中間層居住エリアが、減っていく!
日本でも、「ミドルクラス(中間層)没落」が喧伝されるようになっていますが、米国では、統計が、より大規模に出てきています。
今、アッパー層が居住するエリアと、ロウアー層が居住するエリアとが、それぞれ、拡大しており、中間層が居住するエリアというものが、少なくなっています。
これまでにも、何度も述べていますが、マイクロ投資家としては、ロウアー層を対象とした賃貸案件への投資は、相当難しくなったと認識するべきかと思います。
つい先ごろ、NYTは、有名ジャーナリスト、THOMAS EDSALLの手による以下の署名記事を掲載しました。
テーマは、所得格差が、ライフスタイル、居住地自体の格差へと、限りなく近づいているというトレンドについて。
昔も、お金持ちとそうでない層は存在しました。
しかし、昔は、
<お金持ちだけが住むエリア>
<貧困層だけが住むエリア>
という棲み分けはそれほど、歴然としていなかった、しかし、今は、その二極化が、どんどん進行している、、、という話です。
援用されている論文紹介内容からすると、
まず、富裕エリアと貧困エリアを定義
貧困エリアは、エリアの世帯中央値が、、「該当都市の世帯中央値の67パーセント以下」
富裕エリアは、エリアの世帯中央値が、「該当都市全体の世帯中央値の1.5倍以上」
つまり、A市の世帯中央値が、6万ドルだったら、A市内の郵便番号ごとに、世帯中央値をより細かく見ていくことで、A市内の各郵便番号エリアを、富裕、貧困、中間に分けられるわけです。
それに基づき、人口の動きを見ると、
1970年の段階で、富裕エリアに住んでいた世帯数は、17パーセントだったのが、2012年段階では、30パーセントに。
貧困エリアについても、1970年には、居住世帯数は、19パーセントだったのが、現在、やはり、30パーセントへと、大幅上昇。
中間層が割を食い、65パーセントだったのが、41パーセントになっているのです。
少しわかりにくいですが、架空例として、A市に、
1970年には、60万世帯の人口が居住し、世帯所得中央値が、4万5,000ドルだったとします。A市の郵便番号ごとに見ていくと、4万5,000ドル×1.5倍の6万7,500ドル以上の所得が中央値であるようなエリアには、60万世帯のうちの17パーセントが居住、それに対し、4万5,000ドルの67パーセント以下、世帯所得中央値が、3万150ドル以下のエリアに住む層は、60万世帯のうちの、19パーセントである11万4,000世帯が居住していました。
それに対し、2012年の段階で、A市においては、人口も増えて、100万世帯の人口が居住し、世帯所得中央値が、6万ドルになったとすると、2012年段階では、100万世帯のうち、なんと、30万世帯が、富裕エリアに居住し、また、30万世帯が、貧困エリアに居住していることになったわけです。
世帯数は、増えていますが、中間世帯数の絶対数は、38万4,000世帯(1970年)から、41万世帯(2012年)にしか増えていません。増えたのは、富裕層エリアに居住する層(大体、富裕層と見ていいわけです)と貧困エリアに居住する層(これも、大多数は、貧困層と判断してよいでしょう)だけなわけです。
富裕エリアに居住する層は、10万2,000世帯から、30万世帯と、3倍です。
もちろん、全員が、世帯中央値にあるわけではなく、富裕層の場合、アッパーが飛びぬけていますので、この30万世帯は、「真の1パーセンター」と、単なる「富裕志向層」と(よりよい学区を求め、無理をして富裕エリアに居住している層)に分かれている可能性も高そうです。
今の世相からすると、「そんなものだろう」と感じるかたも多いかもしれませんが、ここは、歴史的なコンテクストが、重要です。
アトランティック誌に去年紹介されていた別の調査によると、
The Resurrection of America's Slums
1990年から2000年にかけては、経済成長ということもあって、貧困エリアに住む人の比率は、実は、25パーセント、減っていたということです。
細かく言うと、別の研究なので、「貧困」の定義は違います。ふたつめの研究では、「貧困地区」の定義は、米国国勢調査上、そこに居住する世帯のうちの4割以上が、連邦の定義する「貧困ライン」以下の水準にあること、とされています。
二つ目の研究を勘案すると、歴史的傾向として、
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1990年から2000年までは、大雑把に言って、貧困層の地位向上は、相当進んでいたと思われる節がある反面、
2000年から2013年までに、このようにして、720万世帯まで縮小していた貧困エリア居住世帯は、実に、1,380万世帯まで、ほぼ、倍増するにいたりました。
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大恐慌の結果、貧困層と富裕層が大体二倍になって、中間層が、半分になったということの不動産投資家にとっての帰結は、ビッグデータだけからは、断言はできませんが、ここから、想像力をたくましくしてみると、明暗は、こんな風に、分かれてしまっていたということなのかもしれません。
「2000年以降、中間層エリアと思って投資をしていたら、そのエリアは、貧困エリアへと転落した」
「2000年以降、中間層エリアに投資をしていたら、そのエリアは、富裕エリア化した」
比率的には、中間エリアにおいて、大雑把に言って、2割が、上昇の波(GENTRIFICATION?)に乗り、2割が、スラム化し、残り4割は、上にも下にもいかず、、、?
この波は、政策介入がない限りは、変わらないでしょう。
今後、中間層、特に貧困層向けの賃貸経営のリスクというものには、さらに気をつけて進む必要があります。
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