ラスベガス物件2 続報
ラスベガス不動産物件速報 7万9,000ドル2BR
というタイトルで、しばらく前に、物件のご案内を、メルマガでしたことがあります。その際の物件概要を、その後、ブログでもご案内しました。
背景:
ラスベガスは、モーゲージクライシスで広く打撃を受けたエリアであるところ、その中で、より落ち着いている地域のひとつである「サマリン」。
これは、該当地区の開発の年数に関係します。
具体的にいうと、2000年台に入ってから、全体として新規開発されたエリアは、当時は、新しく、輝いていたわけですが、現在は、
「近所全体が、みな、バブル期に、変動金利型などの”危険な”ローンを取得ていた状況があだになり、2007年以降は、全員が、アップサイドダウン状態(家が値下がりしたために、融資残高と物件価格が逆転)となり、エリア全体が荒廃」
という状況があります。
こうなると、物件自体がお得に取得できても、賃貸が困難になりえます。
というのも、周囲がボードアップ(board up、トタン板で、玄関や窓の出入りがしにくいように)されているような家ばかりが並んでいるところに、わざわざ、子供をつれて移り住もうとする人はいないわけです。
それに対して、サマリンは、多くの物件が、1990年代までに、建設されていました。そのため、バブル時は、もちろん、投機の対象とはなったものの、それでも、「全員が、一撃打尽」とまではいかず、エリアも、比較的、町並みを維持できています。
もちろん、人が入らないまま、ボードアップをして、8ヶ月とかで、倍の値段になるのであれば、テナントなんか、つけないで、待っていればいいのですが、現在の米国の不動産の景気回復状況は、いくらなんでも、そこまで力強いものとまでは、いきません。
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銀行放出物件の値上がりが全国的に指摘されてきていますが、実際には、これは、実際の景気回復と直ちに断言するには、躊躇もあります。
理由は、いくつかあります。
■銀行が、ROBO-SIGNING(ずさんなローン審査)などしていたことが、数年前に大問題になったため、強制執行できないままの影の在庫(SHADOW INVENTORY)物件が多くなっている。
私の聞いた例では、「5年間、ローンどころか、火災保険も払わず、それでも、物件に居住し続けている」という例があります。固定資産税だけは、自分が払っているのか、それとも、それも銀行が払ってくれているのかまでは聞きませんでしたが、、、
昔は、1年半くらいで、フォークロージャーの裁判や追い出しがすべて片がついたものです。今は、そんなことをしても、不良在庫が、顕在化するだけという場合があり、そうしたケースでは、棚卸し(不良在庫処分)が進まないわけですね。
■銀行が、融資を受けた滞納者に、名義を返上させ、その交換として、賃借人として家賃を取る契約をしなおしている。
ローンの月額返済はできるが、総残高が、高すぎるから、戦略的にデフォルトすると、相手が主張する場合は、まず、ローン残高をチャラにする(=裁判外和解)。そして、名義を争いなく引き渡してもらう交換条件として、賃貸借契約を新たに締結しなおし、毎月、家賃をもらうということを、銀行は、たくさんしていると、ベガスでは聞きました。
■銀行が、在庫や価格管理をしている。
あるZIP CODE(郵便番号)地区で、物件が、直近、毎月、100軒しか売れないのであれば、A銀行、B銀行、C銀行は、それぞれ、過去の実績に基づき、お互い、例えば、30や50軒といった数しか、新規MLS掲載をできないわけです。
それ以上が要処分だからといって掲載すれば、相場の下落傾向に歯止めが止まりません。そのため、何をするかというと、各行とも、指定業者に、状況をアセスメントさせた上で、「いかに、毎月、よりよい統計を積み上げられるかを、綿密に計算し、その表に従い、在庫を出してくる」わけです。
現在、多くの市場の銀行放出物件比率は、依然、5割以上。つまり、現在、オーナーチェンジ案件を出しても、銀行放出案件に値段が引きずられてしまい、市場で「価格を決定しているのは、銀行だ」というテーゼが成立するわけです。
ですから、このような状況で、多くの市場で、毎月、価格が上がるのは、変な言い方をすると、”当たり前”なのです。
しかし、だからといって、銀行放出物件の積みあがりが、バブル前の経済状況をもたらしてくれると頼りにするわけにも、いきません。
多くの市場が、本格回復の兆しを見せるためには、
□ 実需オーナーが増えること。現在、市場は、依然、(国際的な)投資家のキャッシュ購入比率が高く、平常化していません。
□ 融資が平常化すること。上と同じですが、融資が出ないと、実需オーナー、自宅を買う普通の地元の人が増えません。
FIRST TIME HOME OWNERSの購入がより容易になること。それが、景気本格回復にとって必要なのですが、そこまではいかないのが現状。多くの市場では、投資家のキャッシュ取引が前提なことは、皆さんもご承知のとおり。
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以上の背景を想定してみてください。現在の米国不動産の値上がりは、「状況がコントロール下に入りつつある」ことを、示す指標ではあっても、一部の「公式発表」のように、「不動産市場が回復してきている!」と主張できるかどうかは、これは、はっきりいって、定義の問題です。
他方、「底は打ちましたか?」「買い時ですか?」と聞かれれば、私も迷わず、
□ 二番底があるかどうかなど、気を回さず、ほしい人は今買ってください
とお返事します。(別にほしくない人とか、関係ない人も、すべて買いなさい、買わないとだめだといいたいわけではありませんので、誤解なきよう)
