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アメリカの不動産投資教材が教える一部の手法には、こんなに危険がある

前にも少し書いたことがありますが、アメリカの不動産投資グルーのところで指南すると、「お金がなくても、大丈夫」と言われます。

そして、高度なテクニックを教えてくれるのですが、、、

実際には、こうした不動産投資コースは、「お金がなくても大丈夫」な高度にクリエイティブな戦略を、何万ドルも取り上げて教えますので、本末転倒だと思います。

私自身、これらの教材やコーチングプログラムを買い求めたり、また、投資本やCDなども、よく聞いたりした経験があり、それらから、一般的な意味で、勉強したと思います。いずれも、「不動産投資には、思うほどには、直接役に立たなかった」というのが、正直な感想ですが、そんなことは、自分自身の問題でもあるわけですし、これらの後押しがなければ、今、こんなことをしていない可能性が高いです。逆に、こうした方々のお話を聞いたり、本を読んだりするのは大好きで、これらのグルーをほめる記事も、これまでにも、書いています。

なので、そうした教材やコースの有益性をまったく否定するものではないのですが、、、

ただ、最近になって、「ブログで、人をほめる」=「中山は、あの人をすべてをまるまる信奉しているのか」といった読まれ方をしていることを知りました。ちょっと、軌道修正を図ります。

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ということで、現在、それなりに、不動産投資家として、経験を増している私が、一番不満なのは、「いきなり、高級戦術を初心者に教える」ことが、いかに危険かということを、教えるほうが、それほど、意識していないかのように見えること。

まったくの初級者は、右も左もわかりませんから、「ナシングダウン!OPM【other people's money, 他人のお金】で、3年でミリオネア」なんていわれると、つい、舞い上がってしまいます。実際、2000年くらいから、数年の間にアメリカで、不動産を買った人は、8割方、10万ドル単位のエクイティをゲットしていたことでしょう。その後の段階でも、そのエクイティは、なくなっていない場合も、多いのです。

2003年前後、当時米国に住んでいた私の周囲でも、そうしたフィーバーはすごかったです。とにかく、物件をコントロールする立場に身をおけば、後は何とかなりました。

それに対し、2006年以降、同じことをしようとした人は、多分、8割が、負けこみ、フォークロージャー組に転落したり、その危険と対面したり、しているのではないかと思います。

そんな中、こうした情報教材産業は、現在も、「不況になれば、なおさら、仲介より手っ取り早く、儲かるぜ」と、ますます、勢いを増しているように見えます。アメリカに住んでいる方、旅行された方は、夜中のインフォマーシャル(infomercial, 情報を売ろうとする広告を意味する造語)で、景気のよさそうなグルーが、美女を引き連れてビーチに行ったり、高級車に乗っていたりするやつ、ご覧になったこと、あるかと思います。

よく教え込まれるのが、「よい物件を見つけてくれば、誰かが、必ず、資金を持ってくるから、与信やお財布のことは心配せず、ディールメイキングのほうだけ、勉強すれば、いいんだ」という指導。

しかし、私自身の経験を振り返ってみて思うのは、ディールメイキングは、2000-2003年次に比べ、確実に、難しくなっているはずだということ。

そして、ディールがうまくいくかどうかというのは、エントリーのときわかるのではなく、ホールドに成功した後、エグジットを複数思い描けて、初めて、はっきりしだすという事実。最終的には、エグジットした後、税金申告を終わったあとにしか、結果は、本当の意味では、出てこないのです。

あるとき見た口コミサイトには、20台の若い男性の、某教材を絶賛するこんな声が。

RichdadReview

もともとのページは、こちらから。〔2014年現在、サイトはもう運営されていないように見えます〕

内容はこうです。

「リースのサンドイッチオプションに成功して、毎月、250ドルのキャッシュフローが確保できた。先生よ、ありがとう。教材代4,500ドルは、高くないぜ。2番目、3番目と、彼女と一緒に、どんどん同じことをやっていくぜ!」


