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学区制由来の不動産バブル、弾けるのはいつ?

対米不動産投資家の中山道子です。

最近、リアル政治のほうが面白くて、テレビドラマを見る必要がありません。こういうのも、「リア充」というのでしょうか。笑 

今週は、教育長官承認で揉めましたね。


米上院がデボス氏の教育長官指名承認、賛否同数で副大統領が投票

一連の論争の中で、2020年大統領選の有力候補とまで呼ばれ始めているエリザベス・ウオーレン上院議員が強力な論陣を張り、スポットライトを浴びています。

彼女は、19歳で結婚し、子供を抱えながら、ロースクール教員となり、ハーバードロースクール名物教授にまでのし上がったという実力者。庶民の経歴と、その背景を活かして、学界、メディアで輝かしい活躍をするに至ったまさにアメリカンヒーローです。

対する教育長官は、私も地元とするミシガン出身のお金持ちのお嬢様→奥様。教育関係の活動を長くしてきていますが、それは、(宗教的な)私立学校支援という立場からであり、公立学校をよくしていこうというモチベーションを過去に特に見せたことがない(笑)という驚愕すべき履歴の持ち主です。

連邦制度の中では、教育は、基本、州の役目なので、連邦教育教官というのは、そこまで重要な仕事ではなかったのではないかという言い方もできるかと思います。しかし、昨今、教育をめぐるイシュー、例えば、学生ローン問題なんかは、連邦政策が大きく関与しますから、連邦の方向性というのは、今後ますます重要になっていく可能性があります。

実は、今回の任命を通して、連邦レベルで、学校選択における自由化が広く議論されました。理由は、デボス長官が、自由化推進派だからですが、実は、この点、不動産投資家にとっても、あるレベルで、「要チェック」論点かな、と感じるところがありました。

普通の経済政策に関する論点と違い、教育における親の選択の自由という問題が、どうして、ミニ不動産投資家にとって重要なのか。私の意見を、少し、ご説明しておこうと思います。

キーワードは、「スクールバウチャー」。これが、多くの州で、広く導入されるようになると、不動産価格の変動も、視野に入るかもしれないのです。


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バウチャーという言葉は、最近、日本でも、時々聞くようになっているかと思います。海外旅行で、ツアー会社から、「ホテルでは、このバウチャーを使ってください」などといわれ、会社が発行する利用券をホテルやレストランで提出された経験がある方もおいででしょう。

デボス長官は、このバウチャーシステムをミシガンで推進してきた立場。

共和党にとっては、スクールバウチャーというのは、教育の自由化政策の一つで、レーガン政権からの政策の一つだったようです。

州が支出する教育費は、通常、主として公立学校に投入されますが、共和党にとっては、「誰もが公立教育で非宗教教育を強制されるのはよくない」ということになります。

その結果、「地元の公立に通えば、これだけの額が、子供に対して支出される、その額を、親が選んだ私立学校に行く学費(の一部)として、親に自由に使わせてあげる」システムとして、バウチャーは誕生したのです。

共和党のビジョンにおいては、「キリスト教系の宗教学校への通学をさせる自由」を実現することが多いらしく、実態は、「子供にダーウインの進化論を教えてほしくない」といったレベルの人も入ります。

民主党は、リベラルな立場で、宗教色が薄まっていますから、宗教(実質、カソリック)を学校で教えるために、政権側が協力するという考え方にはならないわけです。

それに対し、「2020年大統領選の有力候補になるかもしれない!」とファンが増えているエリザベス・ウオーレン上院議員の立場というのは、独特です。

彼女とデボス長官は、当然、対立している立場ですが、その二人が共通して支持するプラットフォームが、このスクールバウチャー、つまり、民主党ゴリゴリのウオーレン氏は、なぜか、スクールバウチャーという共和党のお家芸の支持者なのです。

その理由が、彼女を一躍有名人にした2003年のこの本にかかれています。

米国在住の方々は、ぜひ、図書館で手にとって見てください。

PERSONAL FINANCE問題(訳語が熟していないようですが、「家計に関係する経済問題」でしょうか)が大好きな私としては、別途書評を書きたいくらいすごい本です。

本来、商取引法の先生だった彼女、破産法を研究するというリサーチプロジェクトを選び、個人破産についての統計を記録し始めたところ、70年台から比べ、2000年までの間に、破産件数が増え、しかも、破産の圧倒的多くが、なんと、


ダブルインカムの中産階級世帯


において生じるに至ったことを突き止め、驚愕します。

なぜ、過去の一馬力世帯より、イマドキの二馬力世帯のほうが、こんなに脆いのか??


