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Where did the good jobs go? by セス・ゴーディン

中産階級の将来はどうなっていくのか?いい就職先は、どこに行ってしまったのか?

最近の米国の議論を少し紹介してみたいと思います。

これは、不動産投資の細かい小手先の話ではなく、米国社会の向かう先、ビッグ・ピクチャーのお話です。

大家になる人は、ぜひ、where would the good tenants go?(今後、いいテナントは、どうやって探していけばいいのか?) と読み替えて、考えてみてください。

この問題、立場によって、いろいろな共感の仕方ができますよね。

私同様、普通に、子供を一人前にしていかなければいけない親として、考えさせられる、という方も多いと思いますし、経営者・人事畑の方は、「求職者は多いけれど、こちらが欲しい少数精鋭の人材は、なかなか、いないんだよなあ。」と、別の意味で、共感されるかもしれません。

まずは、一昔前に、「バイラル・マーケッティング」で一躍有名になったセス・ゴーディン氏の無料小冊子を、引き続き、ご紹介させてください。

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In 1960, the top ten employers in the U.S. were: GM, AT&T, Ford, GE, U.S. Steel, Sears, A&P, Esso, Bethlehem Steel, and IT&T. Eight of these (not so much Sears and A&P) offered substantial pay and a long-term career to hardworking people who actually made something.

1960年には、米国のトップ雇用主企業は、以下の各社だった。

ジェネラル・モーターズ
ATアンドT 
フォード
ジェネラル・エレクトリック
USスティール
シアーズ (デパート)
AアンドP (スーパーのチェーン)
エッソ
ベスレヘム・スティール
ITアンドT (航空関係)

当時、これらのうち、デパートのシアーズと、スーパーのA&P以外は、製造業が中心で、ペイはそれなりによく、まじめな従業員に対しては、長期雇用を提供していた。

Today, the top ten employers are: Walmart, Kelly Services, IBM, UPS, McDonald’s, Yum (Taco Bell, KFC, et al), Target, Kroger, HP, and The Home Depot. Of these, only two (two!) offer a path similar to the one that the vast majority of major companies offered fifty years ago.

今、トップ・テン雇用企業は、下の通り。

《中山注; こちらは、その年によって変わっていると思います。このPDFが出版されたのは、2012年ですが、いつの統計を使ったかは、引用がありませんでした。》

1 ウオールマート
2 ケリー・サービセズ (人材派遣業)
3 IBM
4 UPS (貨物配送サービス)
5 マクドナルド
6 YUM (KFCなどのファースト・フード・チェーン展開企業)
7 ターゲット (スーパー)
8 クローガー (スーパー)
9 ヒューレット・パッカード
10 ホーム・デポ

これらのうち、同様の長期雇用展望を提供するのは、IBMとHPの二社だけだ。

Where did all the good jobs go?

....

ヤフーの元副社長なども勤めたセス・ゴードン氏、さすが、つかみがうまいです。

日本でも、今、「終身雇用制」どころか、「正社員はもう成立しないか?」といった議論が始まっていますが、米国の状況を後追いしている気がします。ペースが、速まっているかも? 苦笑


上が彼の最新の著作の訳で、「これからの社会に求められる人になる方法を考えるための本」だということですが、冒頭で引用したのは、同じ問題に対する別のアプローチとして、現代教育の課題を掲げたリスト形式のパンフ、《Stop Stealing Dreams》からの一節。

これは無料でダウンロードできるので、よろしければ、ご覧になってみてください。


STOP STEALING DREAMS - What is school good for? by SETH GODIN 2012


無料だけあって、内容は、あまり系統だっていませんが、「学校教育の結果、もともとあった子供たちの個性、創造性が殺されてしまう。ポスト工業化社会の子供たちに、有益な人材になってもらうためには、どうすればいいのか?」というアツイ教育批判論は、まさに、「え?アジアの話ですか?」と思う論調。

日本でもTEDで有名なケン・ロビンソン先生の論調と似ています。面倒な方は、下を見られると、似たようなお話。日本語の字幕つきです。(元ねた?)

日本や中国では、米国の教育が、「創造性を伸ばす」が、自国の教育は、「詰め込みで困る」という公式が成立していますが(よく知りませんが、世界の多くの国で、そういう常識があるのかも?)、実は、米国でも、この根本的な課題を抱えているというのが、昨今の識者の共通の認識。程度の違いは、あるのかもしれませんし、米国では、「上」の人のオプションは、もっと多様な気が、確かにしますが。


じゃあ、どうする?


という回答は、まだ、なさそうです。

ゴーディン氏の上のPDF小冊子に、「トップ50の企業が、みんな、アップルみたいだったら、世の中、どうなると思う?」という挑戦的な?問いかけがあり、思考実験として、「創造性の高い人々によってリードされる付加価値の高い商品が出て景気がよくなるし、みんなハッピーになるはず」とこちらが自動的に思うことを想定した誘導質問なのかなとは思いましたが、いや、ひどい下請けいじめとか聞きますし、そもそも、アップル、それほど雇用してないですからww


今の米国、景気は回復基調のはずなのに、逆に、オバマ大統領率いる連邦政府は、

「最低賃金を連邦レベルであげていかないと!7ドル25ドルの最低賃金を、10ドル10セントにあげよう!」

というキャンペーンを打ち出しています。

私は詳しくありませんが、近代経済理論の基本的な考え方からいくなら、”本来なら、最低賃金を上げすぎてしまうと、需要が減り、つまり、雇用自体が減ってしまうので、できるだけ、政府は人工的に、労働市場に介入するべきではない”となるはず。そのため、連邦レベルでは、共和党は、この政策に対する反対を死守しそうな勢いです。

もちろん、現実には、市場の動きだけに任せるわけに行かないから、福祉や最低賃金法があるわけで、ここで、「そんなことをいったって、最低賃金自体が、設定された時と比べると、その後の物価の値上がりについていっていないじゃないか」という議論をするのが、民主党の役回りだというわけですね。米国の最低賃金は、先進国比で相当低いということで、これは、米国以下の日本も、同じ状況。

つまり、今、ホワイトハウス近辺やリベラル派においては、この最下層、つまり、”バーガー・フリッパーたち”を積極的に保護しないと、底辺層は、救えない、そういう話になっているわけです。

* バーガー・フリッパーとは、文字通り、ハンバーガーを裏表ひっくり返して焼く人。ファースト・フードなどで、働くしかないレベルの未熟練労働者のことを、指します。米国漫画の有名キャラ、スポンジ・ボブは、「バーガー・フリッパー」を自らのアイデンティティとして任じていましたね。

中産階級が強かったアメリカは、今、この層が主力となりつつあり、そのことが、オキュパイ・ウオール・ストリート運動をもたらしました。同時に、トマス・ピケティやOECDの最新の研究成果などにより、「経済発展の恩恵は、最下層には、トリクル・ダウンしない」という、「これまでの近代経済学の理想論」(社会が成長すれば皆が恩恵を受ける)を打ち消す暗い結果が、出てきてしまっているわけで、そのため、「介入しないと、最下層を守れない」ということになったわけですね。

再度言います。米国経済は、力強さを取り戻し始めています。資産家は、この5年で、株式のみならず、不動産資産をも大幅に増やしました。しかし、ワナビーの私たち、これから資産を築いていこうというミニ不動産投資家にとっては?

Where are all the good tenants going? 今後、いいテナントを探すのは、今より難しくなるのだろうか?

容易な解決は、ありません。

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