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どんどん広くなって行く自宅が中産階級の罠とは?

米国不動産投資家の中山道子です。

知り合いがSNSに投稿した記事で読みましたが、ビル・ゲイツやイーロン・マスクは、読書に大変多くの時間を費やすそうです。スティーブン・キングは、彼の成功は、読書癖に由来すると自負しているんだとか。

紹介されていた記事は、こちらでした。

Reading books is a major key to success. Here’s how you make it a habit

考えてみれば、子供の頃の私は読書家で毎日1冊本を読んでいました。父の仕事の関係で、いろいろな国で教育を受け、日本語と英語を行き来しましたが、学校で問題が生じなかったのは、たしかにその御蔭だと思います。北米居住の今、生活の中で最もメリットがあると感じるのは、ずばり、図書館です。昔と違い、アジアが進んでいるので、比べると、不便なことほうが多く、逆に、それくらいしかメリットが思いつきませんが。

さて、今日のトピックは、そんな最近の読書の成果?で、「なぜ、米国の中産階級の生活は苦しくなるばかりなのか」について。

米国統計局の統計を見ると、市場に出ている物件のサイズは、どんどん大きくなるばかり。その事自体は、皆様、想像がつくかと思います。

データを見てみましょう。

1973年の新築一戸建て物件サイズ:

中央値は、1,525SQFT
平均値は、1,660SQFT

2010年次、新築一戸建て物件サイズは、実に

中央値 2,169SQFT
平均値 2,392SQFT

データはこちらから

大きな違いですが、生活水準が上がっているのですから、この数字だけを見ても、「そうか。まあアメリカは広いからな」以上には、なんとも思いませんよね。日本だって、東京こそ狭いですが、富山県なら、最近の平均は、151平方メートルなんだそうです。(平方フィート換算すると1,625SQFT)

データはこちら。

しかし、興味深いのは、経済学的観点から所得を加味してこのトレンドを位置づけ直す作業。

1973年次の世帯所得額を100%と設定し、歴史的な推移を追うと、実は、2010年次の所得は、1973年時から、20%も上昇していないのです。

こちらのグラフ御覧ください。


そこで、広さではなく、不動産の流通価格で見ると、

1973年次 中古物件流通価格

中央値  3万2,500ドル
平均値  3万5,500ドル

2010年次 中古物件流通価格

中央値 22万1,800ドル
平均値 27万2,900ドル


データはこちら。


すごく値上がりした気がしますが、実は、この後者のデータは、インフレを加味していない数字なので、インフレを計算に入れたデータを見る必要があります。正確に1973年と2010年を比較する数字をぱっと見つけることができなかったので、アバウトですが、以下の表を使うと、

データはこちら

1970年次の物件価格が、2000年次の貨幣価値上、65,300ドル。それに対し、2000年次の物件価格は119,600ドル。ここから、2010年には、物件価格は、1973年次から比べ、約二倍になったのではないかと想像します。


つまり、1973年から2010年までの間に


> 物件の広さは、4割増し
> 物件価格は二倍
> しかし、所得は、2割も伸びていない

というイメージです。こう考え直すと、ちょっと軽くショック。。。どうしてこのデータがショックに感じるかというと、、、

一昔前の経済学の理論によると、支出や貯蓄の動向は、所得の動向に直接リンクしているはずだそうなのですが(ミルトン・フリードマン)、実際には、このような重要なところで、所得を大きく上回るペースで消費拡大活動が大々的に行われているということが、危機を引き起こしうるわけです。(ここで不動産購入が「消費」か「資産」かという論争については、最後に言及します。)

また、貯蓄率も、大きなトレンドとしては、どんどん下がっていて、70年台初頭には、10%以上でしたが、今、5%程度です。

データはこちらから。


経済学者ロバート・フランクらによると、こういうことが起きるのは、人間の支出が、「自分の所得はこれこれだから」といった絶対的な基準に基づいて行われるのではなく、他者、特に直近の上のランクの人の動向に引きずられるところがあるからだと言っています。

金持ちが大きな家を新築すれば、その最新のスタンダードが、いわば、下方にも流れ、自分も、「収入に見合った家」や「家族の人数に必要な家」ではなく、より広い家が幸福の基準になっていくんだそうです。この間、金持ちは「もっと金持ち」になっていますから、「もっと立派な家」を立てるのは、別段問題ではありません。しかし、中間層は、所得が増えないのに、「引きずられ消費」が止まらないということが大問題になるわけです。

彼は、これを、CASCADING EXPENDITURESと名付けています。滝のように流れて下流に行く支出動向といったイメージなんでしょうか。

論文はこちらから。


この間、世帯サイズ自体も小さくなって、1973年には3人だったのが、最近は、2.59人程度。それなのに、逆にこれほどのスペースが必要になっているというのは、確かに、ニーズでは、説明がつきません。

近年の米国のアッパークラスでは、結婚式なんか、式場でやるより、自分の家でやるほうが人気になってきているんだそうですが、そういう一生に数回の機会のためのスペースまで確保しているのが本当の上流とすると、アッパーミドルが、「そこまでは行かないけど、自分だって、多少は大きい家を」と思う、そういう相対的な消費志向が、この統計に表れているのだということになりますね。

個人レベルでは、この

keeping up with the Joneses
お隣のジョーンズ家に負けないで体裁を整えたい

というこの気持ち、家計管理上、問題があるのはもちろん、よりマクロ的な観点から考えた場合、よく言われるように、中産階級の資産が、いっぱいいっぱい、より立派な自宅確保に使われてしまっているこの状況が、バブル破裂後、この層の立ち直りを遅らせたという事実を認めざるを得ません。

中産階級の資産の6割は、自宅に投入されていますが、これに対し、アッパー層において、自宅が資産全体にしめる比率は、3割以下なのです。

こちらから。

こう考えると、自宅は、「資産」であるかといわれれば、回答は、「そうかもしれないが、そうだとしたらなおさら、資産ポートフォリオという観点が大切。総資産の半分以上を一つのアセットクラス(自宅。クラス=種類というか、ワンアイテムというか)に投入してしてしまうのは、いかにもまずい」といったところでしょうか。

経済が回復している今も、この層のこのような自宅HEAVYな資産ポートフォリオに特に改善が見られないこと(流動性が低いですから改善のしようがないですね)が、一部の経済学者が、今後の動向を不安視し続けている理由です。

実際には、多くの中間層は、「広い新築」より、「ボロくても狭くても、学区の良い中古」を無理をして選ぶのであって、別段、見栄張り競争や贅沢をしているわけではないというデータもありますが、そちらの「罠」については、これまでに何度か取り上げたことがありますので、そちらに譲ります。

結論だけ言うと、良好な学区のボロな古家は、ずばり、微妙なエリアの新築以上の値段がつきますので、そっちを自宅としても、この中産階級が陥りがちな罠から逃れられるわけではないですね。

「トップ1%」を見習うなら、資産上の配分は、自宅が1割で、「投資不動産と経営するビジネス」の比率が5割です。

中山からのお願いです。
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