ここから、彼女は、家計調査に没頭。「みんなが高級品を買いまくっているの?」「昔よりいい家に住んでいるから?」「アメリカ人は浪費家になってしまったのか?」と今までの定説をデータに照らし合わせたところ、一番大きな罠は、


> 子供のために、いい学区に住みたくて、ダブルインカム世帯は、無理をする


ことが決定的な理由になっていることを突き止めます。

こうした危険に陥いりやすい世帯が購入している家のプロフィールを調べると、1970年台にみんなが買っていた家より古い家に住んでいることのほうが多いといった不動産関係者にとっても驚きの事実もが明らかにされます。家のサイズも、昔と比べ、バスルームが増えたくらいで、倍になったりはしていません。

単に、昨今、良い学区の家は、ボロだろうとなんだろうと、場所代で、高くなりすぎている

のです。もちろん、親は大卒が多く、専門職についていたりする層ですので、多少の生活の余裕は前提にしています。

賃貸ではなく、購入が前提。

それがいけないのだといえば、まあ、そうなのかもしれませんが、しかし、アメリカンドリームを達成するべき立場の人達の殆どが、高いレベルの教育を受け、ダブルインカムになっている、なのに、過去の自分の親世代、つまり、教育水準がより低く、シングルインカムだった自分の親の世帯より、可処分所得が、少なくなっているのです。(インフレ・アジャスト後)

このように、本来、成功者の立場に立つべき人々の殆どが、学区選びにより、自分の首を絞めるに至っています。また、これは、お互いに加熱しますから、お互いの首も、絞めあっているわけです。

というのも、米国では、昨今、学区選びは、LIFE OR DEATHでもあります。

うちの近所でも、評判の悪い高校は、周辺地域も治安が悪く、「校庭でレイプ未遂」とか、「ナイフ闘争」とか、よく警察沙汰のニュースが流れます。

はなから、ミドルクラスでない人々は、そういうリスクのある学校に子供を行かせることを前提に、「人生を諦めた生活」をしているので、逆に、破産にまで行くようなレベルの負債を負わない(負えない)のですが、ミドルクラス層は、「少し頑張ることで、ローンが組める」ので、頑張ってしまう、その帰結として、何かあったとき、「パッツン」と、セーフティーネットなしの暗闇に転がり落ちてしまうというわけです。

そこから、スクールバウチャーに関するウオーレン先生の政策提案が生まれるのです。


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今、みんなが「いい学校に行こう」としてしまっていることが、物件価格を釣り上げ、中産階級の老後が不安になっている理由だが、その問題の解決のためには、額面賃金が上がっても、仕方がない。更に競争が激化するだけだ。

つまりは、これは、公立学校の学区制が、無理な不動産価格の釣り上げを人為的に生み出しているということだ!

もし、「ある学校に行くためには、その学区に住まないといけない」というこのルールを公立学校が撤廃し、バウチャー制にして、家を買わなくても希望校に入れる可能性をみんなに提供する」事ができれば、それが、教育の機会均等化を促すのみならず、中産階級の物件購入加熱競争を沈静化させる

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という古典経済学を教育自由化の文脈において、主張する、これが、ウオーレン議員です。公教育の規制撤廃論者、このレベルでは、自由競争のプラットフォームづくりを主張するわけですね。

デボス教育長官ら共和党のバウチャー政策は、「普通の公立学校に行かなくてすませられるように」というバウチャー制。親の意向を受けて、私立学校に税金を投入する制度です。

これに対し、ウオーレン議員のバウチャー政策は、「普通の公立学校が、誰もが越境入学出来るようになるため」の公立学校制度内のバウチャー制なのです。

もちろん、そうなれば、最初は、みんなが良い学校に行かせようとしますので、一部の学校で入学競争が加熱します。

しかし、そういうのは、くじ引きなどの入学規制で対応すれば、最後には、落ち着いていきます。中長期的には、学校のレベル自体も、生徒層が多様化していくことで、標準化していく、あるいは、バウチャー制において支持されやすい学校づくりをするために、公立学校が競争し合うようになり、健全な競争が始まる、そういうことを狙うわけです。

