賭博、投機と投資
アメリカのオンラインの雑誌で、前読んだ「儲かるお仕事」のひとつに、石油・天然ガス・エンジニアというエリアがありました。
PETROLEUM ENGINEER
その名の通り、天然資源の採掘にかかわる分野で、素人なのでよくわかりませんが、日本の大学なら、地学や資源工学といった分野になるのでしょう。
なかなか、小学生が、「私、大きくなったら、石油採掘したいわ」などと言い出すことはないと思うので、ニッチな世界だと思いますが、スケールが大きくて、夢がありそうな気もします。専門職だから、実際に自分が採掘するわけではないだろうし、、、
私は、実は、石油採掘、油田投資なんて聞くと、毎回、「賭博」(掘って、出るかでないかは当たるも八卦)みたいなものじゃないかなんて、悪いですけど思ってたんですが、そういう業界のあり方に反して?担当するエンジニア職というのは、相当硬い職種らしいのです。
基本給は、6万ドル以上から。平均が、10万ドル、フリーランスのフィーも高いし、トップランクの人は、20万ドル以上。
もちろん、きっと採掘所に張り付きだったりするんでしょうし、それなりに苦労があるのだと思いますが、私が面白いと思ったのは、どこの大学にもある専攻ではなく、有名校、アイビーと呼べる学校の中で、この領域が、専攻できるのは、スタンフォードだけらしいのです。逆に言うと、有名校に行く必要のない専門性の高い高サラリー職。ニッチ過ぎて、有名校が大量参入するような分野じゃないってことかな?
世の中の親というのは、「子供が社会で成功するためには、受験競争に勝たせないと」といった発想になりやすいわけですが、実は、世の中って、いろんなお仕事があるんだなと。
場合によったら、博士号も伴う専門職というと、聞こえは良いですが、きっと、日本流に言うと、”ガテン系のお仕事”なのでしょう。そこらへんが、みんなが志望しない理由かと。
しかし、ちょっと言い方は悪いですが、なんだか、適性がある人なら、「フツーのことをして、就活する」より、なんか、よりスムーズに仕事が見つけられて、しかも、「学業最優秀」でなくても、高収入が得られそうな機会のある職業に見えるんですよね。
まず、ペトロリアム・エンジニアリングが専攻できるのは、米国の場合、なんと言っても資源採掘ができる現場に拠点がある大学。
ということで、
「オクラホマ大学」(当該専攻の志願者の合格率は8割だそうです。以下同様)とか、「ミズーリ・サイエンス・アンド・テクノロジー大学」(合格率82%)、「ウエスト・バージニア大学」(合格率85%)といった「聞いたことがない大学」=「入るのがより楽な大学」(失礼!)に行って、学位をとれば、就職率はいいわけですから、いきなり、1,000万近くの年収がゲットできるという話になるのかも。
参考サイト Exploring a Petroleum Engineering Degree and Career
これらの「業界ランキング・トップ校」、いずれも、学費は、2万ドル強(州外学生)で、アイビー・リーグの学費が、今すでに年額4万ドルを越えているのと比べると、リーズナブル。
アメリカの大学教育の層というのは、本当に厚いなと思うのは、こういうときですね。
世界レベルの有名校がたくさんあることも、もちろん、魅力のひとつなんですが、こういう風に、ローカルな「おらが大学」(何度も失礼、、、汗)であっても、それぞれ、「おっ?やるじゃん!」と思う特色があって、差別化できているんですね。
日本では、「アメリカは、日本より学歴社会なんだ」と、思われていることが多いように感じますが、それは、CORPORATE AMERICAの一部だけに該当する話ではないかなと。
ペトローリアム・エンジニアリングは、女性が特に少ないエリアらしいですが、それなら、女子学生は、こういう専攻を選べば、手に職がつきそう。
もちろん、「誰にでもできてオイシイ仕事」なわけでは、ないんでしょうが。
だから、これは、単なる無責任な世間話のレベルなんですが、普通の若い人は、最近は特に、
> 誰もが思いつくような進路を目指し、
> その結果、より加熱した競争に対面して、苦労、
> しかも、就活で、特段個性が出せず、さらに悩む
=> 親の世代の「普通」や「平凡」を目指し、時代が同じでないので、失敗
といったマイナス・スパイラルを経験することがありうるのではないかと思いまして。