リースのサンドイッチオプションというのは、売主から、物件を将来購入する約束をして、その段階で、物件に対する買主の地位を確保し、次に、別の第三者を連れてきて、その第三者に、将来同じ物件を買ってくれる約束をさせること。サンドイッチというのは、「挟む」という意味で、使われています。自分が中間に立ち、売り手と買い手との間に挟みこまれるわけですね。

簡単な例を出すと、こうです。

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Yは、Xから、20万ドルで、3年後、Aという物件を買うことにする。条件は、権利金1,500ドル、毎月の支払いは、1,100ドル。残債は、3年後に、一括返済。

その直後に、Yは、Zに、同じ物件を、3年後に、22万ドルで買ってもらう契約をする。条件は、権利金3,000ドル、毎月の支払いは、1,350ドル。残債は、3年後に一括返済。

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こういうことは、がんばれば、今でも不可能ではないかもしれません。

上に紹介したアメリカ人は、これで、毎月、250ドルの差額収入が確保できたということ。ですが、こういう立場に身をおいて、それが、成功するかどうかは、3年後にならないと、わからないという私の意味が、おわかりになりますでしょうか?

この場合、Zは、通常、普通の実需希望者。

物件Aに居住し、「家賃」を払い続け、3年後の銀行融資取得に向けて、日々、努力を開始するというのが、想定シナリオです。通常は、与信が悪いのを、直すための期間、また、その間に、頭金を多少なりと、貯蓄する期間でもあります。イマドキなら、「本来は与信はそこまで悪くないけれど、今は銀行融資がつかないから」という理由もあるでしょう。

しかし、実際は、こういうディールには、様々な罠があります。

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罠1

売主Xには、そもそも、銀行ローンがあったところ、本来、Yからもらう1,100ドルでローン返済をするべきXが着服し、ローンの返済を滞った。その結果、物件は、競売に。このとき、リースオプションだと、Y、Zには、賃借人の権利しかありません。

Yは、これをストップするためには、結局、銀行に任意売却でも持ち掛けなければいけなくなるでしょう。〔格安にせよ、資金があるとしてですが。例えば、20万ドルの物件が、物件価値が落ちて、抵当流れとなれば、状態がよくても、8万ドルといった価格で買える可能性は、交渉しだいでは、ありうるかと思います。しかし、この「お兄さん」に、この段階で、8万ドルのキャッシュの目算があるでしょうかね?〕

これを防ぐためには、Yは、直接Xの銀行に支払う支払い代行をする取り決めをしておくべき。それをしていても、一番まずいのは、Xが、失踪した場合。Y、ひいては、Zへの名義書換には、Xのサインが必要になりますが、生死未確定だと、それが、棚上げになります(単なる死亡なら、Xの相続人は、Xの契約履行義務を相続するのでまだよいかもしれない)。先生は、この初級者に、こんなリスクも生じうることを、ちゃんと、説明してくれているでしょうか?


罠2

将来の買主Zは、失業または離婚。家賃を滞納し、出て行った。Yは、直ちに、物件を自分のコストで修理し、空室時は、1,100ドルを、Xに払い続けなければいけません。毎月、250ドルのプラスになると思っていたら、半年後、修理代金を負担させられた上、次の相手を見つけるまでに、数千ドル単位ののロスが発生します。

もっと悪いシナリオとしては、Zが家賃を滞納し、任意に出て行かないので、強制退去させなければいけなくなる場合。さらには、Zが、権利金3,000ドルが帰ってこない悔しさを物件Aにわざとぶつけ、修理代を加速度的に、増やしていく場合。

再度、新しい人を、入居させても、3年間に同じことが起こらないとは、限りません。テナント審査や対応をするノウハウは、エリアによっては、結構な経験を要求します。こういう教材でつくコーチは、通常、遠隔の別の州。地元の法律や事情に応じた管理ノウハウを、ちゃんと教えられるものでしょうか?


