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融資案件 焦げ付き例

対米不動産投資家の中山道子です。2009年から、短期の融資案件を手がけるようになっています。

まずは、短期融資投資とは何かということですが、簡単に言うと、「不動産を担保に短期の融資を行う」スタイルの投資です。

普通の不動産投資は、自分が物件を購入し、賃貸、賃料や値上がり益、節税などのリターンを中長期に得ていきすが、このスタイルでは、自分が経営者にならず、不動産投資をしたいか不動産を持っている人の「応援」だけをすることになります。

これに対し、「趣旨はわかりました。とてもいい方法ですね。ところで、失敗はどんなものがありますか?」というご質問は多いです。

基本、対面、セミナーでは、相当オープンにお答えしているご質問ですが、最近起こった例を一つ、ブログでも紹介します。

投資ですから、元本保証ではなく、基本的には、貸し倒れがあったときに、回収する手間が「リスク」とイコールであると見て間違いありません。手間は、コスト、つまり、金銭的価値にも換算されえます。

短期融資投資についてのFAQなどは、細かくは、こちらのサイトも御覧ください。

今回取り上げる案件の投資概要は以下のとおりです。(詳細は簡略化してあります。)


融資額 14万ドル
融資日 2015年10月26日
金利  年率12%目標

条件  月利あり、1年後元本返済

担保  鑑定額23万ドル

トラブル概要

月利を9,000ドル近く払った後、デフォルトとなった。

=== 詳細 ===

融資の担保にと差し出した物件の鑑定額は、当方指定鑑定業者の気持ち硬めの見積もりで、23万ドル。融資希望者の自宅、融資比率は、6割ですから、筋は大変いい話です。

返済表を作成し、順当に開始していたこの案件、1年後に約束通り元本が返済されれば、「期待取り」の案件で終わったはずが、返済期限の2016年10月を迎える前に、「延長」の申し込みがありました。

自宅のつなぎ融資を受ける方は、金利の低い長期の銀行ローンへの切り替えに時間がかかることはよくあるので、これも、基本了承し、返済が2016年10月に開始するはずだったところ、2年目突入の2016年10月に、契約更新が終わった途端、月利が滞りました。

その結果、数ヶ月やり取りしましたが、結局、フォークロージャー手続きを開始することを余儀なくされます。

フォークロージャー(FORECLOSURE)は、法律上、幾つかのプロセスを経なければいけないので、いきなりというわけには行かず、弁護士を雇い、裁判所で競売段取りなどを経由しなければいけません。最後には、自発的に出ていかない場合が多いので、排他的占有権を確保し直すため、名義が変わった後に、普通の不払いテナントの追い出しと同じように、強制退去の訴訟も必要になります。

こうした段取りの一環として、2月に、競売が行われ、名義は、当方投資家様の名義に移行となりました。ただ、わかりにくいのですが、買い戻し期間というものがあり、ここから6ヶ月は、相手が支払いを行い、買い戻しが出来るかどうかを待ってあげなければいけません。なので、この段階では、フルに所有権はなく、また、追い出しをかけることもできないので、向こうは、物件に居住したままです。

普通は、自宅を担保に差し出しておいてここまで進んでしまうケースはまれなのですが、いずれにせよ、この段階になれば、当方の動きは、8月の名義フル移行まで、待つだけです。

ところが、ここで面白いことに、新規の動きが第三者からもたらされました。

なんと、2月の競売後、5月になり、第三者が、「この物件の債権を、買い取りたい」と言ってきたのです。

借り手が、いろいろ各方面に借り換えの相談などした関係で出てきた地元の投資家です。

この地元の投資家も、特にウルトラCがあるわけではなく、当方から債権を購入し、その後、自分で物件を処分し、利益を確定することが目標です。

物件は、2年前の鑑定額が23万ドルでしたので、良い状態で手に入れられれば、今の市場なら、24万ドル前後かもしれません。

そうすると、いろいろな費用を払っても、半年で、数万ドルの利益になりそうです。当方の利益ポテンシャルを、少し譲り受けたいという申し出ですね。自分は地元だから手間を引き受ける、手間が楽になる分、割安で債権を手放しませんか、というわけです。

