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複数投資技を身につけない小規模不動産オーナーの将来は暗い?

対米不動産投資家中山道子です。

最近の米国不動産は、世の中の多くが、依然、不況感をぬぐえないのに、高値高値で、大変です。そんな中、「今後、小口の個人レベルの投資家が、ローンを付けて、物件を購入し、リターンを確実に得ていく」「ローンを返済し、リタイヤに備える」というモデル自体が、全天候、常に有効なのかを、「これから投資家となることを希望されている方々」には、考えてみていただきたいと思います。

ただ、今日は、雑駁な印象論で、具体的な個々の市場では、「こうなっています」というほどの精度の高い話ではありません。ご自身の投資(希望)エリアでの印象とつき合わせてみてください。

「自分のエリアはこうだよ」などのご感想なども、伺えればうれしいです。

最近の不動産投資の動向を見ていると、大口投資家、銀行、これまでは、不動産管理なんて見向きもしなかったような上場企業やヘッジファンドまで、大量の資金を持って、不動産経営に乗り出したりしているので、小口の投資家には、つくづく、アゲインストが続いているような気がします。


戦略には、長期保有戦略と、短期保有戦略があります。短期だと、儲かる場合には、キャピタルゲイン税率が大変高くなりますし、そもそも、遠隔からは、難しいです。

長期保有戦略の場合の目的は、資産となることを期待しての物件買い、減価償却を取ることか、高キャッシュフロー戦略のいずれかでしょうか。それぞれを見ていきましょう。

■ 資産形成期待

米国では、ローンの金利は結構高く、他方、いいエリアの物件のリターンは、それほど高くないので、長期安定する良好そうなエリアで物件を買う場合、ローンを組むと、ほとんどキャッシュフローしません。

なので、こうした賃貸経営が安定する物件の場合は、修理代は、ハナからすべて持ち出しするくらいの覚悟がないと、期待を裏切られるかもしれません。テナントが3年5年住んでくれれば、その間、ほとんど修理代が必要ないということも起こりますが、基本、何かあれば、マイナスリターンになるという感じです。最終的にそれがペイオフするかは、やってみないとわかりません。

売却時期も問題になりますね。

私の顧客様で、私がお世話した金利のみ支払いの好条件ローンで、サンフランシスコで物件を買い、見事、値上がりした方がおいででしたが、早めに売ってしまい、「もっと持っていれば、もっとあがった」状態で終わった方がおいででした。このケースは、60万ドルの物件が、80万ドルになりましたが、経費を考えると、リターンは、たいしたことがなかったのです。

やはり、6年前に、キャッシュで、サンフランシスコのマンションが購入できるランクの投資家様からご相談を受けたこともありますが、その方は、ローン申請が通ったところで、現地視察の結果、「高すぎて、怖くて買えない」とお決めになりました。その方が、当時、普通預金口座においてあった多額の遊休金のうちから、2,000万くらいを投入して、7割融資を取り、7,000万のマンションを買っていれば、今、為替差もありますから、物件は、1億5,000万円以上になっていたはず。若くてすごく余裕がある方でしたので、結構長期に持っていてもおかしくない買い物が出来ただろうと、今になれば思います。

何を買って、どこまで持っていれば、どれだけ上がるか。対策がわかれば、誰も苦労しません。

■ 減価償却期待

日本ベースの方が、税制の差を使って、減価償却を取る戦略の場合、税金対策として、ポートフォリオを運用することになり、実際の投資最適化(例えば市場の動向や物件の状態)との整合性が難しいという問題があります。

そもそも、大量の減価償却を取ることで、課税ベースが低くなっているため、物件が値上がりすると、売却時は、やはり多少の税金は払います。為替問題も入るわけですし、「アメリカとは関係ない生活の方が、日本での節税対策としてだけ行う」のは、大変。

節税対策というのは、高額所得者が行うことであり、こうした立場の方は、結構な確率で忙しいので、仕事を離れた後、こういうことを綿密にするのが苦手な方々にもお目にかかることがあります。不動産業者の過剰営業を受けて、「わかったわかった、それなら任せるからうまく取り計らってくれよ」といったメンタルでは、ミッション遂行は、難しい可能性があります。

また、これを毎回やることで、長期にわたる節税効果を追求したら、毎回うまく切り抜ける確率は、統計的に、下がっていくでしょう。

■ 高キャッシュフロー戦略

高キャッシュフロー戦略は、物件の資産性は、それほどの向上を見込まず、しかし、家賃で回収するモデル。

この戦略は、日本であれば、金利1%でアパートやマンション一棟を経営すれば、高キャッシュフローが安定することがある反面、米国では、金利が高く、また、そもそも、一棟物は、商業ローンとなり、融資が格段に難しくなります。

そのため、この戦略を、米国で成功させるためには、多くの場合、一戸建てや、最大4室までの物件で行うことが必要になるのですが、基本、この戦略では、通常、「ダメダメエリア」で、低所得者層向けのビジネスをする覚悟が必要になりがち。

大恐慌前後以降、賃借人として、この層は、増えるばかりなのですが、賃貸を安定させるのが難しいのがチャレンジなのです。

低所得者層向けの賃貸用の物件というのは、あまりコストをかけると、回収時期が遅くなるのですが、最近、この領域にまで、資本力豊富な大型投資家、機関投資家、大手不動産会社などが数多く登場してきており、「高品質過剰供給」「限られた良質な賃借人層の奪い合い」競争の様相を呈し始めています。

私の現地パートナーで、こういう経営で儲かっている人はいますが、管理会社を信用せず、すべて、自分でやっています。


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以上、いくつかのホールディング戦略の問題点をリストアップしておきました。

若いとき、資産家なら良いでしょうが、例えば、50台後半になって、「後10年でリタイヤが迫っている」時に、リタイヤ資金を作るために、こういうことに新規着手するというのは、今の米国市場では、危険な可能性があります。

米国の魅力は、「人口が増加する唯一の先進国」であるということなのですが、肝心の増加する人口のプロフィールを研究すると、”人口増加は、主として、米国生まれのヒスパニック系マイノリティ”から生じることがわかっています。

この層は、これまでのところ、アジア人、白人に比べ、黒人に準じて、社会経済的な地位が弱いので、「賃貸需要自体はどんどん増加しているものの、プロフィールが弱い層が中心」ということになりかねないわけです。

ホールディング戦略のマイナス・ポテンシャルばかりを書いてしまいましたが、本当に、今は、大物投資家、機関投資家の資金力に圧倒されている気がします。今、新築アパートの着工のほうは順調で、余裕がある賃借人ならば、老朽木造アパートより、大型でジムも完備しているようなコンドミニアム的な要素のある居宅を求めてくるのです。

小資本で成功する確率が高いのは、超人的にがんばる現場のフルタイム派かもしれません。

そんな中、遠隔投資家は、今後、ますます、頭脳プレイが要求されています。

まずは、頭ひとつ飛びぬける資本力を作ること、それから、「不動産」、「物件を買うことだけ」にこだわらず、いろいろな投資技に習熟していきましょう。今後、遠隔投資家にとっても、「物件を買うプレイ」が戻ってこないとも限りませんが、今は、警戒が必要です。


参考記事例
NYT More Americans are Renting, and Paying More, as Home Ownership Falls


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