HOME > 円ローン・融資業務 > 

駐在員様の投資戦略その2 年収40万ドル、貯蓄なしで200万ドルの家は、無謀です

《この記事は、2008年に執筆しましたが、2014年10月24日、状況が変わった点につき、加筆しました》


この前、円ローンの関係もあって、駐在組の方から、こんなご相談がありました。

★★ご相談内容★★

中山様、初めてメールします。
1月より米国駐在を始め、次のような状況です。

現在はNYの短期リースマンションにおり、家族の来るタイミング(5月)くらいに賃貸か購入を予定
駐在は2-3年の予定
年収は約40万ドルくらいであるが、事情により頭金は極端にない
NY郊外で1.5億円から2億円の物件を希望

米国でローンの申し込みを考えているのですが、頭金がネックになりそうです。
物件は土地勘があるところなので、いくつか見始めています。

唐突なメールで大変失礼とは思いましたが、ブログを見て興味を持ち、連絡させて頂いております。
何かアドバイス頂ければ幸いです。
よろしくお願いします。

★★★


この方には、端的に、「頭金なし、40万ドルの額面年収で、数年しか住まないことがわかっているのに、200万ドルの家の物色をされているのは、無謀です」と申し上げてしまいました。


マイナス要因は、たくさんあります

■まだ、アメリカでの与信が確立しておらず、自宅用とはいえ、多分、アメリカ人並みに、頭金を3%とか、5%とか、小額しか投入しないローンは、取れない可能性がありそうなこと
■今年物件を買って、2年後に転勤時、その家を貸したら、大きく赤字になるだろうこと、また、売却するにあたり、やはり、赤字になる可能性をも織り込まなければいけないかもしれないこと


この方は、収入は日本円ベースであるということでしたが、自宅は、円ローンの対象になりません。転出後、円ローンへの切り替えを考えても、実現性は、相当低いだろうと思われます。

というのは、円ローンへの借り換えを行うためには、頭金を、現在、査定額の3割投入しなければいけないからです。

皆さん、自宅ということで、アメリカのローンを組めている方は、通常、頭金投入比率が低いので、借り換えに必要なエクイティが、値上がりから出てこない限りは、借り換えのための「大きな金額の追い銭」が要求されるのです。

しかし、「買ったら、3年以内に、20%も30%も物件価格が上がる」、2008年現在、そんな追い風市場は、東部なんかには、ありません。



もちろん、統計を見ても、日本でもアメリカでも、自宅購入となれば、皆さん、年収の3倍から5倍の物件を買うことが珍しくありません。

この方も、高額所得者様ですし、通勤に便利で学区がきちんとしたエリアでふさわしい物件を探すとなると、1-2億くらいにもなってしまうな、ということになられたのは、私もまえ、ニューヨークで短期ですが、働いていたことがありますので、よく、わかります。

しかし、Bさん、奥様がいらっしゃって、ダウンタウンから、こうしたエリアに引っ越されたら、車も2台、いるでしょう。BMWでなく、TOYOTAだと、恥ずかしいんですよね【例外はレキサス】。

2億の家となれば、ちょっとした手を入れたり、それにふさわしい家具を入れたりしなければいけません。

インテリアコーディネートは、このエリアの暇でリッチな奥様方の腕の見せ所。皆さん、めちゃくちゃ手間暇かけてます。

こうした「それ以外」の部分についても、1,000万単位のコストがかかるということ、そして、挙句の果てに、車から家具から、2年ですべて、二束三文で処分しなければいけない、といった、現実的な計算は、本当に、されたのでしょうか、、、

下は、たまたま、ニューヨーク州の人気郊外エリア、ウエストチェスター郡のライ市に出ていた、195万ドルの物件の写真。さすがに、3,000SQFT以上ある豪邸のようです。


AnimationRyeNY1.7M.gif


たとえば、10%の頭金で、最初の数年のみを、格安の返済に抑えるオプションを選んだとしても、今のレートでは、アメリカ人にとってのプライムレートでも、5%半ば台ではないでしょうか。

これだと、元本は返済できないまま、毎月の支払額は、8,000ドルくらいになります。これも、固定資産税、保険をまだ計算に入れていませんね。

元本を30年かけて返済しようと思ったら、毎月、1万ドルプラス税金、保険の返済をする必要があるわけですが、それでも、転勤する3年後に返済できている額は、すずめの涙でしょう。

賃貸に出しても、多分、マイナスキャッシュフローになるうえ、この「1万ドル以上」というのは、入居者が出入りするたびに、負担しなければいけない毎月のロスとなってきっちり帰ってきます。

確かに、家賃も高いエリアなので、「毎月、100万の家賃か、100万のローンか」といったレベルの、苦しい選択なのです。家賃は、金利と異なり、アメリカの税制でも、所得控除の対象になりませんし、、、

しかし、いっそ、体面をかなぐり捨てて、相当ランクを下げたコンドや家を買って、我慢する気がない限り、割り切って、賃貸を、真剣に検討するべき状況のように思い、このカラムのタイトルどおり、「無謀だと思いますよ」とストレートに申し上げてしまったのでした。


そもそも、生活や付き合いなど、職業を維持するための付随コストが高いというのは、自営業者に比べたサラリーマン一般の属性です。


日本の普通のスーツ族についてみても、携帯電話にスーツ代、飲み代、冠婚葬祭やゴルフ。通勤に便利な家を買ったり借りたりすれば、生活費は、青天井。割安の遠距離に買えば、定期の差額は自己負担で、通勤にくたくたになる上、長期的には、家の資産価値もがくんと下がります。

逆の言い方をすれば、こういう細かいことは、いちいち、「経費」として計上できないながらも、「会社員であるために、必要なコスト」というものが高いことは、会社もわかっているために、ボーナス、給与や退職金、厚生年金といった待遇には、その分が、織り込んであるのだと見て間違いありません。

これに対し、典型的な自営は、生活費を節約する手段はいくらもありますが、退職金、年金と、正社員待遇を受けている中堅サラリーマンと比べれば、生涯年収には、天と地の開きがあります。


こうしたサラリーマンの属性というのは、この方のように、高額所得者クラスでも、同様で、むしろ、納税額やこの例に見るような生活関連費をはじめとするコストは、さらに高くなり、苦しい状況は、変わらないことも、珍しくないんですね。


**********

もうひとつ、駐在員様の相談例を、掲載してみました。比べてみてください。

中山からのお願いです。
記事がお役に立ったら、下の2つのボタンをクリックし、ブログに投票してください!
人気ブログランキング にほんブログ村  海外生活ブログ アメリカ情報へ
ご協力お願いします。
中山道子メルマガ登録URL
お名前
Eメール
Eメール(再)

ご登録は無料で、解除は、随時可能です。
最近の配信例は、こちらから。大体、月1度くらいの配信です。

*********

メール配信解除
ご登録のメールアドレスを入力し、解除ボタンを押してください
登録メールアドレス

≪ 一つ前のページに戻る ≫


このページの▲TOPへ戻る