あなたは投資対象国の相続法を理解されていますか?
対米不動産投資家の中山道子です。
今、2015年2月セミナーのために、参加者様とのやり取りが始まっています。今年の企画として、セミナープレメールを特に充実させ、個別のご質問も、プレメールで、ばしばしお答えしております。
今日は、こんなメールが。
《私はカリフォルニアに一軒投資用物件を持っております。》
《私には小学校2年生になる息子がいます。
《私はまだまだ元気でいるつもりですが、何かあった時に息子に
《資産が相続されるようにしたいと考え、LAの弁護士にリビング
《トラストに関して、相談しました。
《その弁護士は、「米国の市民権を持つ人にtrusteeを任命する
《必要がある」との回答でした。
《私には米国に市民権を持ち、かつ信頼できる知り合いはいないため
《どのようにしたらよいのか、考えあぐねております。
《中山様がとられている相続対策等ありましたら、ご教示頂ければ
《と思います。当日セミナーでのお話でも結構です。
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細かい事情は、分からないのですが、この方は、シングルペアレント様でしょうか。
縁起でもない話で恐縮ですが、夫婦であれば、一人が若いうちに死亡することがあっても、子供のもう一人の親権者が、対応することを期待する場面ですが、この方の場合、「子供が大人になる前に、万が一のことがあれば、国内はもちろん、海外資産の相続は、さらに困るな」とお考えになりはじめたようです。
こういう悩み、日本の証券会社経由で、新興国株式を買うくらいなら、関係ないわけですが、
> 海外に銀行口座を開設
> 海外に証券口座を開設
> 海外に不動産を購入
などはじめる場合は、この「相続はどうなるのかな?」という問題が、当然出てきます。
夫婦、親子とも、大人同士なら、
> お互い投資状況を確認しあいながら、情報共有
しておくだけで、不慮の事態があったときも、相手に、負担はかかるものの、すぐ「あの口座、あの投資物件も、誰かに相談して、なんとか名義変更しなければ」と承知してもらえるものの、それにしても、相続人が相当悩むことは、多々あるのではないかと思います。
この方のご質問は、結構突っ込んでいるので、米国在住でない方は、内容を読んでも、分からない方のほうが普通だと思います。この方へのご回答は、セミナープレメールで、もっと突っ込んで、行う予定ですが、ここは、一般向けのブログですから、あまり先走りせず、基本のお話をさせてください。
米国の相続法をごく簡単に、表面的なレベルで理解するとすると、まず第一に掌握するべきこととして、こんな感じになるようです。ミシガン州のモデルを使いましたので、違う州では、多少異なる可能性を想定してください。米国では、民法は、すべて、州法管轄なので、「米国では」という言い方をすることは、出来ません。参考にした法律サイトは、こちらをご覧ください。
ミシガン法的扶助団体
DO YOU REALLY WANT TO AVOID PROBATE?
> 遺言書を残さない不動産オーナーの死は、デフォルトで、裁判所管轄で法廷手続きを経ることになる
日本では、民法上の法定相続がデフォルトで、相続対策は、申告の問題です。これまでは、資産家でなければ、相続税自体、それほど、支払う必要もなかったですが、平成25年の改正で、基礎控除額が、5,000万から3,000万へと引き下げられるなど、「多少の資産がある家庭」へと、課税対象が拡大されたようですね。
しかし、米国ミシガン州の場合は、家を一軒持っているだけでも、遺言書がなければ、本来は、裁判所に行かないと行けなくなるわけです。
これが、「夫婦が、共有名義で家を持っている」場合は、例外として、PROBATE《遺言検認》が不要になります。自動的に、残された夫または妻の名義に移行し、自宅である限りは、相続税もかからないようです。
なので、問題は、個人名義の投資物件など。
ということで、
> 不動産を持っていない層
> 自宅以外は不動産名義がない層
にとっては、米国でも、相続は、たいしたトラブルではなさそう。
それに対し、
> 投資不動産や個人名義不動産を持っている層
については、これが問題になるわけです。
私たちのところに、時々持ち込まれる案件でも、
> 親が死亡し、兄弟姉妹が相続。遺言がなく、プロベートを経なければいけない
> 親が死ぬまで居住していた物件は、状態が悪く、修理しないと、きちんと売れない
> 子供たちは地元でない、よく分からないし、とにかく早く済ませたい
なんていうときに、子供たちの検認弁護士から
> 「キャッシュで買てくれよ。すぐ話をまとめるから」
といった話が来ることがあります。
「弁護士から、格安で売りさばこうと提案するなんて、代理している顧客の利益に反するんじゃないか??」とびっくりされるかもしれません。
