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クリーンな決済と遠隔投資家のオプション(1)

2003年、2004年頃から、自己目的で、遠隔で、アメリカ不動産投資を行ってきている中山道子です。2006年くらいからセミナーやコンサルも行っており、現在、案件お世話をしたオーナー様の数は、5年ほどの間に、累計で、100人に近くなってきています。

こうした初期のオーナー様へも、トラブルなくサポートを続けて現在に至れているのが、私の自慢といえば自慢ですが、これは、私の問題というより、優秀で堅実な皆様にお引き立てをいただけてきたからかと思います。

その意味では、リスク開示(risk disclosure)や案件の事前説明を、大切にしてきてよかったと思います。また、今後も、何年たっても、フォローを続ける自らの体制を守っていければと思っています。

こうした中、セミナー活動等もやっているので、実は、今日、昔、セミナーに出ていただいた方から、「ハワイのリースホールド」についてのご質問を受ける機会がありました。

それに対するお返事をするために、いろいろ、考えましたが、その結果、こうした問題について、自分の考えを整理するいい機会となったので、ここで、ちょっとこの問題について、考察をしてみようと思います。

「リースホールド」とは、期間限定、登記可能な物件占有権行使の権利のことで、イメージとしては、最初、意味ある額のお金を払い、その後は、賃借料に準じたリース料を支払い続けることで、物件を期間限定で利用できます。

米国では、ハワイやグアムを中心に、限られたエリアでしか、利用されませんが、まさにハワイなんかは、東京同様、土地所有権が高額なため、期間限定の利用権を売り買いするメリットがあるのかと思います。

ご質問をされてきた方は、以下のようなことをお問い合わせでした。


+++++質問概要紹介

セミナーに参加させていただいたMです。

ハワイやグアムのリースホールド案件は価格も安いし、ハワイでは、あるリースホールド物件を気に入りましたが、不動産屋さんは、皆さん、トラブルになることもあるのでと、単純な所有権移転案件を薦めてきます。

日本の借地権と違うということはわかりますが、具体的にいうと、どこをポイントに取引をすればいいのでしょうか。

+++++

ハワイでは、リースホールド(leasehold)に対して、単純所有権のことを、フィーシンプル(fee simple)といいます。

このメールに対し、私は、以下のようにまずお答えしてみました。


Mさま


その節はセミナー参加、ありがとうございました。

米国は州ごとに法律が違うので、グアム、ハワイごとに、それぞれ整理されたほうがいいと思います。それについては、やはり、現地の不動産屋さんのご説明が足りないと思われましたら、弁護士にコンサルを相談されるしかないのではないでしょうか。

英語がおできになれば、州ごとのリースホールドの本を読むことをお勧めします。

トラブルになると、確かに遠隔投資家には、普通の感覚では、手に余ると思います。反面トラブルになると決まったわけではないかとも思います。

なので、ご自身でその覚悟が出来るかどうかですね。購入時に、レアルターのみならず、弁護士を雇って契約書を説明してもらいながら進める気持ちがあれば、随所随所、そのときごとに同様に進めれば、特に解決不可能な問題はないと思いますが、後々不動産屋さんと管理会社さんに世話になるだけで済ませたいと思っているなら、業者さんのいうことを聞くことです。

業者さんは弁護士ではなく、訴訟は苦手でしょう。

大して役に立たない回答で申し訳ありません。


++++++++


この回答をした後も、この問題を整理するアングルを、無意識に考えていました。

何でもそうかもしれませんが、一つ一つのケースを熟慮することで、より広い知見が得られることがあるので、私は、結構こうした頭の体操が好きなのです。

さて、この方によると、「現地の経験豊富な不動産屋さんは、後でトラブルになる、訴訟になることがあります、面倒なことはやめたほうがいいですよ」と言うのだということですが、それを、初めて聞く側からすると、「あなたが面倒くさいのですか?より高額な物件を買わせたいのかしらん」と思いたい気持ちになる面もありそうです。

私自身も、上に述べたように、第三者の投資案件のお世話をしだしてから、6年近くといった年月がいつの間にか立っていることを前提にすると、経験豊富とまでいかないかもしれませんが、多少、意見をいってもいいかなと思います。

ここで私が感じるのが、投資家の属性の問題。

今まで、いろいろな方にお目にかかってきましたが、世の中には、「誰にでも最適な案件」があるということは必ずしもなく、それよりは、その方の属性にあった案件を選ぶということに意味があると思います。

