調べれば調べるほど、先行き不安な米国の格差分布 人種編
2014年は、フランスのトマ・ピケティ教授の《21世紀の資本》が一世を風靡しましたね。
私自身、全部読めるかわかりませんが、今、英語版を眺めたりしております。米国の最新論調が、確かにこうした傾向を指摘してきたり、彼の指摘に反応していることは、報道や調査の中でも、承知しています。
実は、ネットで、「6,000円もする」という声を目にし、「そんなに高いのか?」と驚き、調べましたが、ここに、「21世紀の国力論」を見て取ってしまった私。
どういうことかというと、、、そう。6,000円も出さないとこの本の日本語版が買えないのは、単に、日本市場がいかにマイナーであるかを示しているからではないかと思われるからなのです。
アマゾン書店上で比較してみると、、、
> AMAZON.FR、つまり、アマゾン・フランスでは、フランス語の原著は、25ユーロ(3,500円)。
> AMAZON.GEでは、ドイツ語は、ほぼ原著と似た価格。
> AMAZON.ES、スペインでも、スペイン語版は、類似価格。
> アマゾンの本家、米国アマゾンでは、英語版ハードカバーが、27ドル(3,200円)
> AMAZON.CN、つまり、アマゾン中国では、中国語の翻訳が、さすがの65元(1,250円)。
どうしてかはわかりませんが、米国の場合は、オーディオブックはハードカバーより高いですが、MP 3 CD版なら、中国のこの値段を下回る9ドル(1,100円)で入手できます。
もちろん、発売日も、原著は、2013年8月30日、日本語版が、ついこの間の2014年12月19日だったのに対し、英語版は、2014年4月15日、中国語版は、2014年9月1日で、当然、他国は、みな、よりスピードが速いです。
英語、中国語は人口も多いですから、なんとなく納得できます。ドイツ語やらのヨーロッパ系言語への翻訳は、仏日訳より、楽そうですし、なんといっても人材の層が厚そうです。
しかし、日本語を話す人は、ドイツ語、フランス語、イタリヤ語、韓国語を話す人より、人口が多いはずなのに、言語的に、同様のDISADVANTAGEがありそうなお隣韓国には、アマゾンはないものの、聞いたら、3,500円相当で訳書が手に入る、しかも、訳されたのは、、2014年9月と、やはり、なんだか、気合が違うんです、、、
《日本語版の訳者の方や出版社への批判ではありません。契約交渉に始まり、訳文の正確性を期すことも含め、いろいろな要因があるだろうと想像します。》
少子化や高齢化は何が問題なのかといった「草食化?の議論」も時に見ますが、最低、英語か中国語ができるようになって、必要があれば、どこへでも転出する覚悟をしておけば、たぶん、何も問題ないだろうと思います、ハイ。
さて、例によって、前置きが長いですが、今日、話をしたかったのは、ピケティ氏が、米国でも、大きな影響を及ぼしているというお話。
もともと、ここ数年、米国内でも、景気回復が進行するにつれ、それにしては、一般人の生活が改善しないということが感じられるようになっており、そのような状態に対して、こうした実証的な研究が突きつけられた状態となったわけです。
彼のおかげもあって、こうした研究にもっと脚光が当たるようになったという側面もあるのか、シンクタンクなどでは、多くの格差研究論が、日々発表されるようになっています。
今回取り上げるのは、所得格差の人種編。
ご紹介するピュー研究所のリサーチの見出しは、端的。
2010年には、白人世帯の富は、黒人世帯の富の10倍の規模だったが、2013年には、この差が、13倍に広がった。中央値で、世帯間資産額の差は、1万1,000ドル対14万1,900ドル。
同様に、2010年には、白人世帯の富は、ヒスパニック世帯の9倍の規模だったが、2013年には、この差が、10倍に広がった。中央値で、世帯間資産額の差は、1万3,700ドル対14万1,900ドル。
この白人と黒人の格差の存在自体は、正直、大きなニュースではありません。道理で、白人警官と黒人少年・男性との事件が、全国レベルの政治運動へと発展するわけです。
今回のレポートの重要性は、不況を経由し、格差が広がったという「ピケティ仮説」《資本の収益率のほうが、所得の増加率を上回る》が人種間コンテクストで、具体的な数字を伴って実証されたことでしょう。
米国の将来に投資しようとするミニ不動産投資家にとって、同様に、悩ましいのは、おいおい、米国内で、マイノリティではなくなっていくであろうヒスパニック系が、黒人よりはましなものの、思うより、資産を蓄積できていないこと。
このままでは、彼らの人口レベルでの米国牽引は、世帯資産という観点から見ると、単純に、資産のない層が増えるというだけの話しになってしまいかねないわけです。
米国は、《人口が増える先進国》として、人口が減る先進国の私たち日本人にとっては、期待の星なわけですが、実際、増えていくのは、ぶっちゃけ、世帯純資産額が、高々1万ドル台の世帯だけというわけです。《連邦統計局の予測によると、2060年には、米国の人口(現状3億ちょっとが、4億2,000万人へ)のうち、白人は、43%となる反面、ヒスパニック系人口が、31%と伸びます。黒人は、15%で、現状比率である13%と比べ、それほど増加しない予定。こちらを参照》
考え方によっては、こういう方々は、家を買わず、永遠に賃貸をしてくれる”お得意さん”になるかもしれません。他方、こうした層の住まうエリアで、物件の資産価値が、インフレ率を大きく上まわっていくかというと、そのような期待は、過大なものに終わる可能性もあります。
これまで、米国の不動産は、インフレ・ヘッジとして、意味があると一般に考えられてきましたが、今後、インフレ率にキープ・アップすることができないかもしれない”使い捨てストック”と、資産がある白人やアジア人らが住みたがるがゆえに、「それ以外の人々の実感」とはまったく違うレベルで、倍々ゲームが繰り広げられるエリアが、それぞれ、さらに、明暗を分けていくのかもしれません。
それは、例えば、「デトロイト対シアトル」といった都市間での格差でもあるでしょうし、「ケンタッキー州対ワシントン州」といった州間の格差でもあるでしょう。同じ都市内でも、川ひとつ、通りひとつを隔てて、こうした格差に対面するというのは、米国の生活では、すでに、日常なわけですが、これが、もっと顕著になっていくのでしょう。
例えば、2014年現在、米国成長のけん引役のテキサス州は、ヒスパニック・ラティノ系人口の比率が、すでに人口の38%です。これは、同州の不動産市場に、どういう影響を与えるのか。
こうした人口動態上の動きは、ますます、入り乱れていくはず。ひとつ、注意点は、ヒスパニック人口のほうが、白人人口より「若いピラミッド」を描いているという理由もあって、資産が少ないという事情も存在するようです。白人人口は、日本人に追いつきそうな高齢化が見受けられ、それが、白人のほうが、資産蓄積に成功しているように見える理由のひとつでもあるのかもはしれません。
しかし、だからといって、それでは、今後、10年、20年後に、ヒスパニック人口が、少し高齢化すれば、本当に、白人同様の資産蓄積をしていけるのかというと、それは、現在、根拠が確実にあるとはいいにくい状態ではないでしょうか。
このように、どこにどんな地雷が潜んでいるか、本当にわかりにくい昨今、個別エリアでの正確な内部情報なしに、ミニ投資が成功する気がしません。
2060年というと、われらが日本は、総人口が、9,000万人を切ることに。こんな中、あなたの不動産投資戦略は、どのようなものとなっていくでしょうか?状況は、どこでも、予断を許しません。
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