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これから資産形成に着手しなければいけない人へのアドバイス クレジットカード編

対米不動産投資家の中山道子です。

2017年は、みなさまにとってどのような年でしたでしょうか。この記事は、年末スペシャル?ということで、投資より資産形成について、言及してみたいと思います。

最近、日本語の報道で、日本人の現金好きからの脱却を促すニュースをよく見ます。米国の経済学者は、日本での1万円札の廃止を提案しているとかですね。FBのタイムラインでは、今日、こんな記事が紹介されてきました。

現金大国日本に重いコスト ATM維持に年2兆円

日経の記事も、表面的に読み流すと、なんとなく、キャッシュレス促進を促すメッセージが発せられているような気がしませんか。

「日本人は現金決済が好きで、先進諸国の消費スタイルと比べると時代遅れ。その習慣を維持するために2兆円ものコストがかかっている。(今後変えていかないといけない。)」

日本人の現金好きは本当に変えていかないといけないのか。(ちなみにこの記事に限って言うと、銀行業界が、顧客管理のコストをなんとか顧客側に転化し、利益率を上げたいという方向で打ち上げたアドバルーン的な感じですね。)北米事情をよく知る側からコメントしてみたいと思います。

私の考えを結論から言うと、「日本人の現金主義からの脱却」を促す各種の論説は、日本人の個人消費額を増やすために裏から仕掛けられている消費推進キャンペーンの一環じゃないかと思っています。

というのは、米国の調査を見ると、クレジットカードを利用することで、個人は最大2倍もの消費をしてしまうことがあることがわかっているからです。

これは、CREDIT CARD PREMIUMと呼ばれています。

The Most Serious Threat When Using Credit: You

米国では、個人消費がGDPに占める率は7割、日本でも6割になっています。経済成長を進めるためには、個人消費が増えるのが望ましいですが、少子化の中、日本が、今、個人単位の消費を増やすとしたら、クレジットカード率を高めることは大変効率的な経済政策となります。簡単に貯蓄率を低下させ、消費拡大を実現することが出来ることが各種調査からわかっているのですから。

政策的には、これは正しいだろうと私も思います。(政府側が、消費拡大政策としてこの問題を意識的にポジショニングしているだろうと考えるのは邪推で、単にオリンピックとかでペーパーレス社会化したいだけなんだと言われるかもしれませんが、米国側で、日本側にペーパーレスを要求している理由は確実に、こういうことも意識したものだと思いますね。)

しかし、資産形成を目標とするこのブログを読まれている皆様は、「現金決済は時代遅れだから、どんどんクレジットカードへ」といったこうしたキャンペーンに乗せられてはいけません。

上のNYTの記事では、こうした研究を発表した経済学者の個人的な消費行動にも言及があります。

言及されている研究の一つを発表したJoydeep Srivastava先生は、

「研究の成果に関連し、一時、クレジットカードをやめ、その時の消費傾向をトラッキングした。その後、マイレージのためにクレジットカードに戻ったが、デビットカードを使っていたときの消費額をベンチマークにし、クレジットカードの利用額がその時の利用額を超えないようにモニタリングしている」

と科学的。この方法はお薦めですね。

その研究の共同執筆者だったPriya Raghubir先生は、当時、「クレジットカード累積債務者だった」そうです。その後、クレジットカード利用をよりコントロールすることが出来るようになったそう。彼女は、息子さんにクレジットカードの利用についての研究成果を伝授し、息子さんは、「必需品でない購入」を検討している際には、クレジットカードを持たずにお店に行く習慣が身についたとか。

別の研究で有名なDrazen Prelec先生は、「普段はデビットカード、旅行時はクレジットカード」だそうです。

これも、米国では、レンタカーやホテル予約をするためには現金やデビットはNGだったりしますから、仕方ない状況でのみクレジットカードを使う戦略ですね。

PRELEC先生は、一時、クレジットカードのPOINTやマイレージは、「合理的な消費判断にノイズをもたらす可能性がある」と考え、すべて使用せず放棄していたそうです。やはり、クレジットカード絶ちを経験しているわけですね。

このように、「キャッシュレス先進国」の米国でキャッシュレスを研究しているマーケッティングや経済学の先生たちは、クレジットカード利用には、細心の注意を払っています。

同じキャッシュレスでも、デビットカードは、銀行口座からすぐ引き出され、しかも、使用履歴が確認できるため、現金をつかうよりコントロールが効きやすいと考える向きも多く、一般の人向けには、一番オススメと考えられています。デビットカードの弱点として、キャッシュやクレジットカードより、スキミングや窃盗被害の可能性が高い点が指摘される場合はあります。

ところが、現在、日本では、デビットカードの利用は殆どないのに、クレジットカードやプリペイドカードの利用率は上がっているようなのです。

日本の個人消費、現金決済の割合は50%!