さて、話題が完全にずれましたが、上の物件の話に戻ると、こういうわけで、「安いだけの物件や、最初の販売価格が高かった物件、値下がり率だけが大きい物件」といった観点で、物件取得をしても、市場が回復し、正常化するまでは、意味のある賃貸戦略が、どのエリアでも、不可欠。
マンハッタンで物件が買えるなら、賃貸戦略も何もありませんが(中も見ないで出て行った次の日に、テナントが入ってくれるそうですね笑)、普通はそうはいきません。
というわけで、大体、投資に向く賃貸しやすい物件というわけで、ようやく本題、上の物件をご案内したわけですが、この物件は、いわゆる標準的な中の上のエリアで、アメリカで言う、diverse な、regular working なサブディビジョン。
Diverse というのは、婉曲話法で、多人種混合、つまり、差別主義的な言いかえをしなおすと、「白人も住んでいる」エリアという意味です。
米国では不動産ライセンスのある人には、このような物言いをすることは、禁じられていますので、”ダイバース”を説明してくれといわれても、それ以上は説明してくれないかもしれません。私自身も、人種差別は嫌いですので、間違えないでいただきたいのですが、ぶっちゃければ、「黒人が8割のエリア」「ラティノの方が圧倒的多数なエリア」といったエスニック的な”色”がついていないエリア、そういう意味です。
普通のワーキングというのは、上流ではないという意味もありますし、それと同時に、やはり婉曲話法で、「仕事のある人が住むことを好む標準的なエリア」という含意もあるといえるでしょう。ベガスなら、これくらいのランクの物件であれば、治安もよく、ダイバーシティもあり、日本人投資家さまであっても、質素な方やお子さんが学生である間、ご自身、ご家族が居住されても、おかしくありません。
それに対し、貧困層が多いエリアは、depressed といった言い方をする場合があります。
さて、回り道ばかりでぜんぜん本題に入りませんが、ということで、上の物件、1月末に、投資家様にご案内をしたところ、ようやく、このたび、4月半ば決済の見込みがつきました。
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物件は、2004年に、購入されており、直近は、高齢の持ち主のお嬢さんが住んでいたところ、このお嬢さんは、知的障がい者で、ハワイの施設を見つけて、一人住まいは、引き上げられることになったということでした。
私のベガスのパートナーが、最初の1-2年、この物件を賃貸管理していたご縁で、「あなたを通して掲載するといわれている」ということで、優先的に、まわしてもらえました。
この間、売主は、銀行や投資家ではなく、高齢の一般の方のため、段取りは、比較的ゆっくりしていて、2月に問い合わせをしたら、
「キッチンのリノリウム(樹脂)を変えようと思って買ってあったセラミックタイルがあるから、それを施工しておいてあげようと思って」
というお返事でした。
大変親切な方ですね。すでに買ってしまったタイルがもったいなかったということかもしれませんが、セラミックは、施工が手間がかかるので加工賃も払ったはず。
また、お嬢さんは、ハワイに引っ越され、その後の荷物の整理などがあって、3月初旬まで、「こっちの好きにさせてくれ」ということでした。
もちろん、最初は、7万9,000ドルくらいを想定していたので、価格は、「じゃあ、相当すでにやってもらっているようだから、逆に、残った部分もやってもらえれば、修理はほとんどない状態での引渡しで合意をしましょう」ということになり、売買価格は、8万1,000ドルと決まりました。
タイル敷きなおし後の部屋の中を確認後、レアルターさんが、売主に、「次は、ブラインドの付け直しとかをしてもらう」といってくれ、ぱっと見、賃貸に必要なことを、追加で、売主に、やってもらいました。その次に、建物検査を行い、ここで、さらに、多少、水道関係の機能面の修理が見つかったということで、その修理代の見積もりを、引き続き、手配。
最終的には、8万1,000ドルは、修理なしの価格ことだったので、最後の水道工を呼ぶ代金は、約定価格から引いてもらうということで、今、契約書のADDENDUM(追加ページ)作成に入っています。当方見積もりは、360ドルですが、8万1,000ドルから、400ドルの値引きで合意ができました。
業者さんには、皆さんそれぞれの特徴があり、この担当の方は、なんといっても、本当に、こちらの代わりに細かく気を使ってくれるのが特徴。普通は、こういうことは、私が考えて交渉するのですが、ベガスの私のパートナーは、「こうしよう」と決めたら、勝手にやってくれ、それが、後で説明を聞くと、すごく合理的で、「うんうん」という感じなので、本当に、ありがたいです。
ということで、この物件は、最初、軽度修理を想定していましたが、その手間はなく、購入時にすぐに、賃貸案内がMLS掲載できることになりましたので、当方オーナー様のロスタイムが、ほとんどなくなりました。
平行して、決済代行会社の取引口座(エスクロー)も、先週、開きました。レアルターさんが、売主側と買主側の双方代理を務める内輪の取引なので、決済代行会社もいつもお願いしている方。
(双方代理: 買主利益を損ねる場合もあり、相手や状況を熟知できるような場合でない限り、一般的には、利益相反行為となりますので、お勧めしません)
当初、メルマガでご案内した段階では、修理の額は、不明だが、3,000ドル前後くらい以上にはならないと思いますという程度しか申し上げられなかったのですが、結果、最初の7万9,000ドルからすると、rent ready に持っていくレベルにするには、最初のご案内だった7万9,000ドルだった価格から、1,600ドルの上乗せで済みそうです。
以上、途中経過となりましたが、投資に向きやすい手ごろな物件が、じりじりと取得しにくくなってきているベガスでの、ご案内物件の「その後」でした。
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