不動産投資家にとってのドラッグ問題 マリファナ合法化運動の意味するところ
対米不動産投資家の中山道子です。今日たまたま見たニュースに、「ああ、これ、ブログに書かなくちゃと思ってたんだよね」。
それが、「マリファナ合法化、米国人の過半数が、賛成」とのFOXの調査結果。報道は、こちらから。米国人にとっては、同性婚の次のビッグな論点です。
関連する日本語の報道に、こういうよい記事がありました。さすが週刊ダイヤモンド。
米国で広がるマリファナ合法化の動き
――ブルッキングス研究所シニアフェロー
ウィリアム・ガルストン氏が語る本当の理由
唯一文句をつけるとしたら、この記事、人種問題には、言及していませんね。
たぶん、記者が、そこまで盛り込むと、てんこ盛りになりすぎてしまうと、判断したのかもしれません。ひょっとすると、そこまで、インタビュアーが追いついていない?
そう、マリファナ合法化問題は、人種、階級問題なんです。
少し寄り道しますが、今をさかのぼること、30年以上前、私も、親の転勤で、カナダの有名名門女子校に10歳から12歳まで、在籍していました。
当時のこの学校は、白人ばかり。非白人は、黒人の女の子が一人、アジア人が私一人。でも、カナダ人は、なんと言ってもアメリカ人にバカにされるほどの人の良さで有名なので、特に意識せずともよい友人たちに囲まれて過ごせました。
ただ、白人ばかりを見慣れすぎてしまい、街角で、ショーウインドーなどに、白人仲間に混じった自分の姿が映ったのを見て、「ぎょっ、アジア人の顔!」とびっくりしたりしていたものです。家では、家族同士、普通に顔を見合わせていたんですけどね。
今、その学校は、競争力をさらに高めるため、積極的に外国人留学生の受け入れに手を打ち、寮もできました。いわば、プレップスクール化しているわけで、ウエブサイトを見ると、進学先もすごいし、スポーツチームの実績も十分。トップページには、韓国人やインド人など、アジア人の顔がフィーチャーされており、生徒の構成も、国際化しているようで、今、カナダ内でランキングは、トップ10以内だそう。私にとっても、いっそう誇らしい母校となりました。(でも、日本人の率は、まだ、低そうですが)
しかし、この名門校で、当時、プレティーンのこの年齢で、すでに、一部の同級生たちは、マリファナ使用に着手していました。優等生でこそなかったですが、問題児というほどの子たちばかりでもなかったです。もちろん、ばれたら、まずかったはず。しかし、ことほどさように、北米では、高々11、12歳程度の段階で、特権的な富裕層の子弟にとっても、昔から「フツーの誘惑」だったわけです。
《話がどんどんそれますが、ちなみに、日本では、周囲を見ていると、まだ、子供に対する薬物使用教育が、重要事項という感じがないので、広まりだしたとは言っても、まだまだなのかなと思います。それ自体は結構なことかもしれませんが、米国では、予防教育は、小学生の段階から始まります。今、海外インターや有名プレップスクールの寮に行かせるなど、日本でも、海外教育熱も盛んですが、免疫がないご家庭、お子さんがいく場合は、私の母校に見るように、どんな立派な学校だろうと、海外では、根深い問題ですので、ドラッグと避妊対策教育には、気をつけたほうがいいと思います。》
さて、ここでようやく現代アメリカの話に戻りますと、米国でも、もちろん、コカインなどのハード・ドラッグに対する社会許容性が高まっているわけではありません。こちらは、いよいよ連邦主導の戦争といった様相。
しかし、マリファナについては、成人使用の問題点は、飲酒や喫煙とそれほど変わりないといったデータが一方に蓄積されはじめています。また、他方では、マリファナ使用関連の初犯をきっかけに人生を狂わせる「犯罪者」の圧倒的多数が、若い黒人男性であることが、社会経済的な人種問題の淵源ともなっている、という人種問題としての認識も広まっています。