確かに、高い家を買える人でないと、いい学校に子供を行かせる権利がないというシステムより、くじで、誰でも子供をいい学校に行かせることができるようになるシステムのほうが、貧困層へも機会均等です。

民主党は規制や公権力の介入大好き党。民主党なのに規制撤廃と自由競争強化をいうのは、珍しい気もするわけですが、彼女が、民主党内でヒーローになっていくこのプロセス、教育における民主党の考え方の変化の兆しを先取りしていると見て間違いありません。

まさに、この「新しい経済の中、頑張って成功したはずなのに、なぜか、取り残されつつあるダブルインカム、専門職志向のミドル層」は、民主党が真剣に向き合い直さなければいけない層、支持層に取り込み直さなければいけない票田であるはずだからです。


デボス長官の教育政策は、正直、多くの親にとっては関係ない大した成果の出ない(反動的な)政策で終わるでしょう。(というか、そう願いたい、、、)お膝元のミシガンでの彼女の推進する私立推進のバウチャー制は、ろくな成果を出しておらず、そういう学校の子供の成績、公立より悪いじゃん!と、みんなの失笑をかっています。


しかし、これに対し、もし、ウオーレン議員(民主党)の提案するバウチャーシステムが、民主党内で支持を受けるようになり、ひいては公立学校学区制度に影響を及ぼす日がくれば、該当州に投資をされている投資家で、学校が良いからと選んだ投資物件の「価格が軟化する」可能性を覚悟しないといけなくなります。

ウオーレン上院議員の教育政策の狙いは、まさに、人気エリアの不動産価格を下げることと表裏一体。規制(学区制)により実現している一部エリアの教育由来不動産バブル(”望ましいエリア”の物件価格高騰)を破裂させることが裏の目標だからです。

エリート主義になってしまったと批判される民主党が再度国民の支持を得直すためには、これくらいの爆弾が必要かもしれません。この制度を適切にアピールすれば、中間層だけでなく、「屈辱的な学区に子供をやらざるを得ない貧困層」も、民主党支持に回る/戻る可能性があるわけです。

アメリカの現状を見ていると、本当に家計の二極化が社会混乱を引き起こしています。

「不動産の価格高騰にストップをかける可能性があるなら、そんな政策、実現したら困る!」と思われる投資家層もおいでかもしれませんが、私も、ウオーレン議員の学区制批判には、アメリカ人のクオリティオブライフを改善させる大きな可能性があるのではないかと感じています。

他方、実際問題として、学区のいいエリアでの投資は、すでにプロの投資家の数字に合わないところが多いですので、そもそも、そんなエリアには進出できていないよ、しかし、そういうところが値段が下がるなら歓迎だね、という職業投資家もおいでかもしれません。

無理してそういうエリアに買ってしまったのに、自由化なんて、我が家の苦労はなんだったの?と泣きたい気持ちになられる普通の実需組のほうが多くなる可能性もあります。もし、そういう政策が導入されたとしたら、その結果、過去に高い物件を買ってしまったミドルクラス層が、学区自由化に伴う物件価格下落に影響を受けて、さらに経済的に苦労をするというシナリオも、当然覚悟するべきでしょう。

100%誰にでも支持される政策というのはありませんね。

いずれにせよ、長期的な話ではありますが、この問題については、トランプ=デボス体制には、特に目玉政策がなさそうなことがわかった今、今後の民主党の教育政策(=実は隠し玉的不動産市場解体政策)から目が離せません。今、お子さんの教育のために家の購入を考えておいでのお客様から相談を受けることもありますが、進路関係のリサーチのほか、物件購入前に、こういう本もお勧めしておきたいと思います。

また最後に、過去に、不動産価格と学区との関係を考察した別の経済学者の研究成果をレポートしたことがありますので、そちらもご参考までにどうぞ。

実証研究によると、いい学区とそうでない学区との間の物件格差は、実に、20万ドルと言われています。カルフォルニアでは、その倍、3倍でしょう。しかし、公立学校政策の変更に伴い、25万ドルの物件と5万ドルの物件、更には、60万ドルと20万ドルの物件の両方の価格が平準化していくとしたら、、、

大変なことになるかもしれませんね。

学区と物件価格の関係 究極の選択


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