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2008年次の水準を超えた世帯負債額

米国不動産投資家の中山道子です。

最近は、報道で「不況を脱した」という話がますます増えています。これで下半分の世帯年収が増えれば、本当に万々歳なんですが。

ということで、2017年5月17日付けのNYTにも取り上げられた「世帯負債額、10年ぶりに不況前水準を超える!」という、良いニュースか悪いニュースかわからない調査。嗚呼、あの大不況から早10年立ったんですね。。。感慨

NYT報道
Household Debt Makes a Comeback in the U.S.

ニューヨーク連邦準備銀行の調査によると、世帯負債総額は、この度、12.73兆ドルに達し、2008年次の過去最高水準を超えた計算なんだそうです。

ただし、不動産関係者から見ると、住宅ローンを見ると、この総負債額の71%強で、金額に換算するとバブル時の総額に戻ったわけではなく、2003年次、つまりバブル前の最後の平時の水準に戻ったところ。まだまだ、多くのエリアでは、状況は予断を許しません。

なので、不動産について見る限り、一部の「不況なんか関係なかったよー」的なエリア(シリコンバレーとかサンフランシスコなんかですね)以外に関しては、実際には、「失われた十数年」、2003年時の水準にようやく戻り、そこから成長して行くといいな、という感じになっています。

それでは、不動産ローンがまだ過去最高ではないのに、負債全体について見るとどうしてこんなに回復したかというと、種明かしは、最近世の中を何かと騒がすようになった「学生ローン」。

学生ローン負債額は、2003年以降、実に3倍に急成長しているのです。

逆に言うと、超成長産業。米国では、今教育産業が医療より成長していますが、こんなところにもつけがまわっているということでしょう。

このグラフを見て思い出したのがこの前目にしたゴールドマン・サックスのある記事。私が読んだのが最近なだけで公開されたのは2015年12月とあります。

あまりのぶっちゃけに笑ってしまいました。使われているデータは、教育費の高騰なんで、イマドキ物珍しくないですが、

What if I Told You …College May not Be Worth it?
大学への投資はリターン効率が悪すぎるとしたら?

というタイトル通り、「何年でコストが回収できるか」「回収できなさそうな大卒者は?」といった”ボトムライン”の計算が記事の内容。

2009年から2015年のスパンで見るだけで、大学進学コストは、10%強上がり、しかし、高卒であろうと大卒であろうと新卒の賃金は、実は同期間中、マイナス成長。大卒は大卒でも、ボトム25%のランキング大学から卒業する大卒者の賃金平均は、なんと高卒者の平均賃金より低いんだそうですから、世の中の悩みの殆どは、統計で解決すると喜ぶべきなのか、「我が子は4年制大学に進学させるべきか」「いい大学に行けなかったらどうしよう」という世の親の悩みへの回答は、こんなに明瞭にでるのかと、苦笑いせずにはいられません。

単なる月報のようなので、どういう手法を用いた調査かはこのレポートでは説明されていませんが、こういうことに関心がある方は、こちらの教育経済研究者の座談会記事でも更にご覧になってください。

Are Too Many Students Going to College?

毎回教育関係のデータ解釈で物議を醸すチャールズ・マレー氏によると、「四年制大学でB以上の成績が取れるのは、IQ的には、せいぜい、人口比トップ15%くらいまでと決まっている、それ以外の人間は他の方法で自分の市場価値を高める事を考えるほうが得」だそうです。テンテンテン、、、

例によって大いに脱線しましたが、実は教育ローンは、破産申し立てをしても、原則、債権消滅できない唯一のローン(例外あり)。

普通の住宅ローンだったら、自宅のローンを破産で「踏み倒し」しても、3年すれば、再度、ローンがとれます。プライムレートではないかもしれませんが、しかし、日本人の常識からすると、相当ゆるいです。ここが、ある意味、アメリカ経済の成長の秘密でもあるのかもしれません。

なので、バブル崩壊から10年も経てば、いわゆるミレニアル世代のみならず、バブル時に住宅ローンをデフォルトして賃貸に戻っていた人たちこそ、どんどん、再度、家を買い直しできるはず。しかし、過去に本当に一度も家を買ったことがない人に学生ローンがある場合もそうですが、過去に破産を経験して立ち直った人も、まだ、破産前の学生ローンだけは残っていることになります。

現在の住宅ローンは、昔よりDEBT RATIO(debt to income ratio, 粗所得から、いくら、負債を返済するのかを比率で示した数字)なんかにキビシイですから、学生ローンの返済で、すでに借金返済額が所得の中で大きな割合を占めていれば、当然、ローンが降りる額は減ります。

個人消費は、米国総経済活動の6割以上を占めている経済の主たる牽引役なのですから、学生ローンが全負債に占める額が、3%から10%になったということの意味は、相当大きいはず。

上のゴールドマン・サックスの分析にならってぶっちゃけ考えてみると、上位校に行って高額所得を得ている人たちは、それなりの学生ローンがあっても、予算総額が大きく、返済はより容易ですので、高学歴者がひしめくZIPCODEエリアでは、住宅価格にとって、これは、それほどの問題になりにくいかもしれません。

それに対し、大学に進学し、しかし、学位を取得できず(4年制大学進学者の実に4割が6年後に卒業できていません)、最低賃金でローン返済に追われているような人たちがひしめくエリアであれば、住宅の価格は、教育ローンの額に引きずり落とされる傾向があることを、最近、実際に不動産関係の仕事に従事する者として、体感(ここは研究を見たとかではなく、実感)します。

これは、市場価格的に、例えば14万9,800ドルまで行けるだろうと設定した物件に、実際、買い手が納得して契約したとしても、銀行融資の最終段階で、「あなたに降りるローンで買える物件価格の予算は14万ドルまで」ということになれば、「後1万ドル負けてくれない限りは買うことができない」といった話になるからです。

マクロに考えても、新卒賃金だけでなく、中産以下の世帯所得は上がっていないのですから、世帯借金総額が2008年次に戻ったからと言って、ここからどんどん、パイ自体が大きく成長していけるということは無いでしょう。これまでは、アメリカンドリームといえば、家の取得で、車のローンやクレジットカードローンが、住宅ローンを組むにあたり、パイの分け前を大きく奪うという認識は、それほどなかったと思いますが、教育産業は、この10年で、住宅業界から消費の分け前を奪うトップ競合業界に急成長したということなんだと思います。

今後の動向、不動産関係者としてのみならず、子を持つ親としても、興味あるところですね。

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