管理会社がだまされた! 大家業は、楽じゃないよ
デトロイトで私が使っている管理会社さんは、米国の基準に照らして、トップ3%に入る人だと思います。アメリカ不動産投資をあまり知らない方は、逆に、「私が良い管理会社を押さえ、管理を任せています」といっても、「当たり前じゃないか」と思われるだけでしょうが、在米の経験豊富な投資家の方々は、「デトロイトで、店を張っているというのは、すごいことですね」と、口々にほめてくださいます。
私の提携取引先である売主は、最初、私が「私は、この管理会社を使うので、彼が気に入らない物件は買いません」といって紹介をしたときは、いやな顔をしていましたが、現在では、自分の周りで困っている人には、私の会社を紹介してあげているくらいです。冷静な彼は、長期保有型投資家は、管理体制が磐石でない限り、リピート顧客にはならないのだということを、すぐに理解してくれたのです。
おかげで、2008年10月6日現在、今日クロージングをした一軒を除き、当社投資家様の案件は、すべて、満室で、回っています。出入りは今後もあるでしょうが、大体のところ、想定内で、進行しています。
但し、初級投資家様は、何を予測してよいのかわからないため、「リスクがある」、あるいは、「想定内」の範囲がどこか、といわれても、具体的にどんなことが起こるかどうかを想像することが難しいもの。実際、統計的な優位のある数字を提示するのは、困難だということも、ご理解いただけるとは思います【そのためには、母数が大きくないといけないから】。
そこで、経験豊富な超優良業者、Zさんですが、今日は、そんな彼が、巻き込まれたトラブルについてのお話をしておきます。
ある、物件に、起こった、こんなトラブルとは、、、
そこに、入居が決まった人が、実は、残高がないままに、チェックを2か月分【敷金と一ヶ月目】振り出し、家賃契約を守ることなく、1ヶ月、不法滞在したのです。
管理会社さんが、チェックをデポジット【預金】してみると、しばらくして、それが、バッドチェックであることがわかりました。【バッドチェックとは?こちらから。】
あわてて、物件にいってみると、なんと、もう、居住していなかったというのです。
電話会議でわかったのは、下のような事情。
その物件は、エリアは良いのですが、2BRで、小さめ。テナントさんは、実は、別の、より大きめな物件に入居をしようとしていたところ、準備ができるまで、1ヶ月あったので、最初から、踏み倒すつもりで、当社案件に、入居をしたというのです。
そもそも、テナントスクリーニングは、低所得者層向けのエリアでは、中流物件と違い、与信チェックという形は必ずしもとりません。【アメリカの与信とは?こちらから。】
とっても、みんな、バッドクレジット【与信状況悪し】のことが、多いからです。
アメリカで、銀行に、与信良好と判断され始めるのは、スコア600台からでしょうが、そんなに与信がよければ、すでに、物件を買っているに決まっています(ちなみに今は、実住希望のアメリカ人でも、やはり、なかなか、物件が買えないようです)。
ですので、こういった物件の場合、与信審査は、直近の滞納や強制退去の記録がないかとか、雇用先にちゃんと籍があり、当該物件を借りられるだけの安定収入があるかどうか、などを中心に行います。
そして、このテナントさんは、ちゃんと、そうしたスクリーニングにも、合格したのです。
単に、悪意があったことを、秘していただけで、、、
被害は、600ドル×2ヶ月の1,200ドルと、軽度な清掃費。
アメリカでは、悪意を持って空の小切手を振り出す行為は、詐欺といえます。故意の証明などができれば、本来、刑事事件にもなりますが、しかし、こんな軽微な案件で、警察が動くわけありませんし、そもそも、家賃を取り返そうとしたら、結局は民事。
よしんば、Small Claims Court【小額の案件を扱う簡易裁判所で、弁護士は不要】にいって、判決が取れたとしても、だからといって、即、回収できるわけでもありません。
向こうの雇用先もわかっていますが、債権回収には、細かい規則があり、日本でも今は同様だと思いますが、ライセンスを持っている業者が、職場気付けで、返済催促などは、できません。
こうなると、結局は、債権回収代行業者に、債権回収を委託し【こちらのほうの説明は割愛しますが、大体はしても無駄ですね】、後は、放置プレイしかありません。
「郊外中流エリアならば、絶対、起こらない」ともいえないと思いますが、やはり、正直、私たちがやっている物件タイプに、よりリアルな事件だったかもしれません。与信を守る気のない人のすることですね。与信社会のアメリカでは、こういうことをやっている人は、住宅ローンどころか、車のローンやクレジットカード自体、取得できない可能性、大。
いずれにせよ、この道15年のZさんも、人間。
間違いも起こす、というお話で、結局は、これも、オーナーがかぶることになります【ただ、メインは逸失利益で、大きな再出費にはなりませんでしたが】。こういう場合、管理会社も、「申し訳ない」とは、思っていますが、ロス補填をできるわけではありません。
長年の経験に照らし、やるべきことはやった。それでも、ロスを投資家にもたらしてしまう、そういうことも、ありうるのですね。「まれ」な例だと思いますが、ひとつの教訓を含んだエピソードでは、あります。
件の物件は、Zさんの働きで、このトラブルの後、すぐに、別のテナントが、見つかりました。Zさん、いつも、夜中まで、ご苦労様。
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