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教育機会の多様化は、こちらも選ばれるという意味だということがわかった日

中国在住の対米不動産投資家中山道子です。今日は、仕事ではなく、単なる教育ネタです。なぜか、これが、周囲の子育て世代の女性に大変人気があり。。。(興味ない方はスルーしてください。褒められるとうれしいんで、小ネタってことで。)

基本、アジアって、生活費も割安で(シンガポールや香港は違うみたいですが)、小さい子供は育てやすいというか、お手伝いさんも、家庭教師の先生も、人件費が安いですし、小学校レベルでは、教育が充実しています。

私は本土の成長を見たいという気持ちがあって、中国に、しかし、それほど忙しくない小さい地方都市に暮らしています。

今の中国は、政治的にはデリケートですが、教育オプションは、「えっ?」と思うほど多様。

公立に通わせる外国人は珍しいですが、不可能ではなく、小学校低学年レベルでは、いい経験とさせることも出来そうです。コネや金のある中国人で、子供を中国のいい大学に進学させようとしている人は、有名公立の「実験校」を選んでいます。学区によって、レベルはまったく違うようですね。

インターも、乱立していて、最近の相場は、人民元が高いため、日本でインターに通わせるより、高いです。2015年現在、中国では、名があるインターは、毎年の学費、400万円から500万円が目安じゃないでしょうか。

日本は、今、「インバウンド観光」に沸いていますが、教育についても、たぶん、日本のインターへの留学って、需要あるだろうと思います。政府も、マレーシアみたいに、ビザとか整備してあげて、学校側も、寮とか作ったらどうでしょう。

さて、私の住んでいるエリアは、韓国企業の進出が著しいので、韓国学校も多いようす。また、中国人向けにも、いろいろな教育が自由に展開されており、モンテッソーリ式やシュタイナー(ウオルドーフ)式とかも、見かけるようになりました。私の知っていた東京と比べても、いろんな特色のある教育の中から、自分に合うものを、ある程度、主体的に選んで、受けられる選択の余地が広く感じます。(親にそれなりのリソースがあれば、という断り書きはつきますが。)

ただ、中国の教育の多様化は最近のことらしく、名門私立でも、日本のように、100年単位の歴史のあるようなところは見当たりません。

うちの子供の小学校は、「中国人向けの私立」なんですが、キーワードは、

  「我が校から世界へ」

なんで、英語教育に、熱心で、中国人の先生が中国の教科書を使って教える英語の授業の他、欧米人の先生による英語の授業も週数回、あります。高校卒業後、海外の大学に進学させたい親御さんにアピールしているようです。子供の同級生の親御さんたちは、みんな、私よりひと世代若い30台、高等教育を受け、リベラルで、都会的。海外旅行をしたことがない層であっても、考えかたに大きな違いを感じることは、まったくありません。

小学生のうちは、担任の先生は二人つき、今、子供は、4年生のクラスに、生徒が28人いて、国語の先生と算数の先生が共同担任という贅沢なローテーション。IT授業もあって、ワードやエクセル、パワポの作りかたなど、初級のパソコン授業も一通り終わり、スライドを作って、先生にメールし、その後、クラスでプレゼンをするといったような練習も、やったりします。

それで、中国の学校は、9月開始なので、ちょうど、今週、「来年度の学費支払いの請求書」が来ました。

入学時にはそんな制度なかったと思うのですが、新興校の子供の学校では、学力底上げテコ入れのためか、なんと、去年から、「落第生は、放校(というのかわかりませんが)」という決まりになりました。


IMG_8753.JPG

今年も、今週、担任の先生から、「進級できる子だけに、請求書が準備されてます」という戦慄の宣告の後、名前入りの封筒が各人に渡されたという次第(というか、もらえない子は、そこで、来年バイバイってことですが)。学年末試験は、まだ終わってないのに、もう選別してしまう、しかも、”戦力外通知”は、いきなり、クラス全員の前でなされるという。。。

日本なら、親が私立に入れる理由のひとつは、「一度入れば、後は、手がかからないから」。エスカレーター式なんていう言い方が成立するくらいで、大方の私立なら、よほどの問題児でない限り、単純な低学力で、小学生相手に、進級不許可や退学通知はないんじゃないでしょうか。しかも、やるなら、請求書は郵送にして、学期が終わってから、個別対応をしそうですが。。。

上で述べたように、今の中国には、本当に、いろんな教育オプションがあるようなんですが、その反面、学校からの、「こちらも努力するが、生徒さんも、選別する。日進月歩でどんどん向上する我が校にふさわしくない生徒さんは、容赦なく、どんどんはねていきますから」というメッセージが、さすがハングリーな中国、と久しぶりに、カルチャーの違いを感じた私です。

進級選別があるなんて聞くと、子供の学校は、「鬼のような超進学校」かと誤解される方も出るかもしれませんが、上で述べたように、そんなことはなく、中国式ではなく、欧米式教育を標榜していて、つまりは、あまり厳しくないということが、「売り」の学校なのです。実際、子供も、学内テストでは、普通の点を取ってくるのですが、年度末の市の教育委員会主催の標準学力測定テストでは、まったくだめ。中国の大学進学を前提に、公立に行っているお友達なんかは、もっと勉強しているので、この年齢だと、学力測定は、100点が当たり前なんだそうで。そこからも、学校のレベルがわかるというものです。