罠3

3年後、奇跡的に、Zは、まだ、きちんと賃貸をしていて、物件は、状態は、よい。しかし、この年、まだ、不況は脱しておらず【上の例だと、2010年】、物件価格に、22万ドルの査定は出ない。Zは、物件取得ローンが通らず、出て行く。そのとき、物件は、結局、荒れた状態に。Yが、20万ドルで物件を買えない場合は、最初の権利金である、1,500ドルの回収をあきらめ、毎月の支払いを全うした上、結局、原状回復義務が生じます。

Yが、原状回復しない場合は、Xは、Yの与信に、マイナスをつけられるでしょう。Yは、これだけの経験をするため、まず、4,500ドルの教材代を払い、1,500ドルを手付けとして打ち、3,000ドルプラス250×12ヶ月×3年という額を収益したかもしれませんが、結局、5,000ドルの修理義務が降りかかってきたとしたら、最終収支は、3年で、1,000ドルでしょうか?

3,000+(250×12×3)―4,500―1,500―5,000=1,000ドル

この口コミ者が希望するように、初心者のうちに、矢継ぎ早に、こういうディールを何軒もやってしまったとしたら、その結果は、目も当てあられないことになる可能性があります。それなら、こんなコースをやらず、別の方法で、3年間、不動産の勉強をしたほうが、よかったかもしれません。経験自体は、得がたいといえば、そうなので、その後、出直すことは、いつでもできると思いますが。。。

ところで、最後に、3年後、この教材を販売したグルー本人は、いつものように、優雅に世界を旅行中でしょうか?そして、この人の電話会議を担当した「良心的な担任コーチ」は、どこに?


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考え出せば、もっと、マイナスのシナリオはたくさん考えられるでしょうが、ここら辺で、私の言いたいことは、お分かりいただけたのではないかと思います。

こうした手法は、2000年から2003年前後の好況時には、比較的、成功率が高かったと思います。1年で、物件価格が急騰し、Zにローンをつけてくれる銀行は、たくさんあったでしょう。しかし、2004年くらい以降は、その多くが、結局、サブプライムだったということになったのです。

つまり、今は、「最後は銀行ローン頼みのリースオプション」には、困難のほうが、多いのです。他にも、名義が変わるオーナーファイナンシングについても、同様の問題が、もっと深刻な形で、登場してきます。

それなのに、2007年次のこの口コミの例で見るように【これが、サクラでないという想定で話を進めていますが】、依然、こういうことを、初級者にやらせようする人、そして、それにはまり込む人が、後を立ちません。

教えるほうのロジックとしては、いろいろな手法の一環として教えているのであって、実際に、成功するケースもあることがわかっているのだから、それを伝授したこと自体、教育費として、高額の価値があるということになるのでしょう。

しかし、教わるほうとしては、実は、成功率の低い危険なテクニックを教えてもらっているという状況に対する認識は、十分ない可能性があるわけです。皆さんなら、どう思いますか?

堅実な方は、はなから、こんな話には、耳を貸されませんが、私のところには、アメリカ在住だったりして、こういう流れに乗っている人の連絡も、時々、来ます。

単に、こうしたグルーのセミナーに出ますよ、出てきましたよ、といったお便りなら、いいのですが、一部は、「最近、アメリカの不動産投資の勉強を、始めたので、自分たちのパートナーになって、投資の資金を出してくれ」といった営業です。

どうして、こういう話になるかというと、こうしたグルーの教材やコースでは、必ず、「OPM取得のため、ネットなどでマーケッティングして見なさい」と教えられるからなのです。【関連記事は、こちらから】

こうした方は、例えば、ロ★ート・キ★サキさんに、がんばれと言われたから、握手されたから、と過熱していますが、こういうときは、英語でいう、take it with a little grain of salt【塩を振っていただく。何かを真に受けず、ちょっと、引いて評価しなおすこと】が必要なのかもしれません。


ちなみに、こういったクリエイティブな手法や共同出資関連のトラブルに、すでにまきこまれてしまっている方は、、、この記事を読んでも、私には、連絡なさらないでください。お願いします。


この他に、関連記事として、ランドコントラクトとは何かも合わせて、ご参照ください。


〔この記事は、2009年2月に執筆し、2014年5月に、見直しの上、再度掲載しております〕

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