなくても、どこでも、
「一般に、5日間から1週間です」
などといいます。
これは、例えば、ヨーロッパの小国に送金した場合なども含めての回答なのでは、と私などは思いますが、「米国大手なら2日ですが、アフリカなら、南アフリカ以外は、5日です」などといった言い方は、絶対してくれません。
実際には、私の経験でも、例えば、シティーバンクで段取りしてくださったお客様の資金は、米国に最短で、同日着金した、といった経験もあり、米国の場合、日本の大手金融機関なら、2営業日想定すれば、大きな混乱はないはずです。
しつこいですが、多くの場合、
振込先や金額を指定してくるのは、3日前くらいがせいぜい
なので、連絡が来たら、下手をすると、その日の朝やお昼時、会社から抜け出て手配する、といった必要があります。
今は、オンラインバンキングが発達しており、このように実際の銀行に行く必要がある例ばかりではありません。日本在住の方は、例えば、楽天銀行のオンライン送金を手配されるのが割安で便利かもしれません。私は、日本で今細かくウオッチングしていないので、詳しくないのですが、、、
個人向けへの送金サービスは、750円からと書いてあります。詳細は調べていませんが、ご自身の利用されているサービスと、比較検討されてみてください。
米国の資金が残っているので、それを消化するために投資をしたいといった方もおいでですが、そうした場合、まず必要なのは、
その資金を、ネット上動かすに当たっての制約
の問題です。
以下のようなケースもありますので、ご注意。いずれも、過去の私の知識に基づく実際の例です。
□毎日の送金上限が、希望送金額より低かった
□使っていない間に、オンラインアクセスができなくなった
□デバイスをなくした、PINナンバーを忘れた
□送金指示書は、現物を公証して送る必要があった
例えば、2014年現在の私の香港のメインバンクは、中国に引っ越すにあたり、使い出したものですが、開設の際には、気がつかなかったのが、オンライン送金方法の手間。
登録していない相手に送金する場合、米ドル相当で、1日に6,000ドル強までしか、送ることができないので、不動産決済の場合には、毎回、登録をする必要があります。ところが、その登録手続きにあたっては、店舗に行くか、実際の書類を書いてそれを郵送し、あちらが受領し、代理登録する必要があるのです。
これまでの経験では、こちらが、中国から、香港に向けて、宅配サービスを利用しても、現物の受理後の銀行内処理に、実に1週間もかかります。
当初、「初年度無料だから」といわれ、プレミア口座待遇にしており、その際には、担当バンカーが対応してくれたりしていましたが、この銀行のプレミア口座は、米ドル換算で、常時13万ドル相当の残高がない場合、毎月の口座管理手数料が、5,000円くらいかかるので、やめてしまっていまして。。。
そして、一般口座扱いとなってみると、この銀行、「送信先事前登録」の処理時間が、異様に長いわけです!
プレミア口座とは、富裕層向けのサービス。
担当バンカーがつく反面、ある程度以上の口座残高が残っていない場合、毎月の口座維持手数料がそれなりにかかる口座ですね。しかし、実際は、サービスの格差にたいした意味がないので、プレミアでない顧客に対しては、書類の処理時間を遅らせるくらいの意地悪をしないと、プレミア口座に登録する人はいなくなるのでしょう。笑
しかし、ケチな私の場合、投資信託口座も、別の会社で、こうした大手銀行に、固めておくことは、あまりしたくなく、たまに、こういうことがあるからといって、それだけで、プレミア口座手数料を払うのも、悔しくという悪循環、、、
現在に至っております。(笑)
このような口座がメインバンクの場合、私が、単発的に新しい物件を第三者から購入するとしたら、資金の送金段取りを、結構事前に、プランニングする必要があります。
香港で銀行口座を作った際、最大手のHSBCにしておけば、同日、最大13万ドル前後のオンライン送金が可能ならしいのですが《ご注意:それでも、10万ドル単位ですので、数千万の場合、数日に分けて送金したり、現地にいったりする必要が出てきます》、ちょうどそのころ、
「米国当局は、米国HSBCに対し、資産隠し幇助に対して、訴訟を起こすつもりらしい。米国HSBCは、準備のために、米国撤退を決める方向で、所有ビルなどを売却し始めた。このようなハイ・プロフィールなHSBCネットワークは、やめたほうがいいのでは?」
というアドバイス?を知り合いに受け、よく分からないまま、あまり細かいことをつめず、「フィーリング」に近いところで別の銀行にしてしまったのですね。
このころ、HSBCをおおっぴらに非難する米国側新聞報道が出たりしましたので、ご覧になった方もおいでかもしれません。
ワシントンポストに掲載されたHSBCの「ダーティーマネー資産隠し疑惑」非難の報道の例はこちら。
連邦当局が、HSBCを訴えたら、世界恐慌の再来かも!(苦)
結局、そのようなおおっぴらな泥仕合には至らなかったようですが、引き続き、HSBCに対する国際的な目は、厳しいらしいことを、今回、リサーチをして、知りました。
イギリスでも、そうした報道が、再燃している様子、、、
だからといって、小物の日々の銀行取引にどういう影響が出るというものでもないのかなとも思います。現在に至るまで、HSBCは、銀行ランキングや、ムーディーズランキングなどでも、良好な成績を維持しています。いずれにせよ、当時の私は、HSBCのストアフロントに不安を持ったというタイミングだったというわけですね、、
そういうわけで、その後、この決断の結果、毎回、より小さい銀行で、現在にいたるまで、「送金制限」に悩まされることに。
毎回、結構な苦労をして、事前段取りに命を懸けているので、今までのところ、自分の投資に支障が出たことはないのですが、いずれにせよ、転居に伴い、効果的な銀行送金システムを構築しなおすのは、結構、大変ですというお話。
そういう意味で、「HSBCを/シティーバンクをどこでも利用する」といったグローバルバンキング体制を最初からとられるほうが、不案内な要因に対応する必要が少なく、より便利なのかもしれません。
私の周囲にも、HSBC香港に口座を開設するといって香港旅行をされる方が多くおいでですが、ただ、相当ピンポイントな目的がなく、なんとなくやっても、上の私のように、「しまった」ということになるかもしれません。
例えば、HSBCの証券口座は、開設するのは大変な手間なわけですが、もっとずっと投資が容易な証券専門の会社が、いくらでもあるわけですから。
いずれにせよ、転居されないまでも、新しい事業、つまり、対米不動産投資に着手される場合には、どの銀行口座が、段取りに最適かといった細かい点も、重要ですので、お気をつけくださいというお話でした。
今日の記事のポイントは、「米国不動産決済に関連して検討するべき銀行」というピンポイントなもので、その口座が、上のニーズに最適だからといって、他のニーズにもふさわしいとは限りませんので、ご注意。
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