例えば、私自身の場合、対米遠隔投資を行うにあたっては、以下のような属性をお持ちなことが適当です、とよく申し上げてきています。


+++下の3つの属性のうちの二つを満たすこと+++

■PCが得意
(但し銀行等の口座管理やメールスキャン添付のやり取り程度のレベルで、超上級ということではありません)
■英語が得意
口語が出来なくても文章力がある、単語を拾って意味が取れる、米国滞在経験等
■小規模ビジネス経験
不動産は小規模自営なので、日本の不動産投資経験者でもいいし、その他のビジネスの確定申告、経費計上等の基本イメージが体でわかっている

+++++++


これは、私がお世話を申し上げるときに、要求している条件というような「上から目線」のものではなく、「その方が、中長期にストレスを感じすぎないためには、適当ではないか」と思っている範囲の特徴なのです。

パソコンについては、対米不動産投資というには、ネットで多くのことがやれるため。英語力に不安が少ないと、請求書ひとつもらっても、自らのストレスが違います。また、不動産投資というのはスモールビジネスなので、片手間にせよ、小規模自営を経営するという覚悟があると、プラスになります。

私自身が経験した例では、例えば、”家庭の経済状況が変わってしまったから”と、物件の火災等損保保険加入を拒否し、物件にその後生じた損害に対し、修理責任を放棄して、管理会社から見放されてしまったような方もおいでになります。

このような帰結は、こうした方自身にとって、後味の悪い経験となるでしょう。私自身も、こういう場合、そういった方のリスク耐性といったものを見抜けなかったということについては、多少言い訳をしても、結果、そうしたお客様には、投資家生活をご満足いただけなかったということですから、自分自身の対応について、反省をする点があるのです。

そして、不動産屋さんというのは、皆さん、いろいろな経験をする中、「このお客さんに薦めやすい物件というのは、どんなものかな」「このお客さんに長く喜んでもらうにはどうすればいいかな」ということを、それそれに、真剣に考えるようになるのだと思います。(営業スタイルは異なるでしょうから、全員が一律に同じように考えるとは限りませんが)

実際問題としては、私は、投資に特化しているので、投資家目線で、このようなことを正面切ってセミナーでも言いますが、例えば別荘や自宅と、不動産購入にはいろいろな目的があるわけで、いろいろな方に対して、「あなたはこういうところがあるからやめたほうが」というのは、やはり、本来は”出すぎたまね”ですから、不動産屋さんは、出来るだけ間口を広げ、例えば、こう考えられます。

***
「このお客さんは、別荘として取得することを目的にしているのだから、楽しくホールディングさせてあげたいな。購入後、トラブルが生じにくいのは、やはり、それなりに大規模修理が終わっていて、エリアも悪くなく、友達を呼んでも感心されるような築浅物件だよな。不要になった時に、後で手離れもよくないと、途中がよくても、最後に、苦しくなるんだよなあ。」
***

と、、、

初級者は、エントリーの成功を中心に考えるために、購入価格ばかりに目が行きがちですが、お世話する側なら、むしろ、最後までのペース配分を考えざるを得ませんから、そうなると、同じ案件を見ても、見えているものが、違ってくるわけですね。

この質問者様の例に戻りますと、この方の潜在的な投資家耐性等のことは私はまったくわからないのですが、業者さんは、この方が、日本在住であること、米国不動産については初心者であることを前提に、以下のように思考を進めるのだと思います。

***
「不慣れな遠隔の日本人のお客さんが、リースホールドを買っても、細かい契約条項を理解できるかはわからないし、自分は弁護士ではないから、契約の内容説明については、責任を持ってやるという立場にはないな(親身に説明したら、弁護士資格なしで弁護士業務に携わった形になりかねず、逆に問題)。
 この方が、後日訴訟に巻き込まれたら、遠隔で、普段の生活の中、それにかかりきりになるわけにも行かないだろうし、お困りになるだろう。
 同じ遠隔でも、米国本土居住のベテラン投資家さんだったら、自分で契約書も確認する力もあるから、リースホールドがいいというなら、止めないけれど、この方の場合には、単純決済案件をお勧めしておきたいな。」
***

といった感じですね。

さて、ここまで来ましたが、長くなりすぎました。本当はもっとこの問題について言いたいことがあるので、それは、次回。単純決済以外の取引の難しさについてです。


パート2は、こちらから


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