ということで、子供の学校は、そういう「ユルイ学校」なのに、このドキッとする瞬間があったことが、私にとっては、久々に、びっくりだったわけです。

しかし、なんという学力のばらつき、、、というか、小学校の段階で、みんな、求めているものが、それぞれ、ぜんぜん、違うのですよね。

韓国の方々や、私たちなんかは、中国の大学進学は目指していないので、公立の学力水準までは求めていないが、英語は歓迎。中国人でも、中国式受験加熱に批判的な親御さんは、低学年なら、うちの子供の学校なんか、ちょうどいいと思っており、子供がそうしたければ、海外進学をさせたいので、教育委員会のテストも、気にしない。

他方、中国国内でのポジショニングや、子供の学力にもこだわる有力者の親御さんは、いくらお金があっても、実は、私の見るところ、私立やインターなんか選んでいません。そういうお宅は、謝金や寄付金などを払ってコネを総動員し、力技で、有名公立に行かせておいででなので、有名公立では、子供同士が、みんなで資産高や親の仕事を自慢しあうのだとか。もちろん授業のレベルや勉強の質も、こちらとは、大きく違い、こういう進学校のお子さんと触れ合った経験では、小3にもなれば、新聞なんかも読んだりしていると知って、子供の同級生たちと比べて、やはり学力が高いなと、感心した覚えもあります。

もちろん、対極もあります。そもそも、この市に戸籍がない地方からの出稼ぎの方々は、公立には行かせられませんから、そういう方々のお子さん向けの「格安の全寮制の私立」といったものも存在しています。また、こうした方々のニーズのために、「戸籍がないお子さん向けの公立(外国人もOK)」というのも、数は少ないですが、でき始めました。

そして、この過酷な現実についていけない外国人のエクスパット仲間の一部の方々は、「ホームスクール」方式で、親御さんが、お子さんを自宅で教育したりもして自己防衛しています。親が、インターに行かせられるほどの経済的余裕がなく、同時に、子供が、中国式の学校に行かせられるほど、(語)学力がないと、それしか、オプションがないわけですね。お友達で、ご主人だけが、仕事が楽しそうだけれど、ご家族は、アメリカに帰りたくてしかたなくて、奥様は、うつになりそう、なんていう人までいます。

割と、平均的な教育を受けてきた私たち日本人は、「教育機会の多様化」とは、自分が選ぶ自由が広がることだ、いいことなんだとばかり思ってしまいがちですが、実は、教育現場において、オプションが多様化し、あわせて国際化が進行するするというのは、プラスというばかりではなく(強者にとってはプラスですが)、こちらが望んでも、希望するポジショニングが得られない、こちらもが、競争にさらされ、淘汰されてしまうこともあるということなんだな、と、今週、「学費納付書(=実は進級許可書でもあったという)」をもらったことをきっかけとして、あらためて、納得した次第です。

我が家も、今は、ついていけているわけですが、算数の桁違いのスピード、難易度を見るにつけ、我が家のニーズやキャパからすると、そろそろ、進度が早くなりすぎ始めたと感じます。小学1、2年のときは、「熱心にやってくれてうれしい」と思っていたわけですが、4年生の今すでに、中学レベルの数学が始まっています。

この調子だと、中学では、日本なら、理科系の高校生でないとやらないような内容が出てくる雰囲気。多くの中国人の親御さんが、「今の中国は、やりすぎ」と、お子さんに、海外の大学への逃亡を望むのも、中国人でも、ついていけない人がたくさん出るから。子供の担任の先生によると、「今、私たちが、4年生でやっていることは、中国でも、前は、中学でやっていた」そうで、、、

我が家も、当然、今の学校での中学進学は考えていません。教育のゴールは、数学だけではないので、そっちの能力は、それほど伸びシロが高くなさそうなことももうわかってしまったし、その年齢になったら、思考の深みとか、論理的な能力とか、基礎学力に基づいて、何をするかという、「中国式教育の苦手な分野」に目標を移したいと思っています。

「オプション多様化」「個性の尊重」「グローバル競争」時代においては、自分で選んだ学校で子供が落ちこぼれたら、それは、小学生の段階であってすらも、学校の責任でもなんでもなく、むしろ、そもそも、子供にふさわしい学校選びをせず、あるいは、子供の成長を適切にサポートし切れなかった親のせいなのでしょう。

子供の学力、それも、強みや弱点を細かく見て、その上で、親の経済力、家庭で、どんなことなら、どれだけサポートできるかといったあらゆるリソースを計上した上で、各家庭が、自己防衛として、細かく考え、子供にとっての「国内外社会の中における”自分”という立ち位置」を戦略化して、、、新時代の教育観は、突き詰めれば、こんなものなんでしょうか。。。

こういう現実が「よい」かどうかは、わかりません。

都市部では、強者にとっては、選択肢が豊富な中国の教育現場ではありますが、農村は別と聞いていますし、また、障害、ハンディキャップがあるお子さんにとっての環境は、特に人権先進国ともいえない日本に比べても、格段に劣っていると感じます。

しかし、他のアジアの新興国においては、子供たちは、小さいときから、「自分は自分、人は人」という茨の道が当然であり、最終的には、自分が選んだ道において、「トップ○○パーセント」(1でしょうか、5でしょうか?普通に食うだけなら、20でもOK?)となった者だけが、世界競争の場に躍り出ていける、そういう構図になっているのだという事実自体は、「横並び」「総中流」教育で育った親世代の日本人にとっても、知っておいて損はないのかもしれません。


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