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日本人は、インフレを計算に入れるべきか、入れないべきか?

《今日2015年4月26日には、ネパールのカトマンズで大規模地震があったということを速報で知りました。1,000人単位の被害者がでた状況だそうで、私も、昔、ネパールに仕事によく行っていて、知り合いもいます。今回の被災に対し、一人でも多くの現場の方々のご無事をお祈りし、セーブザチルドレンジャパン経由で、些少の寄付をいたしました。》


中国在住の対米不動産投資家の中山道子です。

中国のネット規制は、万里の長城(Great Wall of China)をもじって、グレートウオールと呼ばれており、例えば、フェイスブックやツイッター、ユーチューブ、ワードプレス、グーグルドライブなど、いずれも、普通の状態では、アクセスできません。

他方、中国国内ネット環境は、ある意味、「悪い子」天国。オンラインで、閲覧だけなら無料で本が一冊丸々読めるサイトなど、コンテンツは、ダダ漏れ、無法状態です。

朱に染まった私は、そんな中、しばらく前に出たばかりでほしかった英語の投資本を一冊、昨日一日かけて、無料でオンライン上、読んでいましたが、そのときふと思ったことが、このインフレの問題。

リタイヤプランニングの本なんで、「生活費の設計」という章があり、当然、インフレに言及があります。

リタイヤ後の老後資金の算出方法は、こんな感じ。


『現在希望する老後の予算を考える。通常、老後は、生活費は、2割くらい減ります。また、一般的な米国の高齢者世帯の支出は、3万2,000ドルくらいです。あなたが、今、生活費を、子供を育てながら、家族4人で、8万ドル使っているのであれば、子供が巣立った後、例えば、夫婦で、4万ドルの生活水準を想定することになるかもしれません。』

> 年金等決まった収入が予定できる方はそれを計上。例えば、2万ドル。
> 差額を算出。補填しないといけないのは、2万ドル。

ここで、老後の心配なく、毎年、2万ドルを捻出する方法を考えるとすると、、、


とここで、ストップ。そうじゃない、そうじゃない。そう、インフレ率の計算!


通常、米国などの先進国では、年率2%くらいのインフレを想定するのが普通。2%って、歴史的に見れば、結構な低成長ですから。ということで、今、40歳の夫婦が、日本以外の低成長先進国に、20年後にリタイアしたければ、「今の水準で4万ドルの生活費が、年率2%で20年後に、いくらに化けるか」を考えずば、意味あるプランニングにならないのです。

そうすると、20年後の4万ドルは、ほぼ、6万ドル。もし、社会保障年金が年間2万ドルあったとしても、年金は、インフレスライド支給されないことが普通ですから、補填しなければいけないのは、年間、2万ドルではなく、その倍の4万ドルなのです。

いや、確かに、国力が成長し、投資リターンだけが高くて、インフレ率がゼロの国なんてありませんよね。

とここで、本題。

日本でも、最近、老後の資金の作り方についてのプランニングの記事をたくさん読みますが、「気を引き締めないと、危ないです」といった警告は、よく見るものの、このインフレ率、計算に入れているケース、そういえば、思い当たりません。

そう、日本は、1994年からほとんどインフレがなかった「無成長国」。

日本では、無職高齢者夫婦の2人世帯支出額は、なにせこのご時勢ですから、直近、減るばかり。平成24年次の数字は、年間250万くらいだそうですが(総務庁家計調査の最新情報は、こちらから)、この20年間の空白の時代を経験し、日本人は、インフレ率を計算に入れる習慣を忘れてしまったのでしょうね。

20年後にも、この金額で、生活できることを、今、日本国民の多くが、無意識に、期待しているのかもしれません。いや、ここ数年のこの数字の実績を見る限り、今後、支出はさらに下がり、高齢者世帯夫婦二人の年間平均支出が、今後10年を経て、200万切ったりするようなことも、夢ではないのかも、、、苦笑

