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不動産投資の長期シナリオ分析とは? 空室対策編

対米不動産投資家の中山道子です。

突然ですが、金融関係の用語には、シナリオ分析(scenario analysis)という言葉があるそうです。

単純化してしまうと、投資のリターンを、いくつかのシナリオに基づき、

> 楽観的
> 中庸
> 悲観的

といった目論見に基づき、いくつかの将来予測を、シナリオ別にしていくことのようです。

今、100万を投資すると、20年後に、その100万は、どういうリターンをもたらすか。

将来予測なんかでも、こういう手法が使われることがあるようで、過去のブログ記事で取り上げた日経連シンクタンク、21世紀政策研究所の《グローバルJAPAN ― 2050年 シミュレーションと総合戦略 ―》においても、複数の将来シナリオが提示されたりしていました。

それによると、

基本シナリオ1
基本シナリオ2
悲観シナリオ
労働力率改善シナリオ

といったいくつものシナリオに基づく将来予測が提示されています。


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政策を巻き込んで、「うまくいけば、こうなるかもしれないけれど、失敗すると、こうなってしまう。危機感を持とうよ」といった提言をする必要があるからでしょう。

最悪、2050年には、GDPトップ3どころか、トップ4の地位(中国、米国、インド、日本というシナリオ)からも転がり落ちてしまうかもしれない、、、

最悪シナリオの微妙さもそうですが、「労働力率が改善した最高シナリオ」が実現したとしても、基本シナリオと比べて、成果は大して変わらないことのほうが、さびしいですね、、、苦

《グローバルJAPAN ― 2050年 シミュレーションと総合戦略 ―》

脱線しましたが、ここで、私たち個人投資家にとってのレベルに話を戻すと、同様に、不動産投資についても、「ベストシナリオ」「普通コース」「悲観的コース」「失敗コース」くらいの4つのシナリオを検討することには、投資前のシミュレーションとして、それなりの意味があるかもしれません。

何が、ベストで、何が失敗かといわれても、状況によりますが、一番、複数シナリオのパターン分析が必要なのが、空室管理問題かもしれません。

管理業者さんのように、現場のかたに相談してみても、こういう場合に、空室を統計的に考える習慣が無いこともあります。

そこで、まったく現地に知識が無い場合でも、こんな考えかたを採用してみてはいかがでしょうか。


> 米国では、テナントは、1年契約。相当な「悪いシナリオ」ですが、テナントが、毎年、退去するケースを数字で表現してみると、どうなるでしょうか?

☆ ちなみに、一度テナントが退去すると、最悪、「清掃やごみ廃棄、ペンキ塗り替え、カーペット張替え(フローリングの磨きなおし)の3点セット」が必要になりえます。この費用については、別途検討するとしますが、ここは、最悪を考えるところですので、2,000SQFT以下のサイズの物件については、最大、5,000ドルがかかる可能性を覚悟するべきかもしれません。

退去、こうしたリフォームを終え、物件の写真をアップしなおしに最大1ヶ月かかるとしましょう。次に、空室告知に対する反応に基づき、内見案内の時期が1ヶ月あるとします。テナントの書類が提出され、審査をして、OKとなれば、テナントは、入居になりますが、この3つ目のステップに、さらに1ヶ月がかかるとしたら?

普通の空室対策には、3ヶ月が必要かもしれません。

また、秋口から冬の空室対策には、これに、さらに1ヶ月をプラスすることを覚悟することも必要かも、、、

そう考えると、一度、空室になると、3ヶ月から4ヶ月の無収入期間が生じるわけで、毎年、退去されてしまうと、

3ヶ月÷15ヶ月=20パーセント

なんと、無収入期間は、全期間の2割となってしまいます。

☆ 細かいことを言い出すと、米国では、通常、業者さんの客付けの礼金は、1ヶ月ですが、これは、大家さんが出しますので、入室時には、2ヶ月(敷金と一ヶ月目)をもらいますが、すぐに1か月目の家賃分は、業者さんに払わないといけません。


これに対し、中庸ケースは、どんなものでしょうか? 

2年に1度、または、3年に1度の空室でしょうか?私自身、賃貸生活を長く経験していますが、振り返ってみると、2年くらいの賃貸期間が多かった気がします。また、都合で、2年目は、告知をして、1年の途中での退去となったりといったことも、よくしていますね。

というわけで、「中庸」に、どちらを採用するかで、数字が変わりますが、2年に1度なら、空室率は、

3ヶ月÷(12ヶ月×2+3ヶ月)=11.11パーセント

3年に1度なら、

3ヶ月÷(12ヶ月×3+3ヶ月)=7.69パーセント

となります。


ベストシナリオは、5年に1度の退出でしょうか?

私の大家業生活の中で経験したもっとも期間の長かったテナントさんは、6年居住してくれましたが、そのご夫婦は、後半、職を失い、滞納がちになりました。結局、最後には、数ヶ月の滞納分を未払いの状況で、私の促しに対し、鍵を置いて、家をきれいにして出て行ってくれました。(きれいとはいっても、何年も居住していたため、まさに、ペンキ塗り替えやカーペット敷き換えやらで、5,000ドルのリフォーム代をかけ、次の人には、4ヶ月目に入居してもらえました。)

3ヶ月÷(12ヶ月×5+3ヶ月)=4.76パーセント


☆ 空室の計算方法については、特にリサーチせずに勝手にやってしまいましたが、たとえば、5年間60ヶ月のうちで、毎年の退出、2年ごとの退出、3年ごとの退出、5年ごとの退出を計算すれば、上の数字とは違いますし、これを、10年という単位で見れば、数字は、さらに異なりますね。とりあえず、計算方法については、私の方法は、ランダムなものですので、皆様のほうで、もっと合理的な考えがあれば、そちらをお使いください。


私自身の実感では、テナントさんの経済状況がよければ、案外簡単に、「家を買った」といって出て行きますし、家計が厳しければ、取立ての問題が生じてきます。

日本では、一戸建て賃貸経営なんかに着手すると、リターン率自体は低めに見えますが、居住期間が長くなるので、安定するといって、一部には人気ですね。米国の場合は、一戸建てであっても、数年以上を期待するのはなかなか難しいというのが私の実感ですが、これは、エリアや物件、環境により、異なるかもしれません。

マンハッタンの人気エリアだったら、退去が決まったら、内見なんかなしで、次の人と契約をしてしまい、すぐに入れ替わりさせるといった神業も、可能なんだそうです。

いずれにせよ、このように、不動産についても、最低、空室予測については、上のように、「いくつかのシナリオ」を想定し、ある程度、堅実な計算も視野に入れておくことには、大いに意味があると思うのです。

私の経験では、管理会社さんに聞くと、「当社の空室率は、5パーセントです」といった回答が一般的ですが、第一には、管理ポートフォリオ内の物件は、さまざまですから、それが、自分の物件に該当するとは限らない上、第二に、この数字には、いわゆる「サバイバーシップ・バイアス(survivorship bias)」が関係している場合もあるでしょう。

サバイバーシップ・バイアスというのは、株式やファイナンスのほうでよく聴く言葉のようですが、不動産投資についても、知っているとメリットがあるコンセプトかもしれません。

長くなりましたので、それについては、項を改めることにします。

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