これを受け、私は、今回の投資家様に、以下のようにご説明をし、ご意向を伺いました。「このオファーを受けられますか、それとも、このまま進められますか?」と。

デフォルト後の進め方は、契約合意が破られた後なので、できることとできないことなどの説明など、当方で御指南し、それを前提に、最終的には投資家様がどう歩を進められたいかという話になります。


==


○○様

今回、焦げ付き、今、買い戻し期間が経由するのを待っているところです。

ここで、最後まで行く場合の標準ルートは以下です。

> 2017年8月に名義を手に入れ
> それから強制退去訴訟を起こし
> 追い出すのに更に3,4ヶ月位
> 最悪、執行官に追い出しと鍵の変更手配を依頼
> 物件を手に入れた後
> 最低、清掃、場合によったら原状回復の修理代を払い
> それから投資家様名義で売りに出し
> 売りに出した後、利益を確定する
> その際には残った手元金は、精算して相手に返す必要はなし

各種支払後、残ったお金はすべて投資家様のものになりますが、反面、この間に、生じる支出、具体的には、弁護士費用、名義変更後の固定資産税や保険、管理費、修理代などすべてを計算に入れると、多分、回収前に、ここから1万ドルといった経費をかけることになります。

その次に、売却にあたっては、仲介手数料と決済手数料があり、前者は、売却価格の6%(☆日本の倍です)、後者は、5,000ドル前後でしょう。

いくら残るでしょうかといわれれば、やってみないとわからないわけですが、「もともとの融資額は14万ドルで、既に利息で9,000ドル近くは回収しているので、それも計算に入れると、期待値としてはもともとの目標である12%を超える確率は高い」とも思います。ただし、回収にどれだけ時間とコストがかかるかが、リターン率を左右することになります。

これに対し、今、この投資家のオファーを受けると、イメージとして、2014年10月以来の融資利息を年率換算して計算すれば、当初の期待値の12%は達成しませんが、10%前後にはなりそうですので、悪い話ではないわけです。

実は、もし、ここで第三者の投資家のオファーを蹴ると、上の流れで回収作業を進めなければいけないほか、別の問題も生じます。

それが、日本居住者様にとっての日本での申告問題。

名義が当方でなく、融資をしているだけなら、申告は、米国にする必要はなく、日本でだけ、雑所得扱いで申告することになります。この際の税率は、高額所得者様の場合は、5割になってしまいますが、控除が多かったり、そこまで高額所得がなければ、それより低いわけです。

他方、名義が一端、投資家様のものになってしまうと、米国でも不動産購入と売却を申告しなければいけないほか、日本では、雑所得ではなく、「取得後すぐ売った」ということになり、短期キャピタルゲイン税(40%)を申告する必要が生じます。二重納税はありませんが、両方の国で申告をし、米国でまず支払いをし、次に、差額を日本で支払います。この際、短期融資だけをしていて、米国で納税者番号をまだ取得されていない方は、納税者番号を取得する必要も生じます。

このように、投資家様のプロフィールによっては、税率が上がってしまうかもしれず、また、そうでなくても、両国で申告することで発生する手間、税理士費用は馬鹿になりません。

クリエイティブなアイディアとして、方針を変え、差し押さえた物件が、長期キャピタルゲイン税の対象となるまで、賃貸に回して減価償却をとる作戦に変更するという対策はありうるかもしれませんが、いずれにせよ、単に1年間融資をするだけという当初の計画と比べると、そもそも、1年で回収できると思っていた資金が何年も寝ることになるわけです。米国居住者であれば、その間、リファイナンスで銀行融資を取り直し、当初の投入資金をほぼキャッシュアウトした後、銀行への返済などは、毎月の家賃からしていくことは可能ですが、2017年のアメリカでは、海外居住の非アメリカ人の場合には、今、ロスやハワイなど、ごく一部のエリアを除き、銀行ローンを取るオプションは、存在しません。