一応、今、20年間の無成長をこれ以上は放置すまいということで、対外的に、ばつが悪い自覚があるのが今の安部政権。

日本だけで生活していれば、「だけど、なんで、海外に義理を立てる必要があるの?」と感じそうですが、なんといっても貿易立国。

例えば、2015年1月に出た世界銀行のワールドレポートなんか、日本に関しては、ヨーロッパと一緒くたで、「世界経済は今、回復基調だが、まだ、脆弱。この二つの地域が、今後、さらに下手をしなければ、何とかなるのだが、はてさて、、」と、完全に名指し。レポートを読むと、繰り返し、「周囲の貿易相手みんなが、引きずられて迷惑してるから、何とかしなさい」と汚名挽回が要求されている悲しい状態でした。

しかも、一説によると、ヨーロッパは、2015年、回復基調。来年は、落第生が、日本だけになったりして、、、

世界銀行レポート2015年1月

このように、現政権の「2%インフレ達成」というターゲットは、本来、わが国の経済成長のみならず、国際的に、「憧れの先進国」ステータスを回復し、「世界第三位」の経済圏にふさわしい国際寄与を行うためにも必須なんでしょうが、しかし、実は、国内では、一人当たりのGDPを上げようなんていう野望は、成功体験があまりに遠い記憶すぎて(その発想が、肉食系過ぎて?)、もう、ぜんぜん支持すら、されていないのかもと思い当たりました。

だって、高齢者世帯は、今の年金が、ますます目減りするわけですから、もう働いていない高齢者は、インフレなんか、望んでいませんよね。霞が関のお役人も、更なる年金失策の突き上げを覚悟することになるでしょう。その上、現役世代も、インフレだけでは困りますからね。賃金がまず、増えないと、、、

今、求人は増えているといっても、実際には、低賃金業種だけ。そのため、より賃金が高い職種における求人や実質賃金も増えないと、根本的な問題解決にはなりません。

参考 労働市場の現状から見た賃金デフレ脱却の可能性 - みずほ総合研究所

おっと、しかし、日本は、生産現場以外の場における労働者の生産性が、ずっと停滞していることが、成長を阻む重要な要因だと指摘されてきていましたっけ、、、、

「日本人の生産性」は先進国で19年連続最下位
非効率なホワイトカラーの働き方はどう変わるべきか

ここら辺は、役所の経済政策のせいというより、民間の経営手腕のせい、、、? 

個々の企業が生産性を上げる経営刷新をしていくことでのみ、個々の労働者の賃金は、向上するわけでしょうが、「ちょっと待ってよ、コストカットといわれて、ノルマはそのままで、残業代カット。所得だけが減って、さらに苦しくなったんだよ。もう限界だよ」、といったリアルな悲鳴を上げている方のほうが、多いかもしれません。

嗚呼、この悪循環ロジックのどこかに、解決の糸口はあるのでしょうか。

頭痛ばかりの経済見通しですが、一個人投資家に戻って、最後に、ご参考までに、世界銀行の関係ページをご紹介します。各国インフレ率が、歴史的に比較のできるインタアクティブ画面です。

世界銀行各国インフレ率

例として、日本と米国、香港の直近のインフレ率のマッピング比較。ちなみに、日本では、2014年、2パーセントのインフレを計上しましたが、確か、これは、ほとんどが、消費税で、経済活性化によるものではないはず、、、

1inflation.png

マレーシアやタイなどの成長するアジア国でリタイアされたい方は、年率4%のインフレ率の計算を、リタイヤ計画上、お忘れなく!単純に日本と同じ生活がしたい(和食を食べて日本語の本を読むなど)だけだったら、今の段階ですでに、もう、日本の地方で生活をしたほうが、安いです。

今、海外でバリバリ稼いでおいでの日本人エクスパットの皆様、リタイヤ後、一番贅沢ができる国は、われらが栄えある母国、デフレ大国日本となるかもしれません。今は、居住国の成長メリットをぜひ、最大化されてください。


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