マリファナ使用ごときで、若い黒人男性を、収監し続けると、関連コストは、大変な額に上ります。しかも、こうした傷のついた人たちは、”お勤め”を終えても、社会復帰は困難になってしまっており、むしろ、本当に、犯罪者の道をまい進するしかなくなる、というわけです。
貧困層相手の大家さんをしていると、お宅を訪問した段階で、結構な確率で、マリファナを常用している人たちがいます。まあ、低所得者層でなくても、そうなのかもしれませんが、ミドル層は、小切手を郵送したり、軽度の修理は自分で対策したりといった自己管理能力がありますので、そうした「遭遇場面」は、それほどないわけです。
これまでは、というか、現在に至っても、多くの賃貸借契約上、「敷地内ドラッグ利用は禁止」となっているわけで、それは犯罪である限り、当然なわけですが、このように、米国人の意識自体が変化するマリファナについては、ハードドラッグと異なる対応が必要になっています。
細かい法は、複雑で、私は、現地の人間でないので、詳しくないですが、例えば、2015年4月現在、州としては、少量のマリファナの自己使用・自宅所有を合法化した州は、今のところ、5州しかないようなのですが、(Colorado, Washington, Oregon, Alaska, and Washington, D.C.)、自治体レベルでは、より個別な扱いがあるようで、例えば、まだ、州としては、所有からして違法なミシガンでは、実は、アナーバー、デトロイトなど、先進的な都市で、どんどん、「少量の自己所有合法化」が始まっており、個別の自治体が、自分たちは、州法を順法しないと堂々と宣言しているわけですから、状況は、大変複雑かつ流動的。
この前、シカゴの物件をお持ちのお客様から、「管理組合が、自分のテナントが、マンション内で、マリファナを使っていることに対し、注意してきた」という連絡が来ました。
どうやら、イリノイ州シカゴ市では、昔は、収監対象の犯罪だったのが、今は、罰金のみへと軽罪化したらしいのです。今後、市民の更なる理解が進めば、完全に、少量の自己使用を合法化することになるのでしょうが、まだ、その段階ではないようですね。
こうなると、テナント側としては、
> ちっ、マリファナくらい、自宅でリラックスさせてよ
となり、管理組合側は、
> こっちはこのマンション買って、子供を育てようとしてるのよ。
と、主流派の立場を主張しているわけです。
シカゴの場合、まだ自宅所持が完全自由化したというところまでは行かない反面、もう実質上、自宅使用については、警察は、しゃしゃり出てこないことを宣言しているわけです。
そんな状況ですから、テナント側の考えにも、正直、一理ありますね。しかし、このやり取りが続けば、オーナー様は、管理組合から罰金くらい、要求されることになるかもしれません。
合法化運動は、「未成年者のマリファナ使用」については、飲酒や喫煙と同じ扱いで、反対。なんでも全面合法化を要求しているわけではありません。しかし、今は、とにかく、状況が流動的。同性婚と比べても、社会的な混乱は、より大きい気がします。
日本では、これは、大家さんにとっては、ベテランであっても、未体験ゾーンの可能性がありますが(たまに、日本でも、マンションで大麻を育てている犯罪者の記事を見ますけどね)、米国で投資をされている方の場合、今後、物件所有州と該当都市での法規、利用する賃貸借契約の該当条項、管理組合がある場合、組合規約、それから、任せる管理会社方針を掌握しておいてもよいかもしれません。
上のシカゴのケースの場合だって、これがこじれる可能性はまだ存在します。
ここで、管理組合が、テナントの度重なるマリファナ使用(こっそりやっていれば、わからないはずですが、煙がドアから立ちのぼっていたり、ベランダで堂々と吸っていれば、ばれてしまう)を理由に、該当テナントの退去を要求してくる、それを受けて、オーナーが、テナントとの契約解除に追い込まれる、そして、テナントが、オーナーと管理組合を訴える、なんていうシナリオにつきあうのは、ごめんですよね。
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