最近のデトロイトの空室率調査結果
日本全国の空き家率については、最新統計上は、13.1%だという数字が、総務省統計局の平成20年度時の調査データだそうですね。(総務省)
1月11日付の週間全国賃貸住宅新聞が、賃貸物件についてのみ、エリア別にさらに空室率を割り出したところ、以下のような結果になったということでしたね。
もちろん、具体的に投資をするには、より細かく、見ていく必要があるでしょう。「経験豊富、空室対策万全の自分には、こんな統計、関係ないや」という強気大家さんも、このブログ読者には、多いかもしれません。他方では、最近のにわかサラリーマン大家さんには、高レバレッジをかけて、地方のアパート投資をしてしまった方なんかも多いだろうと思いますですので、「新築のとき、買ったときはよかったけれど、2年たってしまい、空室対策で四苦八苦」といった方も、いるかもしれませんね。
一般論としては、やはり、都内でも、賃貸物件の空室率が、16%とは、ちょっとさびしいような気がします。実需に根強い人気があるイメージの神奈川県も、賃貸という観点から見ると、やはり、全体的に、東京に劣るんですね。神奈川は、多少、人口が増えているはずだから、いいだろう程度の表面的な理解だけでは、賃貸物件冬の時代は、乗り越えられないようです。
関係者は、口をそろえて、「これは、20年度。今は、もっと悪くなっている」とおっしゃっています。この前発表になった公示価格を見ると、都内一等地の地価からしてが、軒並み下がっていますから(こちら)、国内の経済環境は、ここ数年で、本当に、厳しい課題がどんどん噴出していますね。
今後の傾向についても、短期的な視野に基づく新築や高層化が進む可能性に、警鐘を鳴らす専門家が、後を絶ちません。こちらから。
他方、私が投資をするアメリカ、さらには、デトロイトはどうかというと、統計というのは、手法や精度が大きく意味を持つでしょうから、それほど、容易に比較が可能なものがあるかは、にわかには言いにくいのですが、下に、いくつか、一応、信頼性がありそうなソースのものを、ピックアップしてみました。
++++連邦統計局空室率統計+++++++
全米レベルの空室統計については、連邦統計局が、定期的に資料を出しています。2009年第四四半期の結果は、こちらから。
実需住宅と賃貸用と統計上処理されている住宅とが、別々に算出されており、全米レベルだと、前者は、2%台、賃貸物件で、10%台と、日本の統計と比べると、「本当かしら」と思うくらい、良好です。こちらから。
次に、都市毎ですが、デトロイトは、賃貸物件の空室率について、確かに、100万人都市圏としては、高いほうかもしれませんが、しかし、それも、高々の16%。こちらから。実需案件にいたっては、3%台というこの数字は、ウオーレン、リヴォニアという近隣郊外都市を計算に入れていることにより、向上しているだろうにせよ、それでも、楽観的な気もします。だんだん、連邦統計局の統計を真に受けていいのか、よくわからなくなってきました。2009年最終四半期主要都市圏実需家屋空室率統計は、こちらから。
デトロイト市内に限って調べると、異なる数値のデータも、出てきそうです。
+++++++連邦郵便局調査結果+++++++
デトロイトのある地元NPOが援用していたのが、2008年末時点で、USPS《連邦郵便局》が行った”vacancy(空室)”についての統計。
これを見ると、全世帯の20%が、2008年12月段階で、”過去90日にわたり、配達した郵便物を回収した形跡がない状態”だったとあります。
2005年末の調査では、同じ調査の平均は、10%でした。3年間で、空室率倍増というわけです。
空室でも、管理会社などが、物件の状態モニタリングと、郵便物回収に回ることは当然で、たとえば、私たちの物件が、一時的に空室になっても、この定義では、空室に認定されないでしょうから、”売却用の空室”や”賃貸内見中”の物件などを含めた実際の空室率は、平均すれば、20%より高いのかも知れません。
濃淡のあるこの地図を見ると、エリアごとの違いも、大きなポイントで、ある意味では、空室率が高いエリアのほうが、格安物件が出回りやすいですから、私たちは、そうしたエリア《郵便番号》であっても、通りの状態を優先し、町並みがそろっている状況や、土地勘があれば、踏み込んでおり、客付けや賃貸実績は、着実に積み重ねられています。
さらに、都市レベルの特徴として、留意するべきなのが、デトロイトというのが、過去の荒廃が数十年単位で続いてきた都市で、その結果、物件取り壊し、区画の空き地化が大変進んでおり、こうした「歯欠け状態」は、建物がある場合のみに調査対象を絞っているはずの上の統計では、出てこないということでしょうか。
+++++2009年に実施された地元統計結果+++++++
最近、実は、地元で、それなりに大掛かりな調査の結果が、発表されるということがありました。それによると、デトロイトの区画の空き地化はとどまることがなく、実に、宅地の3分の1が、空き地化しているというのです。報道は、こちらから。
賃貸する側から言えば、焼け落ちた荒廃物件などがあるより、宅地の空き地化のほうが、ずっと望ましく、前者の場合は、実は、ほとんどマイナスとは見ていませんが、他方では、都市計画をする側からすると、「この空き地はどうする?」ということが悩みのようで、現ビング市長は、こうした状況もあってか、最近、「都市を、ダウンサイジングしないとまずい」といった声明を出しています。(ただし、downsizing という言葉のネガティブなイメージを嫌い、rightsizing という言葉を使っていて、さすが政治家と、感心しました)
この統計を見ても、空室の指標が複数ある物件、空室の指標がひとつある物件、窓やドアが開いてしまっている危険状態の物件、火事にあったままの状態物件をすべて足し合わせても、調査対象となった一戸建て(single residential)と2戸建て(duplex)物件の18%しかならず、先のUSPSの20%とほぼ一致しています。
詳細は、こちら。
++++感想、一投資家の実感++++++
以上のように、空室率について決定的な回答をご提供することは、なかなか、容易ではないですが、イメージ的に総括すると、
■デトロイト市全体の空室率は、20%前後で、空室率が、ほとんどないような町並みのそろった地区も存在する反面、空室率が、20%よりずっと高い荒廃したエリアというものも存在する。
■そのうち、私たちの投資するエリアは、空室率が、比較的高い方のエリアの場合のことのほうが、多いかもしれないが、よりミクロに、通り単位、ブロックでは、空室率が、10%より低い通りを選び、それなりに、成功裡に賃貸をしている。
■一般論として言えば、”安く家が買えるから”というだけで、安易なエントリーをした場合、賃貸戦略で失敗する可能性が高いことは、間違いなさそう。」といったところでしょうか。
多くのアメリカ人投資家は、「デトロイトだけはいや」といいますし、エリア人口が流失していることは、間違いないので、それも当然ともいえますが、他方、日本の空室統計と比較してみると、日本人投資家にとっては、「地方で自分が経験している惨状と比べれば、デトロイトも、馬鹿にできない」といった感想も「あり」かもではないでしょうか。
本当に、デトロイトに投資をするのは、賃貸物件空室率20%の神奈川で投資をするのと同じなのか。私に聞かないでください(笑)。
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