報道の精度とは WSJでも、信用ならないことがある?
中国在住のアメリカ不動産投資家中山道子です。夏は毎年米国に行くようにしているのですが、今年、家族の不幸で、日本にだけ、何回か、プライベートで行き来している状態です。
米国では、この1年で、すっかり、不動産投資市場の空気が変わりましたね。
株式ではないですが、雰囲気というか、市場感情やメディアのあおりが、大きな影響を及ぼしているのを感じます。
客観的にいって、依然、「影の在庫」問題(2012年に説明記事を書きました)に、決着がついたわけではないのですが、しかし、価格が、値上がりしていることは事実。
理由は二つあり、そのひとつには、銀行側が、価格操作、在庫管理に長けてきていることがあげられます。もうひとつは、、、メディアの景気付け戦略が、一般人のイメージを変えてきているのを感じます。
報道を見ると、「ちょうちん」というと、言葉が悪いですが、明るい気持ちを表現したがる記事が増えているんですよね。
この前は、日本の不動産関係者のフェイスブックのタイムラインに、「WSJが、若い世代が景気のいい購入をしているという報道を見た」という投稿を見ました。
記事はこんな感じ。
元の記事のリンクは、こっちから。
《若い世代に、高額の物件を購入したがる人の数がすごく増えている》
という趣旨ですが、「?」と思うところもあり、調べたら、たとえば、統計的にどこからデータが出てきたのか、正直、わからなかった記述もありました。
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該当箇所を訳すると、、、
While homeownership rates have fallen sharply in the past year among the middle-age, the rate has actually grown among young people aged 25 to 34, according to Census Bureau data.
連邦統計局の調べによると、中年の持ち家比率は、去年、大きく下落したのに対し、25歳から34歳までの層においては、実は、伸びを示しているということだ。
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ずいぶん調子がいい記事ですが、初見で、「?」と思ったので、ずばり、34歳までの若年購入者の自宅購入比率の伸びというこの言及。早速、連邦の統計局のUS Census Bureau News を手繰っていきましたが、私がすぐ見つけられたデータは、こちらのみ。
WSJ記事を読む限り、2011年から2012年にかけて、24歳から35歳の持ち家比率が大きく上がったという表現にしか取れませんが、このプレスリリースを見る限りは、2007年以降、毎年、下がっているのです。
署名入りの記事なのに、どういう統計の取り方をしているのか、どこかに、ニッチなデータや、ソースがあったのかもはしれませんが、マクロなトレンドをきちんと説明することが、記事の目的だったとは、正直、思えません。
ライターは、若手のスタッフライター。本当に不動産に詳しいのかと、怪訝に思い、経歴をググッたら、不動産を専門としていることは確かで、他方、彼女自身も、この記事で取り上げらているような人々と、リアルな交友関係がありそうな、華麗な経歴を持っていることまで、わかってしまいました(笑)。
お嬢様記者のお友達ネットワークが上手に記事に反映されているのかまではわかりませんが、WSJが、読者層に対し、今後の有資産層へのマーケッティングのひとつの方向性を示唆するために、書かれたビジネス・サバイバル・アドバイス記事?であることは、間違いないのでしょう。
リベラルな方向性を志向することが多いニューヨークタイムズへ寄稿する記者が、同じ記事を書くのだったら、「若年層にも貧富の差拡大、過去最大の世代間資産移転が、不動産市場にも露骨に反映」というタイトルになったかも、、、
件の日本人のFB友のタイムラインには、「あまり信用しないでください」と投稿したところ、「WSJだからいいと思ったのに、、、」というコメントが、、、
天下のWSJも、業界紙であることは、間違いありませんね。ただ、コメント機能がオープンなのが、唯一の救いで、予想通り、読者からは、
「単発的に数人の例を出しているだけじゃないか」
「ウオールストリート(金融街)族には、メインストリート(一般社会)のことなんかわからないだろう」
「20台のやつらは、2006年時に家を買うには、若すぎて、不動産のことが、わかってないんじゃないか」
とブーイングの嵐。大体、普通の不動産関係者で、WSJをソースにしている人は私は知りません。。。ただ、統計自体のミスリーディングな?解釈を、専門記者が、ここまで、堂々とやっているとは、普通思いませんよね。トピックや権威に限らず、報道や伝聞を鵜呑みにするということは、禁物だと、いまさらながらに思いました。
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