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72の法則とは? あなたは、”マシュマロ・テスト”に合格できますか?

対米不動産投資家の中山道子です。

「72の法則」とは何か。このサイトは、不動産に興味がある方が来訪されるので、不動産関係者の場合は、知らないという方も、おいでかもしれません。

これは、「72を、金利で割ると、元本がいつ二倍になるかがわかる」という”マジック・ルール。”

例えば、私のご案内している短期融資案件は、金利は、通常、年率12パーセント前後。72を12で割ると、6年で、

《元本10万ドルが、非課税で、6年間年率12パーセントで運用できると、2倍に増える》

ことがわかります。日本や米国在住の方は、納税義務がありますが、私の顧客様で、居住国によって、納税義務がまったくない方々もおいでですので、このシナリオは別段非現実的なものではありません。

ただ、一般には、このような高率のリターンは、難しいわけで、ここで、少し土俵を変え、米国の株式市場のインデックス指標を前提にすると、歴史的には、7パーセント前後が、目標でしょうか。

そうすると、401kのような税金繰り延べ口座で運用が出来れば、市場のあり方によっては、

72÷7=10年強

で、元本を倍にすることが目標になります。

しかし、このようなリターンは、決まったものではなく、歴史的に見ると、数十年単位にわたって、こうだという話であって、確実なものではないわけですね。

また、米国ではそうした数字が出ていますが、日本の場合、年金運用なんかは、目標を3、4パーセント台(「賃金上昇率プラス1.7パーセント」)といった数字においています。4パーセントでは、免税でも、元本が倍になるのに、18年もかかりますが、それでも、年金や資金運用関係の日本の専門家は、「そんなよい成績は、無理だ」と思っているようです。

このように、真剣な資産形成には、時間がかかります。投資の効果(可能なら税金を繰り延べして)は、10年単位、20年単位で見ていってはじめて、大きなリターンをもたらしうるのです。

この72の法則を考えるとき、同時にこの法則から学ぶことが必要なのが、忍耐、つまり、「長期展望」。

私のブログにご来訪くださる方の65パーセントが、20台、30台ですが、私も50前になり、最近、ようやく気がついたことがあります。

それが何かというと、世の中には、「長期展望が若いときから出来る」方とそうでない方がいるのみならず、高齢になっても、長期展望が身につかない方というのがいるのです。

私自身、この72の法則のことを知ったのは、投資家を志望し始めてだったと思いますが、学んだときは、「先の話すぎて、どういう意味があるかわからない」くらいにしか思ってなかったことを、覚えています。

他方、今の私は、先のことを10年単位で考えることが当たり前になりました。

つまり、考えてみると、私自身、20台、30台は、短期的なものの考え方しかできなかったわけで、私の場合は、本当に、この「長期的な視野」というのは、つまりは、いい加減年をとって、この10年、15年くらいの間にようやく身につけることができた知恵なのです。

同時に、周囲の「それなりの年齢のオトナ」たちを見ると、結構な確率で、依然、「短期的視野のみ」の方がたくさんおいでであることにも、気がつかざるを得ません。

他方では、世帯の資産形成に関する最近の議論で、なるほどなと思ったのが、「今の社会は、高齢化のため、昔は、20台ではじめられていた子育てが、遅くなり、そのため、子供の教育対策と老後対策をしなければ行けない時期が、50台に一度に来てしまう」、というライフプランニング上の指摘。老親の介護も同じ時期に始まります。

この結果、何が起こるかというと、どんなに遅くとも、40歳くらいまでには、長期的な視野感を持つことが出来るようにならなければ、怒涛の50台や、その後の老齢期を、無事に、乗り切れなくなるかもしれないわけです。

中・長期的視野を持ってはじめて、中・長期的に社会統計がどのような将来を予測しているのかを知ろうという気も起こるというもの。

「高齢者の貧困率9割」時代へ 老後は誰しも転落の淵を歩く

「現役世代だけが支える社会保障制度は、見直すべきだ」 森田朗・社会保障・人口問題研究所所長に聞く

20年後には、「空恐ろしい現実」が日本を襲うかもしれません。そのときに備えようとする方と、何とかなるさ、そのとき考えよう、と思われる方がおいでなわけですね。


ということで、今日の記事のトピックは、地味ですが、投資家にとっての長期的視野の意味について。

実は、この「長期展望を持つ能力」というのは、子供のときから、差が出るものらしいのです。

それは、「マシュマロ・テスト」と呼ばれる有名な実験でわかっています。要は簡単で、いわば、delayed/ deferred gratification(欲望実現を先に延ばすことができる能力) のものさしなのです。

幼児に、マシュマロを見せて、「今欲しければ、ひとつあげる。しばらく待てれば、2つあげるよ」といいます。(マシュマロでなく、何でもよいのです。)

そうすると、なんと、4歳といった幼児のときに、マシュマロをその場で食べることが我慢できる子供(大体、3割くらい)というのは、その後、トラッキングすると、大学進学テストの成績も、そうでない子供の群より、ずっと高く、しかも、その能力は、最終的な成人になってからの社会的な成功にまでも、統計上、大きな関係を持っていることがわかったというのです。

日本語WIKIに概要が説明されていますのでリンクをご参照ください。

マシュマロ実験

このように、長期的視野というのは、4歳の段階ですでに、人口の3割程度に、ある程度、備わっているらしいのです。

「それ以外の私たち」も、心配しなくても、発達学的にいうと、その後、通常、8歳から13歳のうちに、抽象思考ができるようになり、そのことで、こういった考え方を身につけることができるようになるそうです。

「どうして、幼児が、マシュマロを、今、食べることを我慢すること」が、10年、20年後、あるいは、成人生活を通して、学力や社会的成功に、これほどまでに密接に関連するのかといわれれば、すべては、「将来、より大きな成果を出すために、今の行動をコントロールする」能力が、どれくらい成熟しているか、という、人生に対する根本姿勢にかかわっているからなのではないかと思わせられます。まさに、”コツコツ”の積み重ねである教育や蓄財の成功に親和性が高い特徴なんですよね。

そう考えると、大人になっても、「マシュマロ」(今、欲望をそそるもの)は、たくさん、転がっています。そして、大人にとってのマシュマロ・テストの成績表は、ずばり、私たちの消費行動とそれの帰結である家計簿。

ある人にとっては、”マシュマロ”は、”高級新車”であるかもしれませんし、別の人にとっては、”毎年の観光旅行”であるかもしれません。

統計を見ると、「年収1,200万以上」ある層であっても、11パーセントが、貯金ゼロだそうですが、

年収1000万円超なのに貯金がない人の悪習慣 世帯収入が高くても「幸せ」とは限らない

この層の問題点は、明らかに、「自分にとってのマシュマロ・テスト」に合格できていないことでしょう。

他方、年収がそこまで高くなくて、子供の教育に、それほどのお金がかけられなかったとしても、親子で、普段から、「”自分にとってのマシュマロ”を我慢する訓練」をしていくだけで、子供にとって、また、自分にとっても、10年、20年単位で見ると、おいおい、大きな教育的効果、社会的成功を手にすることが出来るようになるかもしれません。

子供の「欲しいよ」にすぐ応えてしまうと、よい結果をもたらさないと指摘されている理由も、結局、これなんですね。資産家や、親が忙しい家庭で、気をつけなければいけない家庭内習慣でしょう。

若い頃の私のように、「72の法則」を知って、「なんだ、そんな先の話じゃ、しょうがないよ。そんなことより、なんか、《今、すぐ、儲かる》という話はないのかい?」と思った方は、本格的な投資家思考がまだ、身についていないのかもしれません。


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