自分の資産から逃げる人たち
自分の資産から、逃げる人たち、、、なんて、妙なタイトルですが、見回せば、実は、そちらのほうの方々のほうが世間では圧倒的であることを、こんなマイナーブログをご覧くださる皆さんは、実は、ご存知かと思います。
しばらく前に、こんな知り合いの話をしたことがあります。都内の何千万ものファミリータイプマンションを、放置する高学歴カップルら、「貧乏父さん」たちの話。
私の父自身、サラリーマンだったため、退職前は、確定申告をしたことがなく、現在、唯一の?仕事といっていい確定申告が、相当苦痛らしく、毎回、「面倒だ」と、母に八つ当たりをしています(笑)。
母のほうは、実家が商売をやっていたりした関係で、相当、シャープなので、私も尊敬しており、仕事をしていれば、私なんかよりずっと成功したんだろうな、と思わさせられますが、ただ、父の仕事の関係などで、時代的な背景もあり、主たる職業は、「主婦」で通しましたので、シニアの年齢になってみれば、「あまり細かい話についていくのは苦痛」という状況は父と同じ。
母は母で、「??」と思う癖があり、やはり、お金についての愚痴が絡んでいます。
【近親者観察はそれほど、趣味がよいとはいえないのですが、今日のトピックは、家庭環境とファイナンシャルリテラシーということなので、、、】
それは、「リスト」に載ってしまっているが故の、営業コールについての話。
母は、私と違って、とてもやさしい?ので、一般の営業コールにも、強くいやといえず、結果、「練り勝ちした営業パーソンから買う」という「泥足営業型顧客」なのです。
それ自体は、別段、絶対いけないとも思わないのですが、よくある、「感動的な営業パーソン」のレクチャーで聞くような感じではなく(爆笑)、いつも、
「いやだって言っているのに、何度も言ってきて、お金をとっていったのよ!」
「来るなって何度も言っているのに、本当にいやになってしまう!」
「あの人たちに全部取られちゃって、ぜんぜん、お金がなくなってしまったわ!」
といった趣旨のことを、話すたびに、連呼します。自らの資産管理能力に不安を持ち、お金との付き合いについて、いまだ、模索しているのですね。
両親の世代は、定職があり、退職金があり、持ち家があり、という”最後の世代”。ネットで自主的に情報を収集してしまう上、まともな電話番号すら持たない私なんかと比べると、ノルマのある営業の方々にとっては、どんなことがあっても、しがみつきたい顧客層。
この前なんか、母は、フリーの営業でやってきた若い女性のアタックがきっかけで、箱根にタイムシェアを買っていました。その女性が、毎回花や、手土産を、定石どおり持ってくるのです。
しかし、この件についても、その後、経過を聞くと、その会社が、「もっとお金がない人が、お客様の予約された小さいシェアを希望されている。お宅のほうが余裕がありそうに見えるから、もっと高額の部屋のシェアを買いなおしてください」という電話が何度も、上のほうの人から入ったということで、母は、そのことで、私に、また、何度も愚痴っていました。
なんて、殺伐とした顧客=営業関係なんだ、、、こんな会社から、何百万もする商品を買って、満足はあるのかしら、、、
この前は、「取引先の証券会社が、別の銀行と合併するということで、相続対策的な資産形成のため、コンサルに来るというので、仕方がないから、来させることにした」、というので、私は、とうとう、辟易して、母に言ってみました。
たかだか30の営業マンや、飛び込みの新卒女性なんかが、要求したから、「お金を取られた」とか、「来るなといったのに押しかけてきてお金を取り上げていく」といったことを、私に日常的に言うけれど、そんなことは、可能ではなく、すべて、自分で決めていることでしょう。
自分のお金なんだから、どう使っても私が口を出す立場はないけれど、そんな風に、自分の資産の決断権を、リテラシーもインテグレティーもない、ノルマだけ押し付けられていて、自分が売っている商品についての知識もろくにないような人たちに譲り渡しておいて、そのことを、私に愚痴ることで、いったい、どういう満足が得られているの?
相続対策をちゃんとやるなら、資産を全部リストアップしてあげないと、向こうはまともなコンサルはできないでしょう。それなのに、「持っている資産残高すべてを開示する気にならない」くらい信用していない相手から、どうして、自分に合った、意味のある資産継承情報が引き出せると思うの?
