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単純売買以外の決済は後に引きずるのが一番の問題だ!

この記事は、こちらの記事のパート2です。

前回、私のセミナーに過去に出席していただいた方から、ご相談を受けた話をしました。「リースホールド」は、不動産屋さんが薦めませんが、どうしてでしょうか?

というご質問。

それに対し、前半では、「トラブルになったら困るというのは、確かです」という趣旨のことをお話しました。

しかし、トラブルになるとは限りません。それでは、どうして、こうした「確率の低い?」リスクを心配しなければならないのでしょうか?

そもそも、単純決済のことを、conventional sale (伝統的・典型的な売買方法)と呼ぶとすると、それ以外の決済の仕方は、非典型的、非一般的ということになります。

本土では、これらの多くを、creative deals (お金がある場合の典型的な決済に対して、現金がない場合の創造的な問題解決方法)と呼びます。リースホールドはハワイの特殊事情で、昔ながらの方法ですので、これは、いわゆる、クリエイティブなディールとは呼ばないかもはしれませんが、ニーズや機能的には、米国本土または全土で広まっている、ランドコントラクトやオプションリース等の「別の買い方」と同列、こうしたものの元祖という言い方も出来るかと思います。

クリエイティブな手法を使っての不動産投資方法を指南するいわゆる「米国のグルー」の教材は多数あり、過去に、私のブログで、警鐘を鳴らしたことがあります。「クリエイティブなディールの危険性について

そちらでは、こうしたクリエイティブなディールメイキングから、素人が収入を得ようとするのは難しいという話をしました。

今回の問題と共通の要因として、初級者、未経験者にとっての「契約書を理解することの難しさ」「契約書の内容をネゴすることの困難さ」があります。

通常売買は、決済のときの名義書換の手順が比較的単純明瞭で、後々、トラブルになりにくい上、原則、相手と二度と話をする必要がありません。(もちろん隠された瑕疵の問題等が出てくることはありえますので、程度問題です)

それに対して、リースホールドを含めたクリエイティブファイナンシングは、「原則、相手との継続的な契約関係に入る」形式。賃貸に近いのです。

賃貸なら賃貸で、契約書は標準的。対象となっている金額も、普通は10万単位の賃料の話なので、トラブルになっても、やはり10万、せいぜい100万単位。判例等も明快で、それほどもめるようなところは、多くありません。(ここも程度問題で、賃貸でも訴訟になる場合も有るかとは思います)

それに対して、クリエイティブファイナンシングによる不動産取得は、潜在的に、通常は10万ドル、何十万ドル、つまり、1,000万前後単位から、エリアにより、相当安い場合でも、それでも、数100万単位からのトラブルになるわけですので、賃貸借関係より、ステークが高くなる上、実は、これらの契約は、「お互いが好きなようにする」ことが目的なので、汎用性の高いテンプレートというようなものはあまり存在せず、通常、一般的な項目を網羅した契約書を、相当カスタマイズして作ります。

このとき、相当考えておかないと、相手のペースに乗せられがち。不動産屋さんにサポートをお願いし、弁護士さんを連れてきたとしても、これらの人々は、いくら親身になってはくれたとしても、購入希望者自身が、3年後、5年後何を考えているかがわかるわけではないのに対し、実際には、そうした年月にわたって、見ず知らずの他人と契約関係を結ぶのですから、

「どういう人か、わからない人と」
「自分自身がどうなっているかわからないほど先の時期まで」

強度にお互いの将来を拘束しあうわけです。

しかも、状況として、「契約内容は、どのようにでも取り決めできる」というわけですから、向こうがsavvy investor(合理的に行動する頭のいい投資家)であれば、こっちは、向こうのペースに巻き込まれて、損な取引に合意をしてしまう可能性がありますし、いずれにせよ、長い契約期間中には、向こうのトラブルがこちらに波及してくる可能性も出てきます(こちらに対する悪意はなくとも、例えば、契約期間中に離婚をすることにしたとか。日本ならば、直接は関係ありませんが、米国では、原則、スグに所有名義問題になります)。

そもそも、通常の契約関係、例えば、雇用契約やパートナーシップ契約なら、相手のことを一応見極めて契約関係に入るわけですから、自分の鑑識眼や社会経験を生かす余地がありますが、不動産関係の契約の場合は、お互い、物件と契約書を見ているだけ。仲介の不動産業者さんも、「向こうの売主がいい人かどうか」は、まったくわかりません。

そうなると、契約関係が継続している間に、トラブルになったときに、通常の契約関係と異なり、信義誠実の原則に基づいてお互い行動できるかどうかは、まさに、「出たところ勝負」。契約書がいかに自分に有利でも、相手が常識がなく、それを守る気がなければ、どんな”いちゃもん”も、訴訟にならないまでも、即、弁護士沙汰になります。

このように、単純売買や賃貸借契約と違った不動産関係契約は、もめやすい要因をいくつも、はらんでいます。

アメリカでは賃貸借契約の標準時期は、1年間。日本のように2年でないのは、米国では、人間、「1年たてば事情が変わる」ことがむしろ鉄則だからなのかもしれません。そして、昨今のアメリカで、零細大家になってみると、「1年間テナントが、契約に違反せず、きちんと支払いをしてくれる」という状況が、だんだん、「それほど当たり前のこととはいえない」と体感するようになります。

そう考えると、100ドル単位、1,000ドル単位の契約ですら、1年もせずに、相手を信用できなくなる状況が多々あるというのに、 何十万ドル単位の契約で、5年、7年と相手を信用しなければいけないのは、相当な例外状況であるという考え方も、出来るわけです。

長々検討してきましたが、不動産の魅力は、初級者であっても、エントリー障壁が低いこと。不動産を介すれば、資金があれば、高度な契約が、簡単に締結できてしまいます。

しかし、これを、吉とするか、兇とするかは、その方自身の姿勢なのです。


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