日本人は、どんなに危機感を持っても、まだ足りません 観光編
中国在住の中山道子です。私は、子供のときは、2年ごとに、親の転勤で、「違う国」で生活をしてきました。正直、誰にでも薦めたいような育ち方ではないのですが、その結果、得たものもあります。それが、「多面的なものの見方」です。
英語が出来るようになったのも、もうひとつの大きなメリットなんですが、それとは、違うんですね。当時、私は、日本では、「海外仲間」といえば、ほとんどが、「アメリカ帰り」の方々に囲まれていました。(ここで分かってしまうと思いますが、私は差別的傾向のある私立学校に行っていましたので、朝鮮系の人など、国立大学に進学するまで、同級生には、いませんでした。)
そして、アメリカ以外のいくつもの国で生活をしてきた私は、子供の頃は、「日本しか知らない日本人」とやっていくのにも努力が必要でしたが、同時に、「日本以外には、アメリカしか知らない帰国子女」とやっていくのにも、やはり、努力が必要だったのです。
単純化、図式化すると、日本しか知らない日本人は、「Aという観点」を持っているとします。アメリカ帰りの帰国子女は、必ず、お互い同志で集まっては、「Aは日本の常識かもしれないけど、アメリカでは、Bなのにねえ」などといい合うのです。
そうなると、私は、「Aが日本で、Bがアメリカかもしれないけど、カナダなら、Cよ。トリニダードなんかDで、トバゴは、同じ国だけど、Eでしょうよ。イギリス系植民地と違って、フランス系植民地だったらね、、、」と、果てしなく、”相対主義”攻勢が続けられるわけです。当然、誰も、聞いていないという、、、笑
そのため、若いときは、そんな自分がひねくれているのだと思い、事実、中学、高校の先生には、「小賢しさ?」を嫌われていましたが、大学で、専門課程に進学すると(東大も教養は正直、高校と大差なかったです)、少人数制ゼミナールの場で、はじめて、先生に「視点」をほめられるようになりました。
そして、今、振り返ってみると、事実、実社会では、「そうしたくても、他の人と平仄を合わせることが出来ない」自分のこの”独自視点”(?)が、英語力と同時に、私のサバイバル・スキルの原点となってくれたのです。
大学卒業後は、「自分の考え」を述べると、上の人が、大体、「なるほど。考えもつかなかった!」とほめてくれて、取り立ててくれるようになりました。しかし、同輩には、これがますます嫌われ続けたため(笑)、そんなに若くなくなる頃には、誰とでもやっていけるように努力するのはやめて、「勝手にする」戦略に転じ、今の、もう少し穏当な「自分のエンジョイする生活を選び取る」に至るのです。
子供の教育を考える頃には、この「複眼的なものの見方」が、私にとって最大の武器であって、子供に伝えたいのは、これなんだということが、わかっていました。
そのため、子供に、日本、アメリカの次に、第三の視点を学ばせるなら、今なら中国文化しかないと思いました。私の父は転勤族だったので、どんなところにもNOといわず、家族のために、どこにでも行きましたが、私は、自営なので、段取りさえつけば、どこにでも住めるのです。
そんなわけで、子供にも、言語のみならず、人種、文化関係で、私同様に、苦労をさせました。今の北米は、中産階級のアジア人にとっては、楽しすぎて、そういうつらさは、経験しなくていいので、英語学習にはいいのですが、精神修行には、別に役に立ちません。(私の時代は、北米でも、アジア人排斥を、肌で感じることがあり、中国ではなく、デトロイトで日本車排斥運動が起きていたわけです。)
今、おかげさまで、子供は、私同様、日本、中国、米国という複数のカルチャーを知って、複数の観点というものを、自然に身につける習慣が身についたと感じます。周囲には、韓国人の方々が多いので、韓国人との付き合い方ということについても、独自に培ったノウハウ?があるようです。
直近20年の成長は、中国やアジアで起こります。
つまり、日本や、アメリカといった成熟国が提供できるグッズにとっての消費者は、今、自国在住の人だけでは足りなくて、消費者としては、アジアの人だったりするべきなわけです。(もちろん、これまで通り、逆もすごく盛んです。)
こういう状況においては、「先進国」は、「現在の新興国」をいくら勉強しても、足りません。
新興国が先進国を学ぶことは、普通なので、みんな、よく出来るのですが(今でも日本は欧米の勉強は得意です)、逆は、すごく心理的な障壁があるんですよね。アメリカも大差ないだろうとは思いますが、現在、中国から、日本を見ていると、このメンタルが、もっと発展できるはずの日本経済を、大きく停滞させている気がします。
だから、一番大きい市場が、中国にあるとわかっているのに、一番考えが進歩的な層の人が、ガチの勝負を避けて、シンガポールに行ったりするのではないでしょうか。
写真は、この前の週末に、山東省の温泉地に行った際のもの。「箱根の小涌園」と「福島のハワイアンズ」を足して数倍にした感じの規模の温泉リゾートです。
50の温泉(伝統的なものの他、ミルクの湯とか、ミント、ワインと多様。写真のようにドクターフィッシュもばっちりでした)、屋内巨大スパプール、屋外巨大波のプールに、幼児向けのプールがいくつか、流れるプール、泥風呂のようなエステ系など、想像できるものは、すべてありました。決してすいていたわけではないのですが、規模が大きいので、ゆったり出来ました。日本では、難しい感覚です。