同じキャッシュレスでも、デビットカードというオプションがあるのに、日本では、なぜか、そこは利用拡大が求められていません。しかし、わわわれみんなが、クレジットカード化により、消費が(2割から最大倍)増えてしまっている可能性があるとしたら?

例えば、ここに、年間生活費ののうち、ローン返済等はカード引き落としが出来ないとして、300万をカード引き落とししているご家庭があるとします。とても有利なポイントカードを使っていて、2%のキャッシュバックがあるとしたら、毎年、6万も、POINTバックがあります。一見、お得ですよね。使わない手はありません。

しかし、カードを使うことで、消費が2割、膨張するのだと想定したら、実際には、このご家庭は、「カード断捨離」をすれば、カード関連消費を、300万ではなく、240万位に抑えられる可能性があります。6万得したんじゃなくて、54万、無駄に出費しているのかも?

このブログに目を通してくださる方は、多分カードはお持ちでしょう。当然債務はなく、毎月引き落としている方のほうが多いでしょうが、その中で、「これから資産形成をしていきたい」と思っている方は、ぜひ、自分の消費行動において、最近の日本の「アンチ現金キャンペーン/海外はキャッシュレス、日本は遅れている、カードを使い倒してナンボ」といったノイズに流されず、実際の最新リサーチを参考にされてください。

キャッシュレス自体は構いませんが、実は、欧米でも日本で考えられているように、キャッシュレス、イコール、クレジットカードではなく、上の記事を見ると、イギリスなんかはデビットカードのほうがクレジットカードより多く用いられています。

あのウォーレンバフェット氏は、更に徹底しています。

下のビデオを見ると、職場に行く途中で朝食のマクドナルドを購入するのには、デビットカードですらなく、小銭現金!

毎朝、購入アイテムを決め、お釣りなしで現金払いが出来るように、2.61セントとか、正確な小銭を奥さんにもらってから出社するそうです。運転の途中で、2.61セントの朝食でなく、もう少し高い朝食へとメニュー変更がしたくても、無理!3ドル17セントの朝食メニューをオーダーするのは市場が好調なときだけだそうです。

しかし、彼の経営するバークショアハサウエイ社は、クレジットカード会社には大きく投資をしています。

Why Would Buffett's Berkshire Bulk Up on Credit Cards?

クレジットカードを利用する人は消費傾向拡大を止められないことを、彼は、知っているからなんですね。

私自身は、2011年から5年ほど中国に住んでいた時に、意図せずしてクレジットカードが全く使えず、そのことがきっかけで、この問題に開眼しました。

今は、普段は、デビットカード中心で、クレジットカードのPOINTやマイレージもそれほど計算に入れません。(たまたま貯まれば使いますが。)プリペイドカードも嫌いです。現金を出すときの精神的苦痛は、他の決済手段では、体感できません。(笑)

世の中の動向を見て自分の動きを決めるときは、受け身に、あるいは恣意的に行動するのではなく、能動的にリサーチをすることが必要。日本社会の傾向として、投資嫌いと現金好きという2つの特徴が指摘されます。

投資嫌いについては、アメリカ人のように、もっと勉強するべきだと思いますが(アメリカ人も統計を見ると、まだまだ足りないです)、現金好きについては、社会政策としては不都合なのはわかりますが、個人レベルの健全会計を維持するためには、消費行動については、堂々とキープすれば良いと思います。

資産形成をしたければ、所得を増やす、支出を減らす、貯蓄比率を高める、そこから、投資リテラシーを身に着け、税金の知識を得て、投資額を増やしていくという王道以外にはありません。

あのバフェット氏ですら、「カードを使うとお金を使いすぎてしまう傾向がある」という行動経済学の大原則を前提に自分の行動を律しています。「自分は頭がいいから、投資家としてベテランだから、ファイナンシャルリテラシーが高いから、”一般の人と”同じ間違いは起こさない」といった驕りとは無縁の方なのでしょう。

「自分自身というリスク」にも注意を払う、これが、優秀な投資家とそれ以外の人すべてを分かつ大原則。私も若い時から、こういったことをもっと知っていればと悔やまれます。

このブログを読んでくださり、ありがとうございます。皆様も、2018年を良い年とされますように。



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