任意売却は3歩進んで2歩下がる(2)
この記事は、こちらの記事「任意売却は3歩進んで2歩下がる」の後編です。
対米不動産投資家の中山です。私たちのグループは、「銀行がらみの焦げ付き案件」を要修理のまま購入することが多いですが、この場合、売主関係が複雑で、契約合意がおじゃんになることも、結構な割合であります。
この前だめになったのはこの物件。理由はどういうものかというと、、、
実は最近立て続けにあるのが、《任意売却の相続案件》。
日本では、今でも不動産を買うときは、基本、団体信用保険(団信)に入る義務がありますね。稼ぎ手の死亡時には、貸し手である銀行に対し、繰上げ返済をしなければいけない。その資金の手当てです。
保険料は格安で、年齢による保険料の差もありませんね。よくできた制度だと思います。
ところが、米国で不動産を買った方はご存知のように、米国など海外では、基本、銀行は、不動産を購入する際に、契約の条件として、生命保険に加入することを要求することはできないのです。
詳しくは調べていませんが、「融資の条件として、自分を受取人にする生命保険を要求する」というのは、利害関係者による不当な圧力と見られることになるのかと思います。うわっ、めんどくせえ、、、笑
いずれにせよ、そんなわけで、多くの自宅所有者が、生前に、ローンを一括返済するような資産のないまま、死亡します。中産階級の人間が、任意に生命保険に入る場合も、強制されずに、自分の家族のかわりに、銀行を受取人に死亡するお人よしはいませんから、相続人たちは、資金があっても、自発的な居宅ローン返済を拒否する可能性が十分あるでしょう。変な自称先進国、米国、ですね。
そして、この物件は、まさにそんな一例となりました。
■物件名義人は、病気高齢等の理由で所得がなくなり、ローン滞納。
■そして死亡。
■ローン元本一括返済が必要になる。
■相続人たちが、銀行と、任意売却に合意。
■物件は、売りに出る。
■当方が、契約合意。銀行は、契約を承認。
■相続人に対しては、残債をチャラにする合意。
■相続人たちは、契約日までに引越しをすることに合意。
とここまでは、来たのですが、ここで、最後のどんでん返しが。
なんと、引越しに一度は合意をしたはずの相続人たちのうちの一人が、「引越しするの、やっぱりやめた!」と宣言したのです。
こうなると、買主の立場のこちらは、手が出ません。
もちろん、下の手順を踏むことはできます。
■ 買取を強行する。
■ 相続人に強制退去をかける。
■ 判決を勝ち取った後、執行人を差し向ける。
■ 居住者を、強制的にでも立ち退かせ、鍵をかえる。
■ そこから、こちらのやりたい修理に入る。
しかし、そうすると、物件がいつ、当方の立ち入り自由になるのか(3ヶ月から6ヶ月)、また、その段階で、今以上のダメージがどれだけのものになるのかが、不透明。
費用だって、スムーズに行けば、1,000ドルですが、こじれて、嫌がらせに水道管でも壊されたら、修理見積もりがすべてパーになります。
そんなわけで、こういう状態になってしまった場合は、こちらとしては、以下のプロセスを待つしかありません。
■ 銀行が、強制執行し、物件名義取得。
■ その上で相続人に強制退去をかける。
■ 空室になった物件内を確認しなおし、再見積もり
■ 価格合意をしなおし。
■ 銀行名義案件として買う。
実は相続人は、銀行との直接の契約関係はないわけです。銀行と契約をしたのが自分であれば、不払いやデフォルト記録は、自分の与信に残ってしまいますが、こういう状況では、銀行は、相続人に対し、要求をするための交渉材料というのが実はないのです。
つまり、相続人は、居座り放題。もし、物件が親の名義から銀行名義へと変わり、その段階で、立ち退き命令が出れば、そのとき、考えよう、というわけです。確かに、これで、最低、半年くらい、無料で、ここに居住できるわけです。もちろん、自分宛に、裁判所から、立ち退き命令が出れば、その段階では、与信に傷がつきますが、まだまだ、それは先のことと踏んでいるわけです。
世の中、本当に金がない人間の開き直りほど怖いものはありません。
ですから、契約前日までに、合意どおり、居住者が退去しないという状況を受け、こちらは、「この物件は、今のままでは買えなくなった」と売主に伝え、誓約金を返してもらうことになったわけです。
スタンバイしてくださっていた投資家様にも、「お流れになりました。今後芽が出る可能性はありますが、その場合も、何ヶ月先の話となります。ちょうど、別の案件がでますので、そちらを、ご紹介させてください」とお願いし、ご了承を頂戴しました。
こういう場合、借用書は、事前に、「決済するはずだった予定の期日」で作ってご資金も、頂戴してしまっていることが多いです。なんといっても、前日に、あちらの合意が反故になったことがわかるという話ですから。しかし、これは、避けられません。
なので、新しい投資案件のご紹介に当たっては、前の借用書の期日以降の融資ということで、書類を作り直し、融資をしてくださっている投資家様にロスが出ないように段取りします。
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