「信用していないから、その金融機関の口座に入っていない資産については、教えない」といいながら、そんな人たちを、毎回、家に入れて、定期的に付き合っている母の懐の広さ?は、視野の狭い私から見ると、大物政治家並み。
母は、「見ざる聞かざる」の父に比べると、お金を相当理解し、大切にしていますが、それにしても、母のお金との付き合いぶりは、少なくとも、このように、一部の投資商品に関連してみるならば、まったく、風通しのよいものではありません。
信用できない営業マンと付き合い、お金の綱引きを常時した挙句、その人たちが2年毎の転勤となったから、向こうの不手際?であけた穴について上司が頭を下げに来た、と、何かと、一喜一憂する母。
こういうカルチャーは、一般に、相当、気をつけないと、家庭内で、世代継承するのではないかと思います。
私の一家の「その後」を見てみると、姉たちは、父型の勤勉な勤労者となっており、それぞれ、専門性の高い、尊敬される仕事についていますが、私から見ると、ファイナンシャルリテラシーは、母と父の間の辺りで、どちらかというと、父寄り。つまり、資産形成への取り組みは、キライなんですね。
もう、大学生、高校生となった子供たちの前で、私がお金の話をすると、今でも、彼らが、幼稚園児であるかのように、大変嫌がります。実際、私たち自身が、お金に絡んだ話をすることも、我が実家では、はしたないので、してはいけません。母も、「金の話が好き」な私にだけ、上のような愚痴を、唯一、言うのであり、父や姉たちには、絶対こういう話はしないのです(笑)。
私自身が、30過ぎるまで、社会のこと、お金のことがまったくわからなかったのには、理由があります。その後、得るにいたった知識を、10代後半から自然に見に付けている人たちと会うこともあり、うらやましいですが、他方では、30前後に、自分の状況を変えようと思い、それを、実現できはじめたこと自体には、誇りも持っています。道まだまだ半ばですが、、、
よく、お金持ちのモチベーション関係の本を読むと、「お金を大切にしよう」「お金に感謝しよう」といった精神論が書いてあって、社会経験の浅い学生さんや、不案内な人なんかは、「お金を無駄にする人、大事だと思っていない人なんていないじゃないか」と突っ込むかもしれませんが、こういったスピリッツは、具体的には、こういう形で、「お金との付き合い方」に深い影響を、及ぼします。
よくいう、お札の種類と向きを財布の中でそろえるという「お金持ちの習慣」も、お金に向き合う態度(嫌悪感などの屈折)を改善する一助となるなら、合理的な癖付けの方法といえるでしょう。
我が家についてみるのなら、意味のある資産がありながら、その運用に頭を悩ませるのを嫌がる父。父に代わって、二人分の過大な責任を背負わさせられ、最大限に、がんばっているのに、受身の情報収集姿勢、主婦的な「物を持ってくるから。ただでアドバイスするといっているから」といった目先の利益で、まんまと吊り上げられ、そのことにうすうす気がつき、毎回、文句を言いながらも、それでも、自分が信頼できるファイナンシャルアドバイザーを、今ひとつ、開拓することができていない母。
私たち娘たちが、もっと若いときから、お金の苦労をしないで、勉強などに励めたのは、まさに、この両親のprotection(庇護)のおかげ。
「お金の話をするのは下品」
「勤労所得でない不労所得は、所得として、質的に劣る」
「お金は、勤労に伴い、自然についてくる」
「教育への投資は、最大の資産」
、といった”一昔前の中流サラリーマン家庭的哲学”が、「わが実家の経済学」の骨子なのですが、そのことが、両親夫婦や私たちの世代に、もたらしたものは、大きい反面、母の気苦労、父のdenial【現実認識を拒否する精神状態】に見るように、私たち一家のお金との付き合い方に、足かせをも、課すにいたっているのです。
年齢も進み、経済的な不安がなく、大きな病気が始まっていないGolden Ageなはずなのにもかかわらず、「自分のお金」との付き合いに、もっとも自信がない父母。特に、父は、若いときは、「まったくお金がなくて」と、そのときの意識から、抜け出せていません。こういうメンタルを、英語では、hang-up(引っかかっている心のひだ)といったりします。
私も、若い人に、「お金ができれば、遊んで暮らせるのではないですか?」と聞かれることもありますが、どっこい、資産管理というのは、まじめにやれば、大変な重責になりえます(能率化することは可能かつ必要)。
この仕事をするようになって、若くても、お金と、堂々と付き合っている方々、お金との関係に、物怖じされない方々とも知り合いになることも増えてきました。自分の実家など、自分の周りの人々の考え方以外の考え方がいろいろあるのだということを目の当たりにすることができたのは、資産形成のお手伝いに携わる仕事で得た一番のメリットかもしれません。
あなたのご家族の「ファイナンシャルリテラシー家風」は、どんなものですか?
前の世代から継承したと思われる”家族の課題”があるのでしたら、「エコな地球を次世代に」といった大きな政治的アジェンダ以前に(そっちも大事ですが)、自分から、その鎖に、ストップをかけるのは、私や、あなたの現役世代の、最大の責任です。
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