サービスもよく、お風呂につかっていると、従業員のかたが、ちゃんと高級なろ過機を通した飲料水をもって回ってきたり、スリッパをそろえなおして行ったりします。スリッパも、消毒場所がそこここにあって、トイレも当然、清潔でした。室内設備としては、プールバーや卓球台、エクササイズマシンや、マッサージチェアなどを備えた室内休憩棟もあり、そこでは、中国の温泉の常で、フルーツが山盛り、無料で食べられます。
営業時間は、朝9時から夜12時まで。費用は、150センチ以上の身長の場合、2日間を通しての利用で、138元だったので、今の為替だと、2,600円くらいでしょうか。それ以下のお子さんは、半額です。
大人は文化の観光もいいんですが、結局、子供が喜ぶのは、こういうところなんですよね。こういう滞在型施設が、便利で安いと、本当に助かります。
別に、これは、私が素敵なところに住んでいるから、たまたま、あるのではなく、こんなのは、最近、大都市近辺なら、どこにでも、いくらでもあるのです。
これだけの施設はあるのですが、エリアは開発が始まったばかり。ホテルの周囲は、お定まりのコンドミニアム建設ラッシュでした。外国人は、私たち以外、韓国人すら、見かけなかった気がしますので、全部、内需なわけですね。下は、この施設の付属ホテルのお部屋です。バイキングも、よかったです。「アメリカだったら、朝は、”どのタイプのシリアルにする?”’卵は、どういう焼き方にする?””パンケーキにシロップどうぞ”とか、そんなんだよねー」と会話しながら、アジア式の充実した朝食をエンジョイできました。
最終的な費用は、ガイド付き1泊ツアーで、
■ このホテル代、夕食、朝食各1回
■ 観光名所3箇所の料金
■ ホテル付属のこのスパの料金
■ バス送迎代
■ 保険料
をあわせ、一人、600元。1万2,000円以下でした。観光名所のほうについては、この記事では取り上げませんが、特に、地下鍾乳洞は、日本では絶対経験できないスケール感に、圧倒されました。
日本も、ようやく、インバウンド・ツーリズムに真剣になってきたようですが、実は、今、中国の中産階級の生活レベルは、このように、ものすごいスピードで向上しています。こういう、日本の常識を上回るような規模の大衆娯楽施設は、10年前は、もの珍しかっただろうと思うのですが、この2015年の今、「普通」のレジャー。この間に、中国人のマナーもすごく良くなっています。
翻って、日本の状況を見ると、つい最近まで、ネットのニュースや記事を見ると、「中国人はマナーが悪いので来て欲しくない」というような関係者の声が乗せられたりしていましたが、ようやく、「中国人が来てくれてうれしい」「オリンピックに向けて、もっと来てもらえるようにするのは、どうすればいいのかな?」「インフラが足りなかったのか。気がつかなかったよ」というところまで来たようです。
ただ、中国人は、台湾人と違い、特に、日本びいきということはありません。
中国人にとっては、日本は、オーストラリア、NZランド、タイや香港、シンガポールなどの多数の海外旅行先のひとつであるに過ぎない上、今は、国内のいろいろな観光資源とも、このように、競合するようになってきているかもしれないわけです。
もちろん、金閣寺のように、まねできない固有の観光資源といったものはありますが、こういうスピードで、国内消費がばく進している状況ですから、今までのように、「中国人は、カネは出来たんだろうが、まだ、国内にたいしたものはないんだろう。日本につれてきさえすれば、喜ぶんじゃないか?中国人の接客マナーは最悪だと聞くからなあ」程度の認識でいると、肝心のお客さんに、今後、魅力不十分のレッテルを貼られかねません。
もうすぐ、上海には、(うそものではなく)正式のディズニーランドがオープンします。すでに、キティーちゃんのアミューズメントパークは、もう出来ています。レゴランドも、予定されていますし、北京には、ユニバーサル・スタジオが計画されているそうです。
中国人にとってのみならず、日本人にとっても、また、オーストラリアなどの周辺国の人々にとってであれ、「東京に行けば、何でも、いろいろ、便利に遊べる」が、「上海に行けば、何でも、いろいろ、便利に遊べる」になりかねない時代が、もう真近に来ているのです。
これは、きっと中国本土についてだけではなく、アジアの成長エリアは、大体、どこも、こういう日進月歩状況でしょう。
そんな中、今の日本が、インバウンド観光に、本気を出すなら、「死に物狂いになっても、勝てるかわからないところまで後れを取ってしまったかもしれない」くらいの危機感をもって官民が一致して取り組むことが必要だと、思います。
私の子供の頃は、日本は、新興国でしたが、今、どの産業を見ても、日本は、先進国病にかかっている気がしてなりません。
ポイントは、長期的、複眼的な物の見方が出来るかどうか(「日本は地域随一の観光大国で、日本のおもてなし力は世界最強なはずだ」←→「本当にそうか?」、「中国人観光客は、日本人と違って、マナーが悪い」←→「日本人がエコノミック・アニマルと呼ばれて、欧米人にマナー違反で総スカンを食らっていたのは、つい20年前」)ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
☆ 観光については、過去に、「水には、何種類もの温度がある」という記事を書いたことがあります。中国から日本に行くと、水が、冷たすぎて、ぜんぜん、「おもてなし」じゃないんですが、日本に住んでいたときは、私も、気がつきませんでした。
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