こういう場合、子供たちの足並みがそろいっていないと、もめますが、実際、相続人のモチベーションは、普通、以下のようなものです。
「修理すれば、ちゃんとした値段で売れるかもしれないことが分かっていても、そもそも、固定資産税や火災保険がかかるし、修理代を自己支出しないといけなくて、そんな金はない。現地に修理業者のつてなんかましてやない。私たちは、違う都市にばらばらに住んでいるし、小さい子供を子育て中で、仕事もある。すぐまとまるなら値段はうるさく言わないから、とにかく済ませてしまいたいよ。」
こういった状況がはっきりしていれば、弁護士も、「それじゃあ、最速コースで、知り合いに現金で売れるように段取りしてあげるよ」と対応するのが現実的だ、というわけです。
弁護士は、通常、時給制ですから、もめると、弁護士のメーターがどんどん上がります。「揉めるのも長引くのも勝手だけど、フィーは毎月計上させてもらいますからね」というわけです。
以上の事情がすべて勘案されると、「格安と分かっていても、捨て値で、相続物件を売ることに合意をする」ことがありうるわけです。
このように、遺言なしの検認になると、普通のアメリカ人でも、こうなるわけで、海外在住の方の場合、輪をかけて困るだろうといことは、容易に想像できると思います。
そのためのメカニズムは、いくつもあります。
そして、上の方は、LIVING TRUST、生前信託を検討されているところ、「それでは、これを管理する米国籍の方を指名してください」と弁護士に言われ、困っているというお話ですね。
生前信託とは、被相続人(自らの死後のことを考えている人)が、生存中に、物件の名義を、「信託名義」に移してしまうこと。そうすると、死んでも、名義が変わらなくてすむのですが、その代わり、自分が信託を管理することは、信託の定義上、当然出来ません。
信託を、「自分に変わって管理してくれる第三者」を今の段階で、指定しておく必要があるわけです。
いやな話をすると、信託は、ですから、トラブルの温床にもなりえます。
《知り合いに、物件名義を移し、「管理お願い。家賃だけ、振り込んでおいて!」》
と依頼するようなものなわけですから。ぶっちゃけ、
迷惑
ですよね?
英米のキリスト教の伝統においては、こういうときのために、子供が生まれたときには、ゴッド・ファーザー、ゴッド・マザーを指定する伝統があります。日本で思われているように、単なる名付け親ではなく、教会、コミュニティの前で、「両親に何かあったときは、子供の面倒を見る」ことを誓ってもらうのですね。法律と慣習、宗教が英米圏においては、昔は、このように、融合していたわけです。
この他、現在は、このために、書類を起草する弁護士と別に、他の弁護士や、あるいは、公認会計士など、普段から付き合いのある資格保有者に、有料で依頼することは、ひとつの方法でしょう。
実は、富裕クラスの方々のためには、こういうときのために、どんぴしゃりで、「信託銀行」というものが存在します。米国はもちろん、ご本家ですし、日本の信託銀行も、最近、こういう業務、海外資産を含め、成長しようとしていますよね。
その場合、銀行に、上の段取りを依頼し、担当の銀行員を付けてもらうわけです。当然、フィーは割高ですので、相当な資産やキャッシュフローがなければ、依頼する気は、起きないかもしれませんが、日本の資産とあわせて海外資産の相続対策も正式に依頼するのであれば、日本の信託銀行に、こうした業務をすべて依頼することが、資産クラスによっては、意味があるわけです。どんな生命保険に加入するか、から何から、すべて丸ごと、依頼することになります。
さて、話を戻すと、米国の相続関係の法律制度は、このように、大変複雑で、州により異なりますし、また、改正も多いエリアです。ブログの記事では、専門家でない私は、これ以上は、扱えませんが、こうしたことも念頭に入れないとやけどする、それが、海外投資です。
今、米国のみならず、タイ、マカオやフィリピンなどで不動産購入をすることが、あたかも「ブーム」になっているような感がありますが、相続対策に至るまでもなく、国内不動産投資で成功されている方ならご承知のように、
>相続にあたり、
>不動産ポートフォリオを一番いい状態で次世代に継承させるうまい方法というのは、
>ほぼ、ありません
私は、いつも、不動産というのは、野菜と同じで、鮮度、時価というものがあります、とよく言います。
自分が全盛期を築いても、盆栽のように、定期的に手を入れなおししないと、価値は、維持できず、盆栽同様、引継ぎは、誰にでもできるようなものではないからです。
複数国への不動産投資などを始めたら、相続人に大変な迷惑がかかる可能性があるといった問題も生じるため、自分の世代で手仕舞いすることにも、意味があるかもしれないということは、ここでは指摘しておきましょう。
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