私も、若い頃は、視野が狭かったので、そんなものでしたが、私の学生の頃というのは、ネットリサーチなどというものは、まだありませんでした。
今の人は、その気になれば、もっと効率よく情報収集できるんじゃないかなとか思うのです。また、社会経験がある親なら、そういう気づきを与えてあげることもできるのではないかと思いたいです。
わが子に、「親の決めた進路を押し付けよう」、といった話ではないのですが、世の中みんなが、「学業で、誰もが認めるトップ校に入らないと、もう、だめ」といったような風潮になってしまうのでは、窮屈過ぎますし、現実の社会のあり方にも、即しているわけじゃないのじゃないかなと。がんばらないとやっていけないのは、どこも同じ。でも、画一的な道を進もうとした結果、さらに、茨の道になってしまうより、「もし、こういう状況なのだとしたら、じゃあ、みんなと同じことをする代わりに、こうするのはどう?」と、「自分なりの一手」をいろいろポケットから繰り出せるようでありたいなと。
同じように、投資だって、時には、ひねくれた見方、追随しない考え方が、必要だと思うのです。
今日、急にこの話を思い出したのは、テキサスのオースティンで、石油採掘会社が、この2015年1月に、倒産宣言をしたから。
米国は、これまで石油を輸入に頼っていたところ、世界の需要が落ちたり、また、国内採掘が盛んになったりして、石油の値段は、この7ヶ月で、大きく下降し、今、米国の多くの採掘会社は、「はっと気がつくと、採掘するのは、赤字を増やす最大のリスク」という状態に対面したようです。
Tiny Texas oil and gas producer files for bankruptcy protection
これまで、採掘需要に沸いていたノース・ダコタ、テキサスなどで、今後、本格的なバックラッシュが生じるかは(特に私たちの関心である不動産市場なわけですが)、これらのエリアに土地勘がない私には、ニュース・ウオッチングでしか、知りえないでしょうが。(教えてくださる方いたらメールください。でも統計とかじゃなくて、ディープな実態ですW)
しばらく前に、ノース・ダコタが、「サン・フランシスコより、家賃が高くなっている」という話を、ブログで取り上げたことがあります。
経済の発展が、必ずしも、不動産市場の発展につながらないわけ ノース・ダコタ編
実は、こうした「資源ブーム」は、何度も起こっており、実は、不動産の業界関係者は、他の産業があるテキサスはよしとして、ノース・ダコタに関しては、ほぼ「無視」を決め込んでいるという話。
テキサス、ノース・ダコタの他、ワイオミング、オクラホマ、ルイジアナ、ペンシルバニアなどといったこれまでマイナーだった州が、「採掘バブル」ということで、人口増加を予測されてはきましたが、すでに、この産業に関連する求人には、失速の兆しが見え始めていると、報道され始めています。そして、これが、エネルギー採掘がうまく行き過ぎてしまった結果だからというのですから、皮肉です。
例 Texas shows steady job growth, but worries about energy grow
米国の庶民にとっては、ガソリンの価格が下がったことはすばらしいことではありますが、他方で、設備投資に巨額の費用を必要とする石油・天然ガス業界は、脚光を浴びはしているものの、その結果、先行投資を回収する前に、価格競争が行き過ぎてしまい、自らの首を絞めてしまっていたというこの流れに嘆息せざるを得ません。
普通に考えれば、テキサスは、米国経済のけん引役なわけで、今の段階でも、今後に対する明るい見通しを立てる論調のほうが、多く見えます。どちらにも、一面の真実があるのでしょう。ミニ不動産投資家にとっては、とどのつまりは、「で、俺、どうやったら儲かるの?」に尽きるわけで、こうしたエリアの経済指標と、このボトムラインを、つなげるストラテジーって、本当に見極めが難しいんですよね。
私の経験から言えば、どんなエリアでも、儲かっている人はいるんですが、どんないい環境においても、ロスを出してしまうことは、あります。。。
博打と投資の違いは、誰にでも明らかですが、投機と投資の違いが何かは、難しいですね。
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