くどいですが、この投資家様のオプションは、下の2つです。

1) 割安のオファーを受け入れ、早めにWALK AWAYする。リターンは期待値より少なくなるが、手間は、それほどかからず、手っ取り早く次の案件に進める方法

2) 最後まで自分で名義をコントロールする。もともとの目標(以上)の回収を追求し、追加費用や暇をかけて、自分で最後まで回収する方法

私たちは、現場では、弁護士、管理会社、仲介会社とフルチームですので、どちらでも、対応可能です。

以上をご説明したところ、この投資家様は、1)で行きますということで、今、その段取りで調整中です。

このCASEでは、実は、この横槍投資家、当方から債権(というか担保物件に対する権利)を買った後、デフォルト中の借り手に、穏便に出ていってもらうために、1万5,000ドルを払う気で話をまとめたそうです。

本来は、1銭も払う必要が無いといえばそうですが、しかし、正式には、上の手続きがあり、相手が居座った挙句、嫌がらせに、中を汚くするなどの故意の破壊行動を取ったとしたら、結局、そういった金額がかかりますので、このKEY FOR MONEY(金を出して穏便に出ていってもらう)は、金融危機後、広く一般化した商慣習となりました。

上に述べたように、当方投資家様が、1万5,000ドルを借り手に払い、穏便に出ていってもらい、そこから売りに出されても、特に問題はありません。その場合、エグジットは、第一のオプションと比べ、半年から1年遅れることを想定すること、また、どういう展開になっていくかの流れは、多少不透明であり、段取りは、PLAY BY PLAY(その場その場で状況に応じて行動し様子を見ていく)になるということですね。

この借り手、これまでのやり取りでわかったことは、あまり計画性がなく、冷静にビジネス上のやり取りをするのが難しいタイプであるということ。交渉のプロセス上、「弁護士に駆け込んで、破産宣告してやる!そうしたら、お前の取り立てはおじゃんになるだろう」などと脅してきました。

このCASEでは、既に競売にかかり、買い戻し期間の経過を待っているだけですので、彼が破産宣告しても、当方投資家様の権利は「おじゃん」にはなりません。しかし、弁護士に確認したところ、「その旨を裁判所に申し立てしないといけないので、そのための手数料は、裁判所の手続きにかかる印紙代を含め、合計で2,000ドル位」ということでした。

破産宣告をするよりは、この借り手も、KEY FOR MONEYで、お金をもらい、WALK AWAYするほうが得なわけですが、金額交渉では、大いに揉めました。理屈上は、5,000ドルでもいいはずなわけですが、こういう最終交渉の場になると、「チェックメイトに持っていくまでは良しとして、最後の一手は、結局負ける側、理性的でない相手方に、ある程度合わせてあげる」ことになりがちだというのがビジネスの教訓というものでしょうか。

今回、このまま今月中にエグジットが段取りできれば、弁護士費用は、2,500ドルですませられる予定です。


=== 


デフォルト時には、私のご紹介案件上、これよりうまくいくケースも、これよりパフォーマンスが下がるケースも過去にはありました。今後も、大方はうまくいき、トラブルとなるケースもそれなりに出続けるだろうと思います。

100%トラブルが生じない高利回り投資などというものは、成立しません。

「すべてのリスクを詳細に説明しなさい」といわれても、「相手がどうでるか」という問題を始めとして、全面的に説明しきれないのがリスクというものですとしかいえませんが、皆様、パッシブ投資家でおいでなので、手間がかかるくらいなら、そこそこで手を打つ、と考えられるケースは多く、特にデフォルトしている相手とコミュニケーションが出来る場合は、当方の法的権利を全面的に最大限に主張するというよりは、まずは状況をこじれさせないことが最優先です。

”最近の一つの取り